概要情報
事件名 |
シオン学園 |
事件番号 |
東京高裁平成25年(行コ)第251号 |
控訴人 |
国(処分行政庁・中央労働委員会) |
控訴人補助参加人 |
株式会社シオン学園(「会社」) |
被控訴人 |
全国自動車交通労働組合総連合会神奈川地方労働組合(「組合」) |
被控訴人 |
全国自動車交通労働組合総連合会神奈川地方労働組合三共自動車学校支部(「支部」) |
判決年月日 |
平成26年4月23日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 組合らは、自動車教習所を経営する会社が、指導員らに対する平成19年度上期から20年度下期までの各一時金額(本件各一時金)について、支部組合員に対して非組合員と比べて低額に支給したことは労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとして、救済を申し立てた。
2 神奈川県労委は、会社は、本件各一時金の支払について、支部組合員らを差別しており、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に該当するとして、会社に支部との一時金協定所定の平均支給額を基礎とした既支給額との差額の支払およびこれに関する文書手交を命じた。
3 会社は、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、会社の再審査申立てを認容して初審命令の救済部分をいずれも取り消し、組合の救済申立てを棄却した。
4 組合らは、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、中労委命令の全部を取り消した。
5 中労委は、これを不服として東京高裁に控訴したが、同高裁は控訴を棄却した。 |
判決主文 |
本件控訴を棄却する。 |
判決の要旨 |
1 当裁判所も、会社の平成19年上期・下期及び平成20年上期・下期の各一時金支給は、労組法7条1号、3号の各不当労働行為に該当するから、それらの各不当労働行為該当性を否定し、本件初審命令のうち、組合らの救済命令を認容した部分を取り消し、救済命令申立てを棄却した中労委の本件再審査命令を取り消すのが相当であると判断する。その理由は、補正し、後記2のとおり当審における中労委らの主張に対する判断を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第3 判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審における中労委らの主張について
(1) 中労委の主張(原判決の第2の3(2)ア(ア)ないし(エ))について
ア 上記(ア)の主張について
支部組合員と非組合員との間で、一時金の支給格差が生じている場合に、個々人ごとに不当労働行為を個別に立証する方法のほかに、各集団間の外形的・量的格差の存在によって不当労働行為を推認する方法がある。そして、本件において、支部組合員と非組合員とは、全体として同質性を有する集団と認められる。また、勤務実績において偏りのない集団であることを判断するためには、両方の集団が十分な大きさを持つに越したことはないが、本件の規模であれば、上記立証方法を適用する前提を欠くものとは解されない。さらに、中労委の指摘する支部組合員と非組合員との勤務実績の差は、時間数の差自体のよって立つところ、すなわち従前からの会社と支部組合との労使関係の実際に起因するものというべきであるから、勤務実績の差をもって、同質性を否定することは相当とはいえない。本件事実関係の下においては、査定格差及びそれに基づく一時金支給額の格差は、特段の事情が認められない限り、支部組合員に対する差別的取扱いと評価することが相当である。本件において、上記特段の事情は認められない。
イ 上記(イ)の主張について
会社の人事考課制度における査定の結果、支部組合員が非組合員に比して低く査定されている場合に、それが組合員であることを理由に不当に低く取り扱ったためといえるか否の判断に当たっては、考課制度の内容及び考課査定の実際の双方に着目する必要がある。、一般的には考課制度の内容自体が合理性を欠くものである場合には、その適用の結果もまた不合理なものになることは自明である。本件においては、会社の稼働考課は、考課制度として合理性を有するものとはいえず、その運用において、支部組合員が不利益に取り扱われる可能性が高い。また、本件考課査定の運用も支部組合員であることを理由に不当に低く取り扱ったというべきであるから、本件における一時金支給格差は、会社が、支部組合員が支部所属又は組合活動のゆえに不利益に取扱ったものと認めるのが相当である。
ウ 上記(ウ)の主張について
会社が一時金支給における考課分を拡大させた背景に経営状況の悪化及び経営回復を図らなければならない事情があったことは、中労委の指摘するとおりである。しかし、本件事実関係の下においては、その主たる目的が指導員の労働意欲向上により業績回復を図るものであったとは認めることができない。したがって、中労委の主張は、その前提を欠くものである。
エ 上記(エ)の主張について
上記ウの点に加え、支部と会社との間の労使関係の従前からの経緯及び実際の状況等に照らせば、会社には、差別的取扱いの意図が推認され、これを覆すに足りる特段の事情は認めることができない。
したがって、中労委の上記各主張は、理由がない。
(2) 会社の主張(上記第2の3(2)イ(ア)ないし(ウ))について
ア 上記(ア)の主張について
上記(1)アに説示したとおり、本件においては、数量的格差から差別を推認することが許されないものではない。
イ 上記(イ)、(ウ)の主張について
上記(1)イに説示したとおり、本件においては、稼働考課制度の内容自体が十分に合理性を有するものとはいえず、支部組合員が不利益に取り扱われる可能性が高く、考課査定の実際の運用にも問題があった。
したがって、会社の上記各主張は、理由がない。
(3) 中労委及び会社が縷々述べるその余の主張は、いずれも法的に意味がないか、又は独自の見解であって、上記の判断を左右するものではない。 |
その他 |
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