労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  モービル石油(再雇用) 
事件番号  東京高裁平成25年(行コ)第434号 
控訴人  スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合西日本合同分会連合会(「分会連」)  
控訴人  スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合(「組合」)  
被控訴人  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  EMGマーケティング合同会社(商号変更前:エクソンモービル有限会社(「会社」) )  
判決年月日  平成26年4月17日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要   会社が、1、①本件再雇用制度に関する団交において、組合の合意を得ることなく平成11年1月1日付けで同制度を廃止したこと、②組合員X1(以下「X1」という。)の所属する分会連に対して、同制度の廃止に関する団交申入れを行わずに同制度を廃止したこと、2、平成11年2月28日にX1が定年退職することを知りながら、同制度を廃止し同人に同制度を適用しなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 初審福岡県労委は、いずれも不当労働行為には当たらないとして、組合らの救済申立てを棄却したところ、組合らはこれを不服として再審査を申し立てた。中労委は組合らの再審査申立てを棄却した。組合らは、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合らの請求を却下・棄却した。
 本件は、これを不服として、組合らが東京高裁に控訴した事件の控訴審判決である。  
判決主文  1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用(参加によって生じた費用を含む。)は控訴人らの負担とする。  
判決の要旨  1 当裁判所も、本件中労委命令は適法であって、本件の訴えのうち、中労委に対する命令の義務付けに係る訴えは不適法であり、その余の訴えに係る組合らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、2において当審における組合らの主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1~5に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審における組合らの主張に対する判断
(1) 組合らは、本件再雇用制度に係る合意について書面が作成されていないにもかかわらず、規範的効力が発生していると解すべき旨主張するが、同主張は、最高裁判所の判例に反するものでもあって、採用することができない。
 また、組合らは、本件再雇用制度について、会社と組合との合意は労働協約に類する規範的効力を有する旨主張するが、書面が作成されていない以上規範的効力が発生していると認めることができないことは上記のとおりであり、組合らの主張は前提を欠くものである。
(2) 組合らは、本件再雇用制度に関する団体交渉について、会社が不誠実に対応したとは認められないとした原審の判断が誤りである旨主張するが、以下のとおり、いずれも採用することができない。
ア 団体交渉におけるモ一ビル石油の対応に関する判断について
 会社の対応について、不誠実であったということはできないとした原審の判断は相当である。組合らの主張は、本件再雇用制度の廃止について組合の合意がなければ実施することができないという前提に立つと解されるものである。
イ 経営状況に関する事実認定について
 原審の認定に誤りがある旨の主張を裏付けるに足りる的確な証拠は存しない。
ウ 経過措置に関する事実認定について
 本件再雇用制度を一時停止するに当たって会社が従業員宛てに発した文書には、一時停止の期間について「延長」することもあり得るかのような表現が用いられているが、同時点において会社を取り巻く状況が好転する兆しがみられなかったことは原審の認定するとおりであり、廃止に向けての経過措置と認定した原審の認定に誤りがあるとはいえない。
エ 廃止時期選定の合理性に関する判断について
 本件再雇用制度の廃止時期を4月1日ではなく1月1日と定めたことについて合理性があるとした原審の判断は、同制度の廃止が財務面に対する影響を有する事項であることを考慮すると、原審の判断に誤りがあるとはいえない。
(3) 控訴人分会連との間では団体交渉を行うべき必要性を認めることができないとした原審の判断が誤りである旨の主張は、これに理由がないことは原審の説示するとおりである。組合らの組合運営の実態は、組合ら内部の問題であって、使用者としていずれを団体交渉の相手方とすべきかという問題に直接結び付くものではないから、判断を左右しない。
(4) 組合らは、会社が本件再雇用制度の一時停止をやめ、同制度の廃止を決定した理由は、組合ら及びその組合員を会社から排除するためであった旨主張するが、業績の悪化により、平成8年7月1日の時点で直ちに廃止することも選択肢の1つとしてあり得た中で、2年以上の経過措置を設けた上でのものであることに照らすと、同主張は採用することができない。
 組合らは、原審が、その後に再び再雇用制度が実施されることが見込まれる状況にもなかったと認められるとしたことについて、根拠が示されていない旨主張する。一時停止するに当たっての文書には、一時停止の期間について「延長」することもあり得るかのような表現が用いられていたことは上記(2)ウのとおりであるが、会社の人事担当者が福岡県労委における審問期日において、同時点で再び本件再雇用制度が実施されることがあるとは考えていなかったと証言していることなどに照らすと、同時点において会社を取り巻く状況が好転する兆しがみられなかったことは原審の認定するとおりであるから、根拠が示されていないとはいえない。そのような状況で、一時停止の期間が満了した日から更に6か月を経過した時点で本件再雇用制度を廃止したことが組合らの組合員に対する差別的取扱いに当たるものではないとした原審の判断に誤りがあるとはいえない。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡県労委平成11年(不)第2号 棄却 平成13年5月23日
中労委平成13年(不再)第27号 棄却 平成23年8月3日
東京地裁平成24年(行ウ)第109号 却下・棄却 平成25年10月30日
 
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