事件番号・通称事件名 |
大阪地裁平成28年(行ウ)第250号
高槻市不当労働行為救済命令取消請求事件 |
原告 |
高槻市 |
被告 |
大阪府(同代表者兼処分行政庁・大阪府労働委員会) |
被告補助参加人 |
Zユニオン |
判決年月日 |
平成29年10月2日 |
判決区分 |
一部取消 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、市が、市立小学校の英語指導助手(AET)の平成27年
度以降の契約の更新をめぐる対立から、不当労働行為救済申立て(別件)、春闘集会、記者会見等の組合活動を行ったZユニオン
の組合員を、平成26年度卒業式に出席させないよう市立小学校に指示したこと、市議会答弁においてZユニオンらの組合活動を
誹謗したことが不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件で、大阪府労委は、市に対し文書手交を命じ、その余の申立て
を棄却した。
市は、これを不服として、大阪地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、大阪府労委の救済命令を一部取り消し
た。 |
判決主文 |
1 大阪府労働委員会が、大阪府労働委員会平成27年(不)第35
号事件について平成28年10月14日付けでした原告に対する不当労働行為救済命令のうち主文第1項を取り消す。
2 訴訟費用のうち、補助参加によって生じた費用は被告補助参加人の負担とし、その余は被告の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 争点1(組合員2名が平成26年度卒業式への出席を認められな
かったことが原告による労組法7条1号本文前段、3号及び4号の不当労働行為に該当するか)について
(1)争点1-1(組合員2名が平成26年度卒業式への出席を認められなかったことが「不利益な取扱い」に該当するか)につ
いて
平成26年度以前においては、AETが市立小学校の卒業式への参加を希望して断られたことはなかったのに、本件組合員2名
は、平成26年度卒業式への出席を希望して断られたことは、1年間関わった児童らが小学校の教育課程を修了し、新たな門出を
祝う式典に参加することが叶わないことを意味するのであるから、当該取扱いは、市立小学校における労働者の一般的認識に照ら
して通常不利益なものと受け止められるし、このような取扱いを受けるとすれば、労働者の組合活動意思が萎縮し、そのために組
合活動一般に対して制約的効果が及ぶようなものであると認められる。
したがって、本件組合員2名が平成26年度卒業式への出席を認められなかったことは、労組法7条1号本文前段及び4号の
「不利益な取扱い」に該当すると認めるのが相当である。
(2)争点1-2(原告が、本件組合員2名が労働組合の組合員であることの故をもって、あるいは不当労働行為救済申立てをし
たことを理由として「不利益な取扱い」をしたといえるか)について
市教委は、校長とのやり取りの時点において別件救済申立てを知らなかったと推認され、その後、本件組合員2名の卒業式への
参加を断るまでの間に、校長らが同申立ての存在を知ったと認めるに足る的確な証拠は認められない。
以上の点に鑑みれば、市が、本件組合員2名が別件救済申立てをしたことを理由として「不利益な取扱い」をしたとはいえな
い。
実際に、当該小学校1校において、組合員が職員室内で本件ビラを校長に断ることなく配布するという事態が起きていたのであ
るから、それが卒業式の前後あるいは最中に行われ、児童が主役である卒業式の意義が損なわれることを懸念することには相応の
理由が存在するというべきである。
一方、仮に市が、AETの一部が組合員であることを理由に卒業式から排除することを企図したということであれば、あらかじ
め全小学校の校長にその旨指導・助言しなければ達成し得ないと考えられるところ、市がそのような行動に出ていないことは、組
合員1名が卒業式への参加を許可されたことから明らかである。
以上の点を総合的に勘案すると、市が、組合員であることの故をもって「不利益な取扱い」をしたとまで認めることはできな
い。
(3)争点1-3(本件組合員2名が平成26年度卒業式への出席を認められなかったことが原告による労働組合への支配介入に
当たるか)について
確かに、本件組合員2名の卒業式への参加を断ったことは、労働者らの組合活動意思が萎縮し、そのため組合活動一般に対して
制約的効果が及ぶようなものであるとも考えられる。
もっとも、市教委による指導・助言は、本件AETによるビラのポスティングや小学校における配布、署名活動及び市庁舎前で
の抗議行動並びに新聞報道が卒業式の前後あるいは最中に行われ、児童が主役である卒業式の意義が損なわれることを懸念して行
われたものであり、また、組合員であることを理由に卒業式から排除することを企図したとは認められない。
以上の点に鑑みれば、本件組合員2名が平成26年度卒業式への出席を認められなかったことが組合の結成又は運営への支配介
入に当たるとまでは認められない。
(4)小括
以上によれば、本件組合員2名が平成26年度卒業式への出席を認められなかったことが、原告による労組法7条1号本文前
段、3号及び4号の不当労働行為に該当するとはいえない。
2 争点2(本件答弁が労働組合への支配介入に当たるか)について
実際に、当該小学校1校においては、組合員が職員室内で本件ビラを校長に断ることなく配布するという事態が起きていたので
あるから、AETによるビラの配布等の行為が、卒業式の前後あるいは最中に行われ、児童が主役である卒業式の意義が損なわれ
ることを懸念するのには相応の理由が存在するというべきである。
また、そもそも本件答弁は、部長が、市議会議員からの質問に対し、原告の対応及びその根拠を答弁したというものにすぎず、
被告補助参加人の組合活動を中傷したものとは認めがたい。
以上によれば、本件答弁は、市による組合の結成又は運営への支配介入に当たるとは認められず、不当労働行為に該当するとは
いえない。
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その他 |
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