労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る] [顛末情報]
概要情報
事件名  モービル石油(研修) 
事件番号  東京高裁平成23年(行コ)第5号 
控訴人  スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合大阪支部連合会 
被控訴人  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  エクソンモービル有限会社 
判決年月日  平成23年8月23日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 Y会社大阪支店で開催された社内研修(以下「本件研修」という。)において、支店管理職Y1による発言に対し、研修リーダーの支店長代理Y2が同発言を正さずに本件研修を終了させたことが、Y会社及び大阪支店によるX組合支部連合会(以下「支部連」という。)に対する支配介入に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪地労委は、大阪支店に対する申立てを却下し、Y会社に対する申立てを棄却した。
 支部連は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委はこれを棄却した。
 これに対し、支部連は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、支部連の請求を一部却下し、その余の請求を棄却した。
 本件は、同地裁判決を不服として、支部連が東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は控訴を棄却した。
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(補助参加費用も含む。)は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  1 当裁判所も、控訴人の義務付けの請求に係る訴えを却下し、その余の請求を棄却すべきであると判断する。その理由は、補正し、2のとおり判断するほかは、原判決「事実及び理由」中、第3の1から5まで及び原判決別紙に各記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審での控訴人の主張について
(1) 背景事情について
 支部連は、Y会社が、差別図書の購入発覚により、外部からの批判を受けて、社内同和研修を行うようになったが、労務管理・組合対策については何らの対策を取らず、同和研修そのものを異分子のあぶり出しに使い悪用したとし、本件研修に至る経緯やその後の研修等を理解すべき旨主張する。
 確かに、支部連とY会社が厳しい労使対立関係にあったことが窺えるものの、一方では、同和問題については、Y会社が社内同和研修に取り組むべき事情があったのであって、Y会社が、同和研修を異分子のあぶり出しに使い悪用したことを認めるに足りる証拠はないから、支部連の主張は、その前提を欠く。
(2) 大阪支店の救済命令被申立人適格について
 支部連は、(研修リーダーの)Y2が、本件研修において、Y1の発言を放置したが、大阪支店が、被用者の労働契約上の諸利益に影響を及ぼし得る地位にある者として、不当労働行為制度下における使用者たる地位を有する旨主張するが、同主張が採用できないことは、原判決「事実及び理由」中、第3の1の引用部分のとおりである。
(3) 本件Y2の行為の不当労働行為性について
 支部連は、Y2が、本件研修において、Y1の発言を放置したが、Y1の発言は支部連の組合活動に影響を与えるものであり、それを放置する本件Y2の行為の不当労働行為性は明らかであるなどと主張するが、Y1の発言が支部連の組合活動に影響を与えるものとは解されないこと、及び本件Y2の行為に不当労働行為性が認められないことは、原判決「事実及び理由」中、第3の2(1)から(3)までの引用部分のとおりである。
 付言するに、①Y1は、本件研修に、一研修員の立場で参加しており、グループリーダーや指導員になっておらず、管理職の立場と関係した参加であることを窺うことはできないし、②同研修におけるY1の発言には、労使関係に関する事柄は含まれていない。加えて、③Y1は、支部連組合員の質問には、答えていないものの、答えない理由を述べているなどからすると、Y1の発言には、労使関係上の発言という性格は見受けられず、組合活動に影響を与えるような発言とは解されない。また、④自由討議の場であった研修の場でのY2の対応に問題があったとはいえないし、かえって、⑤Y2は、Y1の発言中の不穏当な発言内容に対して、たしなめていること、事後的にもY1に対して補講をしていること、同研修のフォローアップ研修を実施したことなどからすると、研修リーダーとしては真摯に努力していたと認められるのであって、同和問題とは区別される労使関係で、組合活動に影響を与える行動をしたとみるのは困難である。
 したがって、支部連の主張を採用することはできない。
(4) 社内同和研修の内容の協議必要性について
 Y1の発言、Y2の行為は、いずれも組合活動に影響を与えるものであったとはいえないから、Y会社に不当労働行為があったとはいえず、これを前提とする協議の必要性の主張が、採用できないことは、原判決「事実及び理由」中、第3の3の引用部分のとおりである。
 なお、労使関係と同和問題の研修は区別できるものであるし、後者は、従業員教育として、Y会社の経営関係事項であって、その内容が当然には労使協議の対象にはならないことから、この点でも支部連の主張を採用することはできない。
(5) 労働委員会の審査指揮の不当性・違法性
 支部連のこの点での主張が採用できないことは、原判決「事実及び理由」中、第3の4の引用部分のとおりであるが、そもそも、証人申請及びその採否の当否については、本件命令の取消等の可否を争う本案審理の中で行えば足りることであって、労働委員会が証人尋問の採用をしなかった違法・不当を、本案の審理と区別して殊更取り上げる必要性にも乏しいから、この点でも支部連の主張を採用することはできない。

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地労委平成7年(不)第20号 却下、棄却 平成10年12月21日
中労委平成10年(不再)第49号 棄却 平成20年6月18日
東京地裁平成21年(行ウ)第18号 却下、棄却 平成22年11月29日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約149KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。