概要情報 
                
                  
                    | 事件番号・通称事件名  | 
                    大阪高裁平成29年(行コ)第221号 
                      高槻市不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 | 
                   
                  
                    | 控訴人  | 
                    大阪府(同代表者兼処分行政庁・大阪府労働委員会)  | 
                   
                  
                    | 同補助参加人  | 
                    Zユニオン(「組合」)  | 
                   
                  
                    | 被控訴人  | 
                    高槻市  | 
                   
                  
                    | 判決年月日  | 
                    平成30年9月7日  | 
                   
                  
                    | 判決区分  | 
                    全部取消  | 
                   
                  
                    | 重要度  | 
                      | 
                   
                  
                    | 事件概要  | 
                     本件は、市が、市立小学校の英語指導助手(AET)の平成27年
                      度以降の契約の更新をめぐる対立から、不当労働行為救済申立て(別件救済申立て)、春闘集会、記者会見等の組合活動を行った
                      Zユニオンの組合員(本件組合員A1及びA2の2名)を、平成26年度卒業式に出席させないよう市立小学校に指示したこと、
                      市議会答弁(本件答弁)においてZユニオンらの組合活動を誹謗したことが不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件
                      で、大阪府労委は、市に対し文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
                       市は、これを不服として、大阪地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、大阪府労委の救済命令を一部取り消した。 
                       大阪府労委は、これを不服として、大阪高裁に控訴したところ、同高裁は、原判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却し
                      た。  | 
                   
                  
                    | 判決主文  | 
                    1 原判決を取り消す。 
                      2 被控訴人の請求を棄却する。 
                      3 訴訟費用(補助参加によって生じた費用も含む。)は、第1,第2審を通じ、被控訴人の負担とする。  | 
                   
