概要情報
事件名 |
フルハーフ岡山
|
事件番号 |
岡山地裁平成23年(行ウ)第27号
|
原告
|
フルハーフ岡山株式会社
|
被告
|
岡山県(処分行政庁:岡山県労働委員会)
|
被告補助参加人
|
岡山地域労働組合
|
判決年月日
|
平成24年5月22日
|
判決区分
|
棄却
|
重要度 |
|
事件概要 |
1 会社が、①休職中であった組合員X1の職場復帰等に関する団体交渉申入れに対し、同人の主治医からの意見収集及び会社指定の医療機関の診断結果を踏まえて対応すると回答したにもかかわらず、対応しないこと、②X1を整理解雇した後、組合が同人の解雇撤回等を求めて行った団体交渉申入れに回答しないことが、不当労働行為に当たるとして、岡山県労委に救済申立てがあった事件である。
2 岡山県労委は、会社に対し、誠実団交応諾及び文書手交を命じた。
本件は、これを不服として、会社が、岡山地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は、会社の請求を棄却した。
|
判決主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
|
判決の要旨 |
1 組合による団体交渉申入れが権利の濫用となるか、また、会社が各団体交渉に応じなかったことに労組法7条2号の「正当な理由」があるか(争点1)
団体交渉権を有する団体は、憲法や労組法上、企業内組合に限定されておらず、地域合同労組である組合も、組合員の属する企業に対して団体交渉の当事者となる権利を有するのは当然である。また、使用者は、自己の従業員が少数しか所属していないことや企業内組合が存することなどを理由として、労働組合との団体交渉を拒否することはできず、自己の従業員の加入する労働組合が複数存在する場合、いずれの労働組合も独自に使用者との間で団体交渉を行う権利が保障されている。よって、会社が既に出向や希望退職等に関し企業内組合との間で十分な話合いを行っていたとしても、上記事項に関し組合が更に団体交渉を行おうとすることは、何ら権利の濫用となるものではない。
また、X1が会社からの正当な出向命令を拒絶することを目的に企業内組合を脱退し組合に加入して自らの目的を実現しようとしていたとしても、労働組合の選択についてはX1の自由に委ねられているし、X1の上記目的実現に向けて組合が団体交渉の申入れをすること自体は、組合に保障された正当な行為である。
その他にも、各団体交渉申入れが権利の濫用であるといえるような事情は認められず、組合による上記各申入れが権利の濫用に当たるということはできないし、会社がこれを拒否する正当な理由はなかったと認められる。
2 発令時までの事情変更により救済命令が違法となるか(争点2)
(1) 職場復帰に関する団体交渉について
X1及び組合は当初より解雇の不当性を主張しており、別訴の手続においてもその有効性を争っていた。上記事情からすると、〔救済命令の〕発令時においては、解雇が撤回される可能性又は解雇が無効と判断される可能性が残されており、そうである以上、職場復帰に関する交渉が行われる余地があった。
よって、職場復帰に関する団体交渉拒否への救済を求めることにつき、組合が申立資格や救済利益を失っていたとか、職場復帰に関する団体交渉を命じることが無意味であると認めることはできない。
(2) 解雇撤回に関する団体交渉について
会社が解雇の理由につき救済手続や別訴の中で説明し尽くしていたとしても、団体交渉における自主解決の可能性が失われていたとまでいうことはできない。そうである以上、解雇撤回に関する団体交渉を行うことが無意味であるとか実現不能であったとは認められない。また、救済手続において、組合が自己の要求を譲歩しない意向を示していたとしても、団体交渉における自主解決の余地が否定されたとまではいえず、解雇撤回に関する団体交渉を行うことが無意味ということにはならない。
以上のとおりであるから、救済命令発令時において、解雇撤回に関する団体交渉拒否への救済を求めることにつき、組合が救済利益を失っていたとか、解雇撤回に関する団体交渉を命じることが無意味であると認めることはできない。
3 救済命令に至る判断過程に審理不尽の違法があるか(争点3)
県労委は、各団体交渉申入れの内容や各申入れに至る経緯などを踏まえた上で、組合が申立資格を有すること、各申入れの内容が義務的団体交渉事項であること、団体交渉を拒否する正当な理由はないことなどを判断し、各申入れの権利濫用に関する主張の検討も行った上で、救済命令を発令している。
上記事情からすると、救済命令に至る判断過程に審理不尽の違法があったとは認められない。
4 職場復帰に関する団体交渉と解雇撤回に関する団体交渉を同時に命じたことが違法か(争点4)
解雇撤回の実現又は解雇の有効性の否定がされない限り、X1の職場復帰について考える余地はないが、そうであるからといって、職場復帰に関する団体交渉と解雇撤回に関する団体交渉を同時に命じることが違法ということにはならない。
|
その他 |
|