労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  第二鳩タクシー 
事件番号  東京地裁昭和39年(行ウ)第22号 
原告  第二鳩タクシー株式会社 
被告  東京都地方労働委員会 
被告補助参加人  東京自動車交通労働組合
個人6名 
判決年月日  昭和43年 1月30日 
判決区分  一部取消 
重要度   
事件概要  1 会社が、人員過剰等を理由に、組合役員ら6名を解雇したことが、不当労働行為に当たるとして、東京地労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京地労委は、原職復帰、バックペイを命じ、バックペイから中間収入の控除を認めなかった。
 本件は、これを不服として、会社が東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は、初審命令において中間収入を控除しないでバックペイを命じた部分を取り消した。 
判決主文  1 被告が都労委昭和38年(不)第25号・同第45号不当労働行為申立事件につき昭和39年2月26日付でした救済命令のうち申立人6名が解雇された日から原職に復帰するまでの間に受けるはずであった賃金相当額を支払うべきことを命じた部分を取消す。
2 訴訟費用中補助参加によって生じた部分は補助参加人らの負担とし、その余は被告の負担とする。 
判決の要旨  1 本件命令中金員支払を命じた部分の適否
 労働委員会による不当労働行為の救済は、不当労働行為およびこれによる結果を排除し、申立人をして不当労働行為がなかったのと同じ事実状態を回復させることを目的とするものであって、申立人に対し不当労働行為による私法上の損害の救済を与えることや、使用者に対し懲罰を科することを目的とするものではない。
 また、労組法7条1号の不当労働行為について労働委員会が原状回復の一手段として使用者にいわゆる「賃金遡及払」を命ずる場合は、救済命令申立人に債務名義を与えるものでも賃金請求権を認めるものでもない。
 従って、「賃金遡及払」をふくむ救済命令の申立を受けた労働委員会としては、賃金債権その他私法上の請求存否の審査に立入ることを要せず、また、支払を命ずる賃金相当額を具体的に明示する必要もない。
 しかし、労組法7条1号の不当労働行為である解雇に対し労働委員会が解雇の結果である賃金不払を労働者側にとって解雇による賃金不払のなかった状態に回復する目的で命じ得るいわゆる「賃金遡及払」すなわち賃金相当額支払の金額は、解雇がなかったならその労働者に支払われたであろうと思われる賃金額をもって最高限度とし、もし、労働者が解雇期間中他の職について得た収入があるときは、それが副業的なものであって解雇がなくても当然取得できる等特段の事情がない限りこれを控除すべきである。
 思うに、労働委員会は、不当労働行為に対して労働者をいかなる方法によって救済するかについて自由な裁量権を労組法によって与えられているとはいえ、右のような事情がないのに他収入を控除しない賃金相当額の支払を命ずることは申立人の側における原状の回復という救済命令本来の目的を逸脱して違法たるを免れず、また、救済命令に対して取消の訴が提起されたときには緊急命令によって従うべき旨を命ぜられた全部または一部の限度において、救済命令がこれに対する取消の訴の提起されることなしに確定したときは全部について、いずれも過料の制裁により間接に強制され、更らに、救済命令が取消の訴の結果確定判決によって支持されるときには刑罰の制裁によって間接に強制される給付を命ずることは、申立人の側における不当労働行為ないしその結果を除去するために労働委員会に認められた権限であるから、救済命令がこの本来の目的を逸脱する内容のものである場合には、実質的には使用者に懲罰を科することに帰着し、許されない。
 申立人の各中間収入は、もし同人らが解雇されず、会社に勤務していたならば、到底提供することのできなかった労働の対価と認める外はなく副業的なものであるとは認められない。
 そうであるとすれば、他に控除を相当としない特別の事情の認め難い本件において、東京地労委が、各中間収入を全く控除せず、解雇から復職までの間に6名がそれぞれ受けるはずであった賃金相当額全額の遡及支払を命じたのは、右控除をしない限度で救済命令の範囲を逸脱した違法があるものといわなければならない。
2 取消の限度
 各中間収入の全額を控除すべきか或いは、たとえば右中間収入を得るために要した費用、増大した支出、労働の質、量を考慮して一部控除に止むべきか等控除の範囲についての裁量はもっぱら労働委員会の裁量権に委ねられていると解するのが相当である。
 従って、本件命令のうち金員支払を命じた部分を裁判所が右裁量を行うことによって変更することは許されず、右部分は全体としてこれを取消すほかはないものというべきである。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地労委昭和38年(不)第25号・第45号 全部救済 昭和39年 2月26日
東京高裁昭和43年(行コ)第4号・第6号 棄却 昭和45年 2月10日
最高裁昭和45年(行ツ)第60号・第61号 上告棄却 昭和52年 2月23日
 
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