労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪地裁平成29年(行ウ)第125号
高槻市救済命令取消請求事件 
原告  高槻市(「市」) 
被告  大阪府(同代表者兼処分行政庁・大阪府労働委員会) 
被告補助参加人  Z1労働組合 
判決年月日  平成31年2月20日 
判決区分  全部取消 
重要度   
事件概要  1 本件は、市が、①(i)市立小学校の英語指導助手について、直接雇用を廃止して外部委託に一本化し、組合員たる英語指導助手を雇止めするとともに、(ii)併せて英語指導助手に対して指導等を行う組合員たるスーパーバイザーについても雇止めしたこと、②組合らに対し、英語指導助手及びスーパーバイザーが労働基準法上の労働者に該当しない又は市の職員ではない旨回答したこと、③組合らに対し、組合員らの労働者性を主張するならば、過去分を含めて社会保険料を請求する旨回答したことが、それぞれ不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 大阪府労働委員会は、①(ii)について、本件組合員は、本件英語指導助手に対する研修及び指導以外の業務を相当程度行っていたことから、外国人指導助手を全員外部委託にすることによって本件スーパーバイザーの業務の大半がなくなるとはいえないこと、本件契約を更新しない旨の通知が、本件組合員の組合加入から僅か2か月後の平成26年11月11日に行われていること等を理由として、(1)市に対して、①(ii)について組合に対する文書の手交を命じ、(2)その余の申立てを棄却した。
3 市は、これを不服として、大阪地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、市の請求を認容し、命令を取り消した。 
判決主文  一 救済命令のうち(1)を取り消す。
二 訴訟費用のうち、補助参加によって生じた費用は被告補助参加人たる本件組合の負担とし、その余は被告人の負担とす る。 
判決の要旨  (1) 市が、本件英語指導助手及び本件スーパーバイザーの廃止を決めた時点について
 市教委教育センターの担当主査は、平成26年8月頃、平成27年度以降の事業費に本件英語指導助手及び本件スーパーバイザーを廃することを前提とする内容の事業計画書を作成したこと、庁内政策財政部長のヒアリングに際して市教委教育センター所長が本件スーパーバイザーの廃止を前提とした資料を用い事業計画に関する説明を行っていること等の事実が認められたことからすると、平成26年6月頃に上司たる所長より本件英語助手及び本件スーパーバイザーを廃止する方針を告げられたと認められ、これ以降、同センター及び市教育委員会内において、このような方針が一旦覆されたような事情も窺えないことを併せ鑑みると、同センターないし市教委において、本件英語指導助手及び本件スーパーバイザーの廃止を決めたのは、本件スーパーバイザーが組合加入を通知した同年9月9日よりも以前であったと認めるのが相当である。

(2) 原告が、本件契約を更新しなかったことが不当労働行為(労組法第7条第1号及び第3号)に該当するか否かについて
ア (1)の事実からすると、市教委ないし市教委内における同契約の更新に関係する部局が本件契約を更新しない旨決定した時点において、市教委ないしその部局が本件組合員の被告補助参加人への加入を意識していたとは認められない。そうすると、原告が本件契約を更新しなかったことと本件組合員が被告補助参加人の組合員であることとの間には相当因果関係があるとはいえない。そして、本件組合員が作成した月報の記載内容からすると、本件スーパーバイザーである本件組合員の業務の90%近くが小学校における本件英語指導助手に対する指導であることに照らすと、本件英語指導助手の廃止が決まったこと及びこのことに伴い本件スパーバイザーの業務のほとんどがなくなると推認でき、市も同事実を認識していたと考えられることにかんがみれば、本件組合員が、平成21年6月以降、本件スパーバイザーとして本件英語指導助手に対する指導等に従事していた点を考慮したとしても、本件スパーバイザーを廃止した点及び本件契約を更新しなかった点については、一定の合理性があると認められる。
 以上によれば、原告が本件契約を更新しなかったことについて、原告が組合員であることの「故をもって」した不利益な取扱いに該当するとは認められず、原告の同行為は、労組法第7条第1号に該当する不当労働行為に該当するとは言えない。
イ また、結果として、原告が本件契約を更新しなかったことにより、原告の設置する小中学校から被告補助参加人の組合員がいなくなったとしても、その点をもって、原告が本件契約を更新しなかったことが、被告補助参加人に対する支配介入に該当するとはいえない。
ウ 以上によれば、本件契約を更新しなかったことが不当労働行為(労組法第7条第1号、第3号)に該当するとはいえない。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成27年(不)第13号 一部救済 平成29年6月13日
大阪高裁平成31年(行コ)第53号 全部取消 令和2年2月14日
最高裁令和2年(行ヒ)第172号 上告不受理 令和2年11月19日
 
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