概要情報
事件名 |
第二鳩タクシー |
事件番号 |
東京高裁昭和43年(行コ)第4号・第6号
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控訴人 |
東京都地方労働委員会 |
控訴人(補助参加人) |
東京自動車交通労働組合
個人6名 |
被控訴人 |
第二鳩タクシー株式会社 |
判決年月日 |
昭和45年 2月10日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 会社が、人員過剰等を理由に、組合役員ら6名を解雇したことが、不当労働行為に当たるとして、東京地労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京地労委は、原職復帰、バックペイを命じ、バックペイから中間収入の控除を認めなかった。
会社は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、初審命令において中間収入を控除しないでバックペイを命じた部分を取り消した。
本件は、同地裁判決を不服として、東京地労委が東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの連帯負担とする。 |
判決の要旨 |
1 当裁判所も被控訴人の本訴請求を認容すべきものと認めるのであって、その理由は、次に記載するほかは、原判決理由記載のとおりであるから、これを引用する。 2 不当労働行為に対する労働委員会による救済は、使用者の行為によって損わしめられた労使の自由対等の関係をもとへ戻すため、その不当労働行為を排除し、申立人をして不当労働行為がなかったと同じ事実上の状態、いわゆる原状を回復させることを目的とするものであって、申立人に対し不当労働行為による私法上の損害の救済を与えることや、使用者に対し懲罰を科することを目的とするものではない。
救済命令のこのような性質上、救済命令においては、制裁的、懲罰的ないしは報復的要素を含ませてはならないのであり、不当労働行為としての解雇の場合についてなされるいわゆる「賃金遡及払」の命令も、右のような原状回復のための一手段としてのみ命ぜられるべきものであって、そこに損害賠償的要素が混入することは許されず、またその「賃金遡及払」の金額については、この場合の賃金請求権が私法上どのように取扱われるかに関係なく、当該不当労働行為によって労働者が事実上蒙った損失をもって限度とし、労働者が解雇期間内に他の職に就いて得た収入は、それが副業的なものであって解雇がなくても当然取得できる等特段の事情がない限り、これを遡及払賃金額から控除すべきものとされる。 右のような特段の事情のない場合の収入(中間収入)は、事実上、解雇がなかったら挙げ得なかったものであるから、解雇がなかったと同じ事実上の状態を回復させるという救済命令の目的からすれば、右原状回復のための手段たる「賃金遡及払」の金額から中間収入を控除するのが当然であって、このことは、解雇によって収入を失った労働者が他で収入を得ようとするのは必然的なことであるとか、解雇を争う労働者にとって右収入獲得はいわば復職活動の一環と見るべきであるとかの理由によっては、左右されるものではない。 3 しかして、右のような「賃金遡及払」を命ずるか否かは、労働委員会が事案に則して決すべきところであるとはいえ、いやしくも、原状回復のために「賃金遡及払」を必要であるとして、これを命ずる以上は中間収入は必ず控除すべきなのであり、合理的理由なくしてこれを控除しないことは、原状回復という救済命令本来の目的の範囲を逸脱して違法となる。 もっとも、例えば、中間収入を得るについての必要経費の如きは、中間収入から更に控除すべき合理的な理由があり、その他これに類する事情を考慮して、中間収入のうちいくらを「賃金遡及払」の金額から控除するかは労働委員会の裁量事項に属し、裁判所が代わってこれをなすことは許されないものであるところ、本件においては、中間収入を全然控除しないことを相当とする合理的理由は認められないから、中間収入があるに拘らず遡及賃金全額についてなされた本件「賃金遡及払」の命令部分は全体として取消すほかない。
以上の外、本件における右命令部分を適法とする控訴人らの主張はすべて採用できない。 |
その他 |
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