労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  エクソンモービル(早期退職支援制度)  
事件番号  東京地裁平成22年(行ウ)第748号 
原告  スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合 
被告  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
被告補助参加人  EMGマーケティング合同会社
(旧商号 エクソンモービル有限会社) 
判決年月日  平成24年7月19日 
判決区分  却下・棄却 
重要度   
事件概要  1 会社が、①組合の導入を反対している「早期退職/セカンド・キャリア支援制度」(以下「本件早期退職支援制度」という。)に応募した組合員X1らの早期退職を承認し、同人らを退職させたこと、②これに伴い、同人らに組合からの脱退を表明させたこと、③組合の了解なく、同人らのチェック・オフを停止したことが、不当労働行為に当たるとして、大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
2 大阪府労委は、いずれも不当労働行為に当たらないとして、組合の救済申立てを棄却した。
 組合は、これを不服として、再審査を申し立てたが、中労委は、再審査申立てを棄却した。
 本件は、これを不服として、組合が東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は、組合の訴えを却下及び棄却した。
判決主文  1 本件訴えのうち、中央労働委員会に対する命令の義務付けに係る訴えを却下する。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用(補助参加費用も含む。)は、原告の負担とする。  
判決の要旨  1 組合が本件早期退職支援制度の導入に合意していない中で、会社が同制度に応募した組合員X1らの早期退職届を受理し、同人らを退職させたことが組合に対する支配介入に当たるか(争点1)
(1) 組合は、Y1課長が早期退職届を受け取ったのは〔平成〕12年2月22日が初めてではなく、事前にY1課長やY2支店長がX1らと面談し、その過程で早期退職支援制度を利用するよう誘導した旨主張する。
 早期退職届の提出について、X1らが2月22日以前に、Y1らにその意向を伝えていたことが考えられないではない。しかし、この点については、その可能性が考えられるということにすぎず、X1らにおいても、スムーズに退職するために自ら事前に会社にその意向を伝えることは通常考え得るところであって、上記可能性があるからといって、そのことから直ちに、事前にY1課長やY2支店長がX1らと面談し、その過程で早期退職支援制度を利用するよう誘導したと推認することは困難であるし、他にこの点を認めるに足りる証拠もない。
(2) その他、組合が主張している点について以下判断する。
 ア 組合は、早期退職は労働条件の変更に当たるから、組合員であるX1らの早期退職についても組合と協議し、その合意を得た上でなければ、会社は早期退職を承認できないと主張する。
 しかし、労働者である組合員が会社を退職することは、本人の意思のみによって自由にできるものであり、組合員が所属する組合との間に合意がなければ早期退職を承認できないとか、事前に組合に通知しなければならない等というものではない。
 なお、当時、本件早期退職支援制度を巡る団交は、事実上行き詰まって膠着状態にあり、会社が早期退職届を受理したことが団交を妨害するものであったとはいえない。
 イ 組合は、本件早期退職制度について、これに関する労働協約が締結されていないからといって、労使合意のないまま会社が一方的に実施できるものではないと主張するが、組合独自の見解であって採用できない。
 ウ 組合は、会社がX1らを組織外としたことや、社内研修を行ったことが、X1らに対する不当な攻撃であり、X1らが早期退職する要因になった等と主張するが、かかる主張を認めるに足りる証拠はない。
 エ 組合は、会社が早期退職届を受理したり、有給休暇の不足を休日出勤に振り替えた行為が、X1らを退職しやすくするように手引きし、X1らの退職を隠蔽した行為であり、組合に対する支配介入であると主張する。
 しかし、X1らの早期退職届は、同人らの自由意思によって提出されたと認めるのが相当であり、これを受理した会社の行為が組合に対する支配介入にあたるということはできない。また、会社がX1らの有給休暇の不足分を休日出勤に振り替えた行為等については、X1らの希望によるものであり、会社の対応は不自然ないし不適切な対応とみることはできず、組合に対する支配介入とはいえない。
(3) 以上からすれば、組合が本件早期退職支援制度の導入に合意していない中で、会社が本件早期退職制度に応募したX1らの早期退職届を受理し、同人らを退職させたことについては、組合に対する支配介入にあたるということはできず、不当労働行為には該当しない。
2 上記1に伴い、会社がX1らに組合からの脱退表明をさせたと認められるか、認められるとすると、それが組合に対する支配介入に当たるか(争点2)
(1) X1らは、自らの意思で、本件早期退職支援制度に応募し、早期退職届を提出するのと同時に組合に対して脱退届を提出したことが認められる。
 組合は、X1らは、組合結成当時からの設立メンバーであり、本件早期退職支援制度に応募し、早期退職するまで、組合活動を継続しており、組合との間が険悪になっていたわけではないと主張する。
 しかし、〔平成〕9年頃からX1らは組合員との間に距離を取るようになって、11年11月には組合員とトラブルになっているなど、X1らが組合の活動に対して、距離を取り、次第に冷淡な態度をとるようになっていたといえる。
(2) 以上からすると、会社が、X1らに対して、早期退職届を提出するのに伴い、組合からの脱退表明をさせたと認めることはできず、会社が組合に対する支配介入を行ったとは認められない。
3 会社が、組合の了解なく、X1らの12年3月分以降の組合費の引き去り(チェック・オフ)を停止したことが、組合に対する支配介入に当たるか(争点3)
 X1らは、組合から脱退するとともに、会社にチェック・オフの停止を依頼し、会社は、X1らからの依頼に応じて、チェック・オフを停止したものであり、その行為は何ら違法ではなく、組合に対する支配介入に該当するともいえない。
 この点、組合は、チェック・オフ協定は、組合と会社の間に締結されているから、X1ら個人がチェック・オフの停止を求めても、会社が自由に停止できないと主張している。
 しかし、組合員が、会社に対して、チェック・オフの停止を求めることは、自らの意思のみで自由にすることが認められており、その組合員が所属する組合が反対したとしても、組合員の申し出に応じてなされたチェック・オフの停止は有効であり、会社の行為は、何ら違法とはいえない。
4 義務付け訴訟について
 組合は、本訴において、本件命令の取消しを求める訴えの他に、中労委に対して、別紙「請求する救済の内容」の命令を発するように義務付けることを求める訴えを提起している。
 本件命令は適法であり、取り消されるべきものとはいえない。すると、組合の上記義務付けを求める訴えは、行訴法37条の3第1項2号に規定する場合に当たらないから、不適法な訴えというべきであり、却下を免れない。
5 結論
 以上のとおりであるから、本件訴えのうち、中労委に対して義務付けを求める訴えは不適法であるので、これを却下し、本件命令の取消しを求める請求は理由がないから、これを棄却する。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成13年(不)第12号 棄却(命令主文が棄却のみ又は棄却と却下) 平成17年 2月10日
中労委平成17年(不再)第9号 棄却 平成22年11月4日
東京高裁平成24年(行コ)第323号 棄却 平成24年11月29日
 
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