労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  油研工業 
事件番号  横浜地裁昭和42年(行ウ)第17号・昭和43年(行ウ)第10号 
原告  総評全国一般労働組合神奈川地方本部
個人3名 
被告  神奈川県地方労働委員会 
参加人  油研工業株式会社 
判決年月日  昭和47年10月24日 
判決区分  全部取消 
重要度   
事件概要  1 会社が、外注会社から派遣されたいわゆる社外工に対し、外注会社との請負契約の解除を理由に同人らの仕事を打切ったこと、及びこれに関する団交拒否が、不当労働行為に当たるとして神奈川地労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審神奈川地労委は、労使関係を否認し組合の請求を棄却した。  本件は、組合及び組合員3名がこれを不服として、横浜地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は初審命令を取り消した。 
判決主文  1 被告が神労委昭和41年(不)第8号不当労働行為申立事件について昭和42年5月12日になした命令を取消す。
2 原告らと被告との間の訴訟費用は被告の負担とし、参加によって生じた訴訟費用は参加人の負担とする。 
判決の要旨  1 労組法7条にいう「使用者」とは、被用者を使用してその労働力を処分する者、即ち、自らの権限に基づき労務を適宜に配置、按配して一定の目的を達せんとする者であるから、雇用契約上の雇用主の他にも、被用者の人事その他の労働条件等労働関係上の諸利益に対しこれと同様の支配力を現実かつ具体的に有する者を含むと解すべきである。
 労働者がいわゆる社外工として、形式的な労働契約面では子企業に所属するにとどまり、現実に労務を提供する相手の親企業との間には直接何らの契約関係がない場合であっても、親企業の被用者と一緒に親企業の工場で就労し、しかも親企業の決定する職場秩序ならびに親企業の直接的指揮監督下におかれ、子企業がこれらの点につき何らの支配力をも有しない場合には、親企業そのものが労組法上の使用者であって、子企業は使用者でないといわざるをえない。
2 会社は原告3名を自己の決定する職場秩序に組み入れ、その作業を直接、具体的かつ現実的に指揮監督し、以ってその作業過程を支配しているのみならず、原告3名各自の会社の労働過程への編入、排除等につき雇用契約上の雇主に準ずる支配力を有し、更に右の各原告が有限会社T設計所より支払を受ける賃金額をも間接的に決定しているところ、他方、同有限会社は原告各自の作業につき全く支配力を有せぬのみならず、会社の労働過程への編入、排除につき独自の支配力を維持しているとは解し難く、加うるに原告3名の各賃金額につき同社がなす決定は名目的なものに留まるというべきである。
 そもそも、会社は社外工を、景気の変動に対応し調整可能な労働力として採用しているものの従前現実の個別的採用にあたっては、当該社外工の所属する外注会社の法人格の有無さえ確認していなかったのであり、かかる状態の下では法人格のない外注会社の派遣する社外工と会社との間には、法的には直接雇用契約が締結されていた、と解する他ないところ、たしかに会社が昭和39年4月ごろからかかる外注会社の法人格化を計ったのに対応し、原告3名は他の法人格なき外注会社の社外工を糾合し有限会社T設計所を設立したものの、これは、「法人格を備えた外注会社から請負契約に基づき派遣された社外工」との体裁を整え、給与格差を是正する目的のためにのみ設立されたものという他なく、会社と社外工との間の労働関係の実態には全く変化がなかったのである。
 してみれば、会社は、原告3名の労働関係上の諸利益に対し雇用契約上の雇用主と同様の支配力を直接、現実かつ具体的に有しているから労組法上は両者の間に直接雇用に準ずる雇用関係が実質的に成立しているというべく、従って会社は、原告3名との関係においては、労組法7条にいう「使用者」であると解せざるを得ない。
3 以上のとおりであるから、会社と原告3名との間には不当労働行為が成立しうる筋合であり、その成否の判断をなすことなく右使用者の点につき消極に解した被告委員会の命令は違法であり、その取消を求める原告らの本訴請求は理由がある。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川地労委昭和41年(不)第8号 棄却 昭和42年5月12日
東京高裁昭和47年(行コ)第70号 棄却 昭和49年5月29日
最高裁昭和49年(行ツ)第94号 上告棄却 昭和51年5月6日
 
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