労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  ダン生コン 
事件番号  大阪高裁平成26年(行コ)第167号  
控訴人(原告)  全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(「組合」) 
被控訴人(被告)  大阪府(被告)(同代表者兼処分行政庁・大阪府労働委員会) 
被控訴人補助参加人(被告補助参加人)  株式会社ダン生コン(「会社」) 
判決年月日  平成27年4月27日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 組合が、会社による①組合員に対する休日の取扱いについて、組合を無視して、直接、同組合員に通知文書を交付した行為、②これに対する組合の抗議活動について警察に通報し、出動を要請した行為、③組合との団体交渉を拒否する行為、④組合員2名に対し、職場離脱を理由として欠勤控除をした行為、⑤従業員全員が組合員であるセメント・生コンクリート(以下、単に「生コン」という。)輸送業者に対して発注しない行為及び⑥同組合員2名を解雇した行為が、不当労働行為に該当すると主張して、救済を申し立てたところ、大阪府労働委員会は、申立を棄却した。
2 組合は、これを不服として、大阪地裁に取消訴訟を提起したところ、同地裁は、本件請求を棄却した。
3 組合は、これを不服として、大阪高裁に控訴したが、同高裁は、組合の控訴を棄却した。  
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、補助参加で生じた費用も含め、控訴人の負担とする。  
判決の要旨  第3  当裁判所の判断
1 原判決の引用
  当裁判所も、組合の本件請求は、理由がないから、いずれもこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、後記2のとおり、当審における当事者の補充主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1ないし6に認定説示するとおりであるから、これを引用する。
2 当審における当事者の補充主張に対する判断
(1) 争点(1) (本件通知書の交付が支配介入に当たるか)について
 本件通知書の交付は、会社代表者において、A1が、コンクリート主任技士の資格を全員が取得するという会社の方針に反し、平成22年11月13日の本件講習会を欠席しようとしていると認識し、このような同人の態度を注意し、本件講習会の欠席が業務命令違反になる旨注意・警告したものと推認される。そこで、会社によるこのような注意・警告であるが、従業者に対するいわゆる不利益処分に該当せず、したがって、事前に組合に対して通知したり、また、A1が組合に相談する機会を与えたりする必要性まではなかったというべきである。
 会社代表者による本件通知書の交付は、上記のとおり業務上の指揮命令権に基づき行われたものであって、組合と関わりなく行うことが可能な行為であって、組合の自主的運営・活動を妨害する行為等ではない。
 したがって、会社代表者によるA1への本件通知書の交付は、組合に対する支配介入に当たらない。
(2) 争点(2) (本件通報が支配介入に当たるか)について
 ①組合員らは、会社の従業員でないにもかかわらず、会社に事前の連絡もないまま、会社の就業中に多数で会社の事務所の敷地内に無断で立ち入り、会社代表者に対し、了解を得ないまま本件通知書の説明を求めたこと、その際、会社代表者から氏名を尋ねられても回答を拒否したこと、②同代表者は、上記①の組合員らの求めに対して、会社の就業時間中であることを理由に後日に団体交渉を行うとして退去を要請したこと、それに対し、組合員らは、単なる交渉や説明を求めるに止まらず、結果的に本件通報後も含めて多数で約7時間も会社の事務所ないしその敷地内に滞留し、同事務所内の引き戸を力づくで開けたり、机を叩くなど有形力を行使しながら、本件通知書の交付の不当労働行為性を認めた上での謝罪や同通知書の即時廃棄を執拗に要求したことがある。以上の事実を踏まえると、少なくとも、会社代表者が本件通報をするまでの間の組合員らの上記各行為は、団体交渉の態様として社会的相当性を逸脱したものであることが推認され、同認定を覆すに足りる証拠はない。したがって、同代表者が組合員らの上記各行為について違法と判断したとしても、不合理とはいえず、かえって、合理性のある相当な根拠のある判断といえ、これに、本件通報後、警察官が臨場しても、同代表者が約7時間も業務にほとんど従事できない状況を強いられたことも併せて考慮すると、本件通報をもって組合員らに対する過剰な対応であったと評価することはできない。
 したがって、会社代表者による本件通報は、組合に対する支配介入に当たらない。
(3) 争点(3) (本件通告が正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか)について
 組合員らは、平成22年11月15日、約1時間にわたり、多数で会社代表者を取り囲み、乱暴な言動によって威圧しながら、団体交渉の早期開催を要求し、容易に同代表者を解放せず、また、その3日前の同月12日にも、多数で会社の事務所に押しかけ、同代表者が退去を求め、さらに警察が出動してきても、退去しなかった。同組合員らのこれらの行為は、いずれも社会的相当性を超える行為というほかなく、以上の事実を踏まえると、組合員らは、将来の会社代表者らとの団体交渉においても、社会的相当性を超える態様で交渉を行う蓋然性が高いと推認される。したがって、会社において、組合が上記社会的相当性を超える行動を陳謝し、同態様で交渉を行わない旨約束しない限り、団体交渉に応じない旨の本件通告をしても、そのことには正当な理由がないとはいえず、かえって、正当な理由があるというべきである。
