労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  日本メール・オーダー 
事件番号  東京地裁昭和48年(行ウ)第92号 
原告  株式会社日本メール・オーダー 
被告  東京都地方労働委員会 
参加人  全日本商業労働組合 
判決年月日  昭和49年 3月12日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 年末一時金交渉において、会社側が生産性向上に協力するという前提条件に固執したため、妥結に至らず、これを理由に一時金支給について組合間の差別扱いをしたことが、不当労働行為に当たるとして、東京地労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京地労委は、別組合に実施したと同一基準での支給を命じ、ポスト・ノーティスは棄却した。
 本件は、これを不服として、会社が東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は会社の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 
判決の要旨  1 不当労働行為の成否
(1) 会社が、その会社内に存在する二つの労働組合からそれぞれ受けた共通の要求に対して同一の回答を呈示し、この回答を受け入れた一方の労働組合とは労働協約を締結し、この回答を拒否した他方の労働組合とは労働協約を締結していないというような場合には、その結果両組合所属組合員の労働条件に差異を生じ、前者の労働組合所属組合員は後者の労働組合所属組合員より事実上有利な取扱いを受け、その反面として後者の労働組合所属組合員は前者の労働組合所属組合員より事実上不利益な取扱いを受けることになる。
 しかし、このことからただちに会社が後者の労働組合所属組合員を前者の労働組合所属組合員よりも不当に差別するものであるとか、後者の労働組合の運営に支配介入するものであるということはできない。
 それは、一般には、後者の労働組合の自らの選択-自主性に由来する当然の帰結とみられるからである。
 けれども、それが、会社の回答の内容やこれがなされるに至った事情、回答をめぐる会社と両組合との交渉の経過、両組合の力関係等からして、後者の労働組合所属組合員であることの故もしくは組合活動をしたことの故のものであるとか、後者の労働組合の運営への支配介入を企図したものであるとみることができる特段の事情の認められるような場合には、なお不当労働行為を構成する。
(2) 以上の見地に立って本件について検討すると、会社がX分会に対する回答に付した「生産性向上についての協力」という前提条件は、それ自体としては何ら違法なものでも合理性を欠くものでもない。けれども、右前提条件は極めて抽象的ないわば精神的条項であり、また、会社がX分会に対し右前提条件を付した事情を経理上の数字を挙げる等して具体的に説明したことを認めるに足りる十分な証拠もない。
 そうだとすれば、右前提条件の維持を主張して譲らなかった会社の態度にはにわかに首肯し難たいところがあり、この態度をもって右前提条件を固執したものと評価されてもやむを得ないところである。
 他方、一般に労働者側からは、生産性向上の名のもとに労働力の削減、労働強化、組合活動の制限がなされる場合が少なくないと受け止められている現状からすれば、X分会が、右前提条件を受け入れ難たいとしたことにはそれなりに無理からぬ理由がある。
 さらに、右前提条件は、会社がZ労組にした回答につき、Z労組から支給額についての上積み要求を受けた結果付されるに至ったものであり、Z労組が右前提条件を受け入れるであろうということは会社において当初から明らかなことでもあったものである。
 そして、これらの事実やX分会とZ労組の人的育成、会社とX分会、Z労組との団体交渉の経過、殊に会社がZ労組と労働協約を締結した時期等を総合すれば、右前提条件を付した回答をしたこと自体はともかくとして、会社が右前提条件に固執して、本件一時金についてX分会と妥結せず、Z労組所属の組合員や非組合員には本件一時金が支給されているなかで、X分会所属の組合員に対してはそれを支給しなかったことは、X分会所属の組合員をそのことの故にあるいはその組合活動の故に差別し、同時に、これによってX分会所属の組合員を動揺、混乱させ、X分会の弱体化を企図したものと推認せざるを得ない。
 したがって、これは労組法7条1号および3号の不当労働行為を構成する。
2 本件一時金の支給を命ずることの適否
(1) 救済命令は、必要な事実上の措置を命ずることにより、労使間の関係を、当該不当労働行為がなかったのとできる限り同じ状態に回復させることを目的とするものであるが、いかなる場合にどのような内容の救済命令を発するかについては法令に特段の定めはない。
 したがって、救済命令の内容については、右目的の範囲内において労働委員会の裁量に委ねられているものと解される。
(2) 本件においては、会社が、本件一時金につき、昭和47年12月1日X分会に対してした回答に付していた「生産性向上についての協力」という前提条件に固執してX分会と妥結せず、X分会所属の組合員に対し本件一時金を支給しなかったことが不当労働行為なのであるから、会社のX分会に対する同年11月24日の回答どおり本件一時金の支給を命ずるのでは、本件不当労働行為の性質、内容からして救済の目的を達し得ない。
 X分会は同年12月1日の回答に対し右前提条件を除いた6項目については、これを受け入れる旨表明しているのであるから、この回答どおり本件一時金の支給を認めるのが相当であり、支給対象者については、Z労組の組合員および非組合員には同月8日に本件一時金が支給されていることからして、同日の在籍者とするのが相当である。
 そうすると、本件命令が命ずるところは相当であって、何ら違法なところはない。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地労委昭和48年(不)第3号 一部救済 昭和48年 5月 8日
東京高裁昭和49年(行コ)第25号 全部取消 昭和50年 5月28日
最高裁昭和50年(行ツ)第77号・第78号 破棄自判 昭和59年 5月29日
 
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