                  
                    | 判決の要旨  | 
                    1 事実認定の補足 
                        市は,市教委がC2小学校教頭やC3小学校校長に指導・助言した時点では,別件救済申立てがされたことを認識していな
                      かった旨主張するが、市教委教育指導課がC2小学校の教頭及びC3小学校の校長に指導・助言した日については,本件組合員2
                      名に伝えられたのが同月13日の夕刻であったことを踏まえると,いずれも,同月11日の別件救済申立てがされたことを市が
                      知った後であると認めることができる。市教委からの指導・助言から各校長が本件組合員2名の卒業式の出席が認められないと判
                      断するのに時間を要したとの主張も証拠もない。  
                      2 争点1(本件組合員2名が平成26年度卒業式への出席を認められなかったことが市による労組法7条1号本文前段,3号及
                      び4号の不当労働行為に該当するか)について 
                      (1)
                      争点1-1(本件組合員2名が平成26年度卒業式への出席を認められなかったことが「不利益な取扱い」に該当するか)につい
                      て 
                      ア 平成26年度以前においては、AETが市立小学校の卒業式への参加を希望して断られたことはなかったのに、本件組合員2
                      名は、平成26年度卒業式への出席を希望して断られたことは、1年間関わった児童らが小学校の教育課程を修了し、新たな門出
                      を祝う式典に参加することが叶わないことを意味するのであるから、当該取扱いは、市立小学校における労働者の一般的認識に照
                      らして通常不利益なものと受け止められるものといえる。 
                      イ 市は,卒業式に誰を招待するかは,校長の専決事項であり,その裁量に任されていると主張するが,校長に対し指導・助言を
                      行う立場にある市教委が本件組合員2名の平成26年度卒業式出席に関するC2小学校の教頭及びC3小学校の校長からの問い合
                      わせに対し慎重に対応するよう回答することで,指導・助言したのであるから,校長において,通常は裁量の余地の残るものとは
                      解し難く,平成26年度卒業式への出席を認めないようにとの指示が校長らにあったものと解される。 
                        以上によれば,市の判断により,本件組合員2名に「不利益な取扱い」がされたといえる。 
                      (2)
                      争点1-2(市が、本件組合員2名が労働組合の組合員であることの故をもって、あるいは不当労働行為救済申立てをしたことを
                      理由として「不利益な取扱い」をしたといえる
                      か)について 
                      ア 本件組合らが,大阪府労委に対し,別件救済申立てを行ったのは平成27年3月11日であり,市教委は,本件組合らによる
                      別件救済申立てを知った後に,指導・助言し,それに従ってC2小学校長はA1の,C3小学校長はA2のそれぞれの卒業式への
                      出席を認めないとして,市による「不利益な取扱い」がされたと認められる。 
                        本件答弁において,市教委が本件英語指導助手の平成26年度卒業式への出席について慎重に対応するよう指導・助言をする
                      際考慮した状況として,本件英語指導助手による本件ビラのポスティングや小学校における配布,署名活動及び市庁舎前での抗議
                      行動並びに新聞報道のほか,別件救済申立てを行ったことも含めていたことが認められる。また,市と組合は,団体交渉を行うな
                      ど一定の対立状況があったこと及び市は本件組合員2名が組合の組合員であることを認識していたことが推認できる。 
                        以上の事実からは,市は,組合員である本件組合員2名に対し,組合らが別件救済申立てをしたことを理由の一つとして,平
                      成26年度卒業式への出席に認めないとの「不利益な取扱い」をしたものであるということができる。 
                      イ また、市は,卒業式間近の時期に,署名活動や職員室内での無断でのビラ配りがあったことを要因として,卒業式に何らかの
                      混乱を生じることを憂慮したと主張するが,これまでに,本件英語指導助手によって,児童の参加する学校行事や授業が円滑な進
                      行を妨げられたり混乱させられたりした事実は認められない。平成26年度卒業式以前に,本件英語指導助手による本件ビラのポ
                      スティングや小学校における配布,署名活動及び市庁舎前での抗議行動並びに新聞報道があったというだけでは,C2小学校及び
                      C3小学校の平成26年度卒業式の前後あるいは最中にこれらの行為が行われ,児童らが小学校の教育課程を修了し,新たな門出
                      を祝う式典という児童が主役である卒業式の意義が損なわれるとの懸念をもつことに,合理的な理由が存在せず、これらの懸念は
                      具体的なものではなかった。 
                        市は,本件ビラの配布,署名活動及び市庁舎前などでの抗議行動及びそれに伴う新聞報道という結果は,組合活動及びそこか
                      ら波及する事態として予想されることであって,それを理由に,本件組合員2名の平成26年度卒業式への出席を認めなかったの
                      は,労働組合の組合員であることの故をもって,「不利益な取扱い」をしたものといえる。 
                      ウ 以上によれば,市が,本件組合員2名を平成26年度卒業式に出席させなかったことは,労働組合の組合員であることの故を
                      もって,あるいは不当労働行為救済申立てをしたこと理由として「不利益な取扱い」をしたものであり労組法7条3号及び4号の
                      不当労働行為に該当する。 
                      (3)
                      争点1-3(本件組合員2名が平成26年度卒業式への出席を認められなかったことが市による労働組合への支配介入に当たる
                      か)について 
                        本件組合員2名の平成26年度卒業式への出席を認めなかった取扱いは,本件組合員2名にとっても他の労働者にとっても,
                      その組合活動意思を萎縮させ,そのため組合活動一般に対して制約的効果が及ぶおそれのあるものといえる。 
                        よって,本件組合員2名が平成26年度卒業式への出席を認められなかったことは,市による組合の運営に対する支配介入に
                      も当たると認められる。 
                      (4)
                      以上のとおりであり,本件組合員2名が平成26年度卒業式への出席を認められなかったことが,市による労組法7条1号本文前
                      段,3号及び4号に該当する不当労働行為に該当
                      する。 
                      3 争点2(本件答弁が労働組合への支配介入に当たるか)について 
                        本件答弁は,市教委の教育指導部長であるB1部長が市を代表して発言したものといえ,組合だけでなく,その組合員や関係
                      者を含む社会全体に向けて発信されたものである。本件答弁は,本件組合員2名の平成26年度卒業式への出席を認めない理由と
                      して,組合のこれまでの組合活動からみて,組合員が卒業式に参加すると卒業式が混乱する懸念があることを公然と述べたもので
                      あるが、そのような懸念が具体的なものであったとはいえないから,公然と,組合の組合活動は卒業式を混乱させるおそれがある
                      と批判し中傷したことになる。これは,労働者らの組合活動意思を萎縮させ,そのため組合活動一般に対して制約的効果が及ぶお
                      それのあるものというほかない。 
                        よって,本件答弁は,組合に対する支配介入といわざるを得ず,労組法7条3号に該当する不当労働行為である。 
                      4 結論 
                        以上の次第で,本件救済命令は,違法ではなく,市の請求は,理由がないので棄却すべきところ,これを認容した原判決は失
                      当であり,本件控訴は理由があるから,原判決を取り消したうえ,これを棄却することとする。  | 
                   
                  
                    | その他  | 
                      | 
                   
                
               
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