事件番号・通称事件名 |
東京地裁平成30年(行ウ)第165号
文際学園再審査棄却命令取消請求事件 |
原告 |
学校法人X1 |
被告 |
国(処分行政庁・中央労働委員会) |
被告補助参加人 |
Z1ユニオン |
被告補助参加人 |
Z1ユニオンZ2支部 |
判決年月日 |
平成31年2月28日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、法人が、その運営する専門学校において非常勤講師とし
て勤務していた組合員を雇止めしたこと、専門学校の校舎正門前において組合らにより2回にわたり行われたビラの配布を妨害し
たことが不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事案である。
2 初審東京都労委は、法人によるビラ配布の妨害が不当労働行為であると認定した上で、組合らが行うビラの配布を妨げてはな
らないこと、ビラ配布の妨害が不当労働行為であると認定された旨及び今後繰り返さない旨を記載した文書の交付とともに同一の
内容の文書の掲示等を命じ、その余の申立てを棄却したところ、法人及び組合はこれを不服として、それぞれ再審査を申し立てた
が、中労委は、いずれの再審査申立ても棄却した。
3 法人は、これを不服として、東京地裁に取消訴訟を提起した。
4 東京地裁は原告の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 本件各ビラ配布の態様等について
本件各ビラ配布は、組合員らの勤務時間外に、公道上で行われたものであり、ビラを受け取っても立ち止まる者はほとんどおら
ず、自動車を含めて道路の交通が大きく阻害される等の事態は生じなかったことなどの事実を総合すると、組合員らによる本件ビ
ラ配布の態様は、相当なものであり、特に問題とすべき点は見当たらない。
2 配布されたビラの内容について
(原告は、第1回ビラ配布時に、学生の約8割が未成年者であるにもかかわらず、配布されたビラの裏面に居酒屋での宴会の誘
いが記載されていたことが学生への教育的配慮を欠き不適切である旨主張するが)第1回ビラ配布時のビラの内容は、講師に対す
る不当解雇等を理由に労働組合を結成したなどの専門学校の非常勤講師の労働条件に関するものであることから、ビラの主な配布
対象は、組合員及び組合に加入していない専門学校の教職員であると認められること、未成年者であるといっても18歳以上であ
れば、ビラの内容等について相応の判断能力を有しているというべきであるから、ビラに宴会への勧誘文言があることが、第1回
ビラ配布の組合活動としての正当性に影響を与えるものではない。
(原告は、第2回ビラ配布で配布されたビラの内容について、事実と異なる記載や殊更に学校と学生やその保護者との関係を悪
化させる記載が含まれている旨主張するが)第2回ビラ配布で配布されたビラは、非常勤講師が学期ごとの契約であることや、社
会保険に加入していないことなどについて労働条件の改善要求が主な内容であり、講師の労働条件に直結するものであることに加
え、特に原告を誹謗中傷するような表現が使用されているとまではいえないことに照らし、殊更に事実と異なる記載をして学生及
び保護者と学校との関係を悪化させようとする記載が含まれているとまでは認められない。
3 本件各ビラ配布の際に職員らがした行為が本件各ビラ配布へ与えた影響について
原告の職員らは、一斉に組合員らと歩行者の間に立ちふさがり、登校してくる学生らに向かって両手を広げてビラを受け取らず
に登校を促すような動作を繰り返したり、組合員らが学生にビラを渡そうとすると受け取らないよう呼びかけるなどし、あるいは
第2回ビラ配布において、組合員らのビラの配布場所の移動に合わせ移動し、組合員らの前に立ちふさがり、そのビラを受け取っ
た学校関係者からビラの回収を行おうとし、実際に回収を行うなどしている。
職員らのこれらの一連の行為は、組合員らに対し、組合活動としてのビラ配布への参加に対する萎縮効果を及ぼすおそれが大き
いものと認められ、また、職員を含む学校関係者らに対しても、ビラを受け取ることや組合加入への萎
縮効果を及ぼすおそれがあると認られる。
なお、本件ビラ配布は正門前道路の往来を妨げないような方法で行われていたものであることから、警察の許可を得ていなかっ
たとしても、ビラ配布の妨害による不当労働行為の成否の判断に影響を与えるものではない。
4 以上によれば、本件各ビラ配布における原告の職員らの一連の行為は、法人の指示により、組合活動である本件各ビラ配布を
妨害したものであり、組合の弱体化を招くおそれのある支配介入行為であると認めるのが相当である。 |
その他 |
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