 したがって、本件通告が正当な理由のない団体交渉拒否には当たらない。
(4) 争点(4) (本件欠勤控除が不利益取扱いに当たるか)について
 ①A1は、平成22年11月12日の午前9時頃から午後2時頃までの間、断続的に、会社代表者に対し、組合員らとともに出勤することとなっていた同月13日の取扱いについて発言を行い、その間、A1が本来、行うべき配車及び出荷業務は、同人に代わって別の従業員が行ったこと、②A2は、平成22年11月12日の午前10時27分頃、組合員らの中にいたところ、会社代表者から注意されたのに対し、「私昨日休んでませんので」と反論するなど、職場離脱を認めていることがある。以上の事実を踏まえると、A1及びA2は、同日、相当程度の時間、業務離脱をしたことが推認され、同認定を覆すに足りる証拠はない。
 したがって、本件欠勤控除は、組合員であることを理由とする不利益取扱いではない。
(5) 争点(5) (会社がベスト・ライナーに生コン輸送を発注しない行為が、不利益取扱いや支配介入に当たるか)について
 会社は、平成20年5月にベスト・スタッフが活動停止した以降、集栄との間で、相互の立場に配慮した生コン運搬に関する保障契約を締結して、優先的に同社に輸送業務を発注しており、そのようなこともあって、京都協組〔「京都生コンクリート協同組合」のこと。〕から、平成22年11月24日、会社代表者に対し、優先的にべスト・ライナーに発注するよう求められた際、集栄との上記契約を理由に難色を示したことがあり、そのため、京都協組が会社に対し、本件出荷停止措置をしたことが認められる。
 ところで、会社は、平成20年5月にべスト・スタッフが活動停止する以前も含めて会社が製造した生コンの輸送について、ベスト・ライナーと直接取引をしたことがない上、会社が輸送業務を誰に発注するかは、会社の経営判断によるものであって、従業員が組合員であるベスト・ライナーに対して発注しなかったとしても、それによって、直ちに組合に対する支配介入などの不当労働行為が成立することはない。また、少なくとも、会社は、平成20年5月以降、べスト・ライナーが会社製造にかかる生コンの輸送に関与していないこともあってベスト・ライナーないし同社の運転手に対して何らかの指示等をすることもなかった。以上の事実を踏まえると、会社がベスト・ライナーの運転手の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとまで認めることができず、かえって、そのような地位になかったことが強くうかがわれる。
 また、会社とべスト・ライナーとは、平成20年5月までは、元請会社と孫請会社(ただし、べスト・スタッフが下請)の関係にあり、その際、孫請会社としてベスト・ライナーが生コンの輸送を直接担当することがあったことを踏まえると、べスト・ライナーの運転手は、会社のプラントで生コンを積み込む際、会社の従業員から生コンの輸送に必要不可欠な作業の日時、場所、内容、注意事項等の指示を受けていたが、当該指示内容は、京都協組から受けた内容で、生コンの輸送というベスト・スタッフとの輸送契約に基づき、注文者として行う必要不可欠な指図内容であって、それを超えたものであったことまでは認められず、その他、それを超える内容まで指図していたとまで認めるに足りる証拠はない。したがって、会社が、ベスト・ライナーの運転手に上記指示をしていた期間についても、べスト・ライナーの運転手の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとまで認めることができず、かえって、そのような地位になかったことが強くうかがわれる。
 したがって、会社は、べスト・ライナーの運転手との関係で労組法7条の「使用者」には当たらない。
(6) 争点(6) (本件解雇が不利益取扱いに当たるか)について
 会社がどの運送業者と契約を締結するかは、会社の経営判断事項として広い裁量が認められるから、特定の運送業者を採用しないことも、不合理な経営判断として裁量権の逸脱・濫用とならない限り、裁量の範囲内のものとして認められると解される上、京都協組の会社に対する優先的にべスト・ライナーへ発注するようにとの要請に法的拘束力がなく、また、その際のべスト・ライナーとの取引条件が必ずしも明らかになっていなかった状況の下では、べスト・ライナーと取引をしなくとも、会社のその判断が直ちに不合理となるものではない。また、会社は、確かに、平成23年1月19日に京都地方裁判所に京都協組を債務者として出荷再開を求める仮処分申立てをしているところ、会社に、同申立て当時のみならず本件解雇当時、事業継続の意思があったとしても、会社の経済的窮状を踏まえると、同意思をもって本件解雇の必要性がなかったとまで認めることができない。
 また、確かに、会社は、本件解雇に当たって、事前に組合と協議していないことがある(当事者間に争いがない。)。しかし、会社が組合と同協議をしなかったことは、原判決で引用して認定説示したとおり、組合側の事情によって同協議をすることが困難な状況があったところ、以上の事実を踏まえると、同協議をしなかったことにより本件解雇手続が、信義則に反する、また、相当性を欠いたとまで認めることができず、その他、それらを認めるに足りる証拠はない。
 本件解雇には、少なくとも、人員削減の必要性及び解雇回避措置の可能性がないとの各要素が認められる上、手続の相当性について、上記のような事情があることを総合すると、解雇権の濫用があったとまでいえない。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成22年(不)第76号・23年(不)第11号 棄却 平成24年8月24日
大阪地裁平成25年(行ウ)第48号 棄却 平成26年9月17日
最高裁平成27年(行ヒ)第344号 上告不受理 平成28年7月8日
 
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