労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  野崎興業 
事件番号  東京地裁平成20年(行ウ)第769号 
原告  野崎興業株式会社 
被告  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
被告補助参加人  野崎興業株式会社労働組合 
判決年月日  平成24年3月19日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 会社が、①組合の組合員7名に対し、夜勤及び日曜祭日勤務を命じず、1か月間の日勤の合計回数を制限したこと(以下「本件配車制限」という。)が労組法7条1号に、②平成17年11月15日数名の非組合員運転手との懇談会(以下「11.15懇談会」という。)で、組合に関する話を持ち出したことが同条3号に該当する不当労働行為であるとして、埼玉県労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審埼玉県労委は、会社に対して、上記②の言動は不当労働行為であるとして、文書掲示を命じ、その余の救済申立てを棄却した。
 組合は、これを不服として、19年1月26日再審査を申し立てたが、その後、同年7月13日に上記②に係る再審査申立てを、20年4月23日に上記①中、X1に係る再審査申立てをそれぞれ取り下げた。中労委は、初審命令を一部変更し、本件配車制限が労組法7条1号の不利益取扱いに該当するとして、本件配車制限の取り止め、本件配車制限がなかったものとしての取扱い及びバックペイ(再審査申立て一部取下げに係るX1を除く6名に対する差額相当額の支払)を命じた。
 本件は、これを不服として、会社が、東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は、会社の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用も含め、原告の負担とする。  
判決の要旨  ○ 本件配車制限に係る不当労働行為意思の有無(争点)
1 本件配車制限は、平成17年11月18日以降、組合員7名に対して配車制限を実施することにより、結果として勤務回数について非組合員との間に格差を生じさせ、このことにより、組合員7名に対して経済的不利益を被らせるものであったが、①本件配車制限実施当時の状況下で、組合員7名が組合の組合員ではないことを推認させる証拠、事情は認められないこと、②会社は、同年10月11日開始の夜勤翌日配車調整の実施後、しばらくの間は組合員の勤務回数を更に制限する等の措置を講じていなかったが、組合結成を確認した同年11月7日後、11.15懇談会で会社の利益を代表する立場にある常務が非組合員運転手のみを集めて組合に関する話を持ち出す等し、その3日後に本件配車制限を実施していること、③労働時間等の問題は、全従業員の賃金に影響する事柄であることを考慮すれば、当該問題について会社と見解を異にする者に対してのみ配車制限を行うことに合理性があるとはいえないこと等の各事情に鑑みれば、会社は、少なくとも未必的に組合員7名が組合の組合員であることを認識した上で、組合結成等の組合活動を含め、時間外賃金等の労働条件に係る権利実現に向けた行動を起こしたことを理由に上記の不利益取扱いをしたと評価できるから、本件配車制限について会社の不当労働行為意思を認定できると解するのが相当である。
2 この点につき、会社は、本件配車制限は、X2らによる莫大な時間外賃金請求に関する紛争の拡大を未然に防止するためにやむなく実施した措置で、組合員であること故に実施したものではないと主張し、その根拠として、①X1が会社に対して提起した時間外賃金請求訴訟を平成18年7月上旬に取り下げた翌日から直ちにX1に対する本件配車制限を解除しているが、X1が組合から除名されたのは同年8月5日であり、かつ、X1は取下げに当たりその後も組合員として活動を続ける旨会社に告げていたこと、②会社は、組合結成前である平成17年10月11日にすでに夜間翌日配車調整を実施していること、③本件配車制限後、会社が、時間外賃金に関する紛争の解決やそれに伴う本件配車制限の解消に向けて様々な努力(会社役員のX2に対する協議の持ち掛け、訴訟手続における和解案の提示、組合に対する団体交渉の申入れ及び実施等)の結果、時間外賃金の算定方法等について、組合の組合員の一部であるX2らと会社との間で合意に至った時点で速やかに解除していることを挙げている。
 しかし、①本件配車制限は、組合員7名が時間外賃金等の労働条件に係る権利実現に向けた行動(組合活動を含む。)を起こしたことを理由に不利益取扱いをしたと認められ、本件配車制限の開始後に、時間外賃金請求訴訟の取下げをしたX1や、時間外賃金の算定方法等について合意に至ったX2らについて、配車制限を解除したとしても、本件配車制限開始時における上記判断を覆すには足りない。
 また、②会社が組合結成前である同年10月11日にすでに夜間翌日配車調整を実施していることについては、会社が、組合結成を確認した同年11月7日後、11.15懇談会で会社の利益を代表する立場にある常務が非組合員運転手のみを集めて組合に関する話を持ち出す等し、その3日後に本件配車制限を実施していることからすれば、従前からのX2ら時間外賃金請求等の動きに加えて、組合が結成されたことが、夜間翌日配車調整に加えて本件配車制限を実施する契機となったと認めるのが相当であるから、組合結成前に夜間翌日配車調整を実施していたことは、本件配車制限に係る会社の不当労働行為意思の推認を妨げる事情にはならない。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
埼玉県労委平成17年(不)第6号 一部救済 平成19年1月25日
中労委平成19年(不再)第10号 一部変更 平成20年11月26日
東京高裁平成24年(行コ)第139号 棄却 平成24年7月19日
 
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