概要情報
事件名 |
東日本旅客鉄道(本社安全キャラバン) |
事件番号 |
東京高裁平成26年(行コ)第180号 |
控訴人 |
東日本旅客鉄道労働組合(「組合」) |
被控訴人 |
国(処分行政庁・中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
東日本旅客鉄道株式会社(「会社」) |
判決年月日 |
平成26年9月25日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
1 組合員7名(「本件組合員ら」)が、会社浦和電車区において、組合からの脱退ないし会社からの退職を組合員Cに強要したとして、東京地方裁判所により有罪判決を受け(浦和電車区事件」)、会社はこれを理由として、平成19年8月30日、退職者1名を除く組合員6名を懲戒解雇処分とした(「本件懲戒解雇処分」)。
これに対し、組合は、組合員らを対象として、本件懲戒解雇処分の撤回を求める署名行動(「本件署名行動」)を行ったが、B1常務は、同年11月1日、会社の2事業所で実施された、安全運行確保のための本社安全キャラバンの参加者に対する挨拶において、浦和電車区事件、本件懲戒解雇処分及び本件署名行動に言及し、「社長のやったことに対して異を唱えるのであれば、それなりの覚悟をして唱えていただきたい」等と発言した(「本件発言」)。組合は、本件発言が不当労働行為であるとして救済を申し立てた。
2 初審東京都労委は、本件発言は不当労働行為に該当しないとして、本件救済申立てを棄却し、中労委も組合の再審査申し立てを棄却した。組合は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、組合の請求を棄却した。
3 組合は、これを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は、組合の控訴を棄却した。
|
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
|
判決の要旨 |
1 当裁判所も、組合の本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は、後記2のとおり付加するほかは、原判決「事実及び理由」中の第3の1ないし3に記載のとおりであるから、これらを引用する(ただし、「別紙」は「原判決別紙」と読み替える。)。
2 当審における組合の主張に対する判断
(1) 組合は、組合が組織として取り組んできた組合活動である本件署名活動に関し、B1常務が「覚悟してやってもらいたい」などと述べて威嚇したから、労働組合法7条3号に定める支配介入に当たると主張する。
(2) 組合の上記主張は原審における主張の繰り返しであり、これに対する判断は、前記引用に係る原判決説示のとおりであるが、さらに原判決認定事実に基づき当裁判所の判断を付言すると、次のとおりである。
ア 本件署名活動の対象となった浦和電車区事件は、列車の安全運行の確保を担う会社にとって、再発防止に取り組むべき重要な課題といえるから、B1常務が本件安全キャラバンの冒頭挨拶において、同事件に言及することは相当である(この点は、組合も争わない。)。また、本件発言当時、会社は、本件組合員らが1審の東京地方裁判所で認定された強要行為をし、その結果、職場秩序を著しく乱し、会社の信用を著しく失墜せしめたとして、懲戒解雇しており、B1常務が、本件安全キャラバンの機会を捉えて、本件組合員らを擁護することが、会社外部の者からどのように見られるかという視点を交えながら、参加者に対し、本件組合員らに執った措置への理解を求め、その判断の正当性を説明することも許されると解される。
イ たしかに、その際、B1常務が本件発言において用いた「覚悟」や、「今日はそれぐらいに留めておきますけどね」との表現は、適切なものであったとはいいがたいが、上記アで指摘したところに加え、①B1常務が、本件発言前に、「あとは社員一人ひとりの意思表示だから、会社がどうのこうの言う立場でない。」旨前置きし、本件発言後、会社も改めるべきは改めていくつもりであり、意見を聞かせてもらいたい旨付言して挨拶を締めくくったこと、②本件発言は、B1常務の挨拶の一部にすぎず、特に強調され、繰り返されたものでなく、組合員のみならず参加者全員を対象として行われたものであること、③本件発言後、会社は、本件署名活動に会社として関与する考えのないことを繰り返し表明し、本件発言に先立つ秋田支社長の発言を巡る一件でも、文書で、組合が行う本件署名活動に会社として介入するつもりはない旨回答していることなどを総合すると、本件発言が、組合の組織や運営等に対する支配介入に当たるということはできない。
ウ 組合は、上記①ないし③の事情をもって不当労働行為性を否定するのは相当でないとも主張するが、本件発言の趣旨やその影響力を検討するに当たって、前後の発言の内容や、本件発言の状況、本件署名活動に対する会社の基本的な姿勢、その組合に対する説明等を考慮するのは相当なことであり、組合の主張を斟酌しても、上記①ないし③の事情が、本件発言の不当労働行為性を否定する事情に当たることは明らかである。
|
その他 |
|