概要情報
事件名 |
ダン生コン |
事件番号 |
大阪地裁平成25年(行ウ)48号 |
原告 |
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(「組合」) |
被告 |
大阪府(処分行政庁・大阪府労働委員会) |
被告補助参加人 |
株式会社ダン生コン(「会社」) |
判決年月日 |
平成26年9月17日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 会社が、①休日の取扱いについて、組合を無視して直接組合員に通知文書(「本件通知書」)を交付したこと、②これに対する抗議活動を警察に通報(「本件通報」)し、出動を要請したこと、③団交応諾を撤回し、団交を拒否する旨の通知書(「本件通知書」)を交付したこと、④組合員2名に対し、職場離脱を理由として欠勤控除(「本件欠勤控除」)をしたこと、⑤従業員全員が組合の組合員である生コン輸送業者に対して発注しないこと及び⑥組合員2名を解雇(「本件解雇」)したことが、不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。大阪府労委は、組合の申立てをいずれも棄却した。
2 組合は、これを不服として大阪地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合の訴えを棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、参加によって生じた費用も含め、原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 争点(1)(本件通知書の交付が支配介入に当たるか)について
本件通知書の交付は、会社代表者において、A2が、組合への加入を公然化したことを契機として、コンクリート主任技士の資格を全員で取得するという会社の方針に反し、講習会を欠席しようとしていると認識し、このような同人の態度を注意し、本件講習会の欠席が業務命令違反になることを警告したものと認められる。会社代表者がA2に対し本件通知書を交付した行為は、労働契約上の指揮命令権に基づき行われたものであるといえるから、組合に対し事前に通知したり、A2に対し組合に相談する機会を与えなければならないものではなく、ことさらに組合の存在を無視したものと評価することはできない。本件通知書の交付は、労組法7条3号の不当労働行為(支配介入)に当たるとはいえない。
2 争点(2)(本件通報が支配介入に当たるか)について
組合員らが、会社代表者に対し、本件通知書の交付について不当労働行為であると主張して、説明を求めたり、抗議を行った行為が団体交渉の態様として社会的相当性を逸脱していることは明らかである。また、その結果、会社代表者が行った本件通報についても、上記状況に照らせば、組合員らの上記行為が違法であると同代表者が判断したとしてもそれには相当の根拠があったというべきである。組合員らの要求をのまない限り、同人らが継続して事務所内に滞留する高度の蓋然性が認められたのであるから、その説得も借りて組合員らの退去を求めようとしたことについても十分な理由があるというべきであり、本件通報をもって、その必要性もないのに行った過剰な対応と評価することはできない。総合考慮すると、本件通報が組合に対する弱体化を図ろうとした行為とまでは評価できず、労組法7条3号の不当労働行為(支配介入)には当たらない。
3 争点(3)(本件通告が、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか)について
団体交渉は、平和的かつ秩序ある態様で行われなければならず、社会通念の許容する正当な権利行使の範囲を逸脱する場合には法律上又は憲法上の権利として保護されないから、労働組合が、使用者側の者に対し、吊し上げ、暴行、脅迫、監禁など社会的相当性を超える態様で団体交渉を迫った場合には、使用者は、団体交渉を拒否することも許される(最高裁第一小法廷昭和54年12月19日決定・刑集33巻7号966頁参照)。そして、そのような態様で交渉を行った労働組合が、その後に行われる団体交渉の場においても、その態度を改めず、社会的相当性を超える態様で交渉を行う蓋然性が高いと認められる場合には、使用者は、労働組合が過去の団体行動や組合員の行動のあり方を陳謝し、社会的相当性を超える態様で交渉を行わないことを約束しない限り、団体交渉には応じないとの態度をとることも許されると解するのが相当である。
組合員らの一貫した行為態様をみると、組合員らは、将来行われる団体交渉の場においても、社会的相当性を超える態様で交渉を行う蓋然性が高いと認められるから、会社は、組合が上記の行動を陳謝し、社会的相当性を超える態様で交渉を行わないことを約束しない限り、団体交渉に応じないとの態度をとることもやむを得ず、許されると解される。本件通告は、労組法7条2号の不当労働行為(正当な理由のない団体交渉拒否)には該当しない。
4 争点(4)(本件欠勤控除が、不利益取扱いに当たるか)について
A1らの職場離脱の時間を正確に把握できない以上、本件欠勤控除の各金額が正当に控除できるかどうかは必ずしも明らかではないものの、その金額に鑑みると、少なくとも労働基準法施行規則19条に定める方法によって計算した金額を大幅に超えるものでないことは確かである。本件欠勤控除は、A1らの職場離脱によるものであって、同人らが組合員であることを理由とするものではないから、その額が必ずしも正確なものではないとしても、労組法7条1号(不利益取扱い)であるとまでいうことはできない。
5 争点(5)(会社がベスト・ライナーに生コン輸送を発注しない行為が、不利益取扱いや支配介入に当たるか)について
会社人とベスト・ライナーの関係は、平成20年5月までは、元請会社と孫請会社の関係にあり、ベスト・ライナーの傭車運転手に対する指示は、生コン輸送を他の業者に行わせるにあたり、注文者として行う請負契約に基づく最低限必要な指図にすぎない。孫請会社における労働者の労働条件が上記請負契約の内容に伴い自ずと決定されることはやむを得ないものであり、これをもって、ベスト・ライナーの運転手の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとまではいえない。会社は、ベスト・ライナーに雇用されている運転手との関係で、労組法7条にいう使用者には当たらないから、その余の点について検討するまでもなく、会社がベスト・ライナーに生コン輸送を発注しない行為は、不当労働行為には当たらない。
6 争点(6)(本件解雇が不利益取扱いに当たるか)について
本件解雇は、経営上の理由から、会社の全従業員5名に対してなされた整理解雇である。解雇権の濫用となるか否かを検討すると、①倒産に至る可能性がある高度な経営危機に瀕したことから、従業員全員を解雇する必要性があったと認められ、②希望退職を募ったとしてもA1らに休業手当を支払い続けることは困難であり、また、雇用助成金の制度により解雇の回避の可能性があったとまではいえず、解雇回避措置の可能性はなかったといえ、③本件解雇当時、会社が、A1ら及び組合に対し、事前に本件解雇の説明や協議をすることは事実上困難であったと認められ、本件解雇の手続が、信義則に反し相当性を欠くとまではいえない(なお、本件解雇は、従業員全員を解雇したものであるから、人選の合理性は問題とならない。)。本件解雇は、解雇権の濫用に当たるものではなく、本件解展がA1らが組合員であることを理由としてなされたものと認めることはできない。本件解雇は、労組法7条1号の不当労働行為(不利益取扱い)に当たらない。
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その他 |
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