概要情報
事件名 |
エッソ石油(和解差別) |
事件番号 |
東京地裁平成20年(行ウ)第697号
|
原告 |
スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合 |
被告 |
国(処分行政庁:中央労働委員会) |
被告補助参加人 |
エクソンモービル有限会社(平成14年6月に合併により旧商号「エッソ石油株式会社」から商号変更) |
判決年月日 |
平成22年10月6日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
1 ①Y会社が、同種の事由により懲戒解雇処分を受けたX組合の組合員3名について、Z組合の組合員2名に対しては原職復帰を前提とした和解の提案を行ったのに対し、X組合に対しては、組合員の原職復帰を前提とした和解を提案せず、差別的に扱ったこと、②Y1社長が人事関係セミナーで「懲戒解雇された組合の組合員は思想的に問題があるので職場復帰させる考えはない」旨の発言を行ったこと等が、不当労働行為に当たるとして、東京地労委に救済申立てがあった事件である。 2 東京地労委は、和解関連のY会社の行為は不当労働行為に当たらず、Y1社長の発言については事実の疎明がないとして、申立てを棄却した。
X組合は、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委はこれを棄却した。
本件は、これを不服としてX組合が東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁はX組合の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は訴訟参加によって生じたものも含めて原告の負担とする。
|
判決の要旨 |
1 争点(1):社長説明等における不当労働行為の成否について
社長説明において「X1氏は思想的に問題があるので職場復帰させる考えはない。」等の差別的発言を行った事実を認めることはできないし、Y会社が全国各地の人事関係セミナーの際に管理職らに見せた社長説明のビデオテープの中にX1に対する差別的発言があったことも認めることはできない。
よって、Y会社に労組法7条3号の不当労働行為があったとは認めることができない。 2 争点(2):本件和解交渉における不当労働行為の成否について
(1) 複数組合併存下においては、使用者に各組合との対応に関して平等取扱い、中立義務が課せられているとしても、各組合の組織力、交渉力に応じた合理的、合目的的な対応をすることが中立義務に反するものとみなされるべきではない。
基本的に、和解交渉は、互譲の精神に基づき、当事者双方の歩み寄りと協力を必要不可欠とする紛争解決の手段であるから、その性質上、どのような内容の提案をどの時期に行うか等の対応については、当該紛争のほか、当該紛争の解決に当たって考慮の対象となりうる関連紛争の数、内容、状況及び当事者双方の姿勢等により、異なるものである。
したがって、和解内容やその提案時期について、和解交渉における使用者の対応に差異が生じたとしても、そのことのみをもって、使用者の中立義務に反するものとみなされるべきではないが、それが互譲による紛争解決のための合理的、合目的的な対応の範囲を超え、合理的理由なく労働組合によって差別的扱いをしたといえる場合には、不当労働行為の問題が生ずると解すべきである。
(2) ①Y会社はZ組合との和解交渉において、関連紛争の一括解決が和解の前提であり、これに合意できる場合にはZ1とZ2の職場復帰について考慮する用意があるという意向を示し、Z組合がこれに同意したため、和解交渉を進めたものであり、本件和解交渉時に、Y会社とZ組合の間には、Z1及びZ2のほかには解雇の効力を争う事件がなかったのに対し、Y会社はX組合に、X1の職場復帰を和解の前提にすることはできないこと及び他の事件も含めないと全面的な解決にはならない旨伝えたところ、X組合は、X1の解雇撤回・職場復帰が前提でなければ話し合いはできないとして和解を拒否する回答をしたものであり、そして、X1は、昭和51年の第一次刑事事件で有罪判決が確定した暴行態様が本件懲戒解雇処分を受けた者の中でもっとも重かったほか、昭和59年刑事事件でも有罪判決が確定しており、同事件に関連して懲戒解雇処分を受けた者らは当該処分の効力について係争中であったこと、②X組合は、本件和解交渉時において、労使関係の正常化のために関連紛争を一括解決するというY会社の意向に対して、協力する姿勢を見せず、また、和解交渉の打ち切り後も、和解交渉を行うことに対して批判的な姿勢を維持していたことなど、事情が異なる。
以上のとおり、Z組合とX組合とでは、Y会社との間の関連紛争の数、内容及び状況、和解交渉に対する姿勢等において相当に異なっていたといえるのであり、そのような状況下で行われた和解交渉において、Y会社が、大前提として関連紛争を一括解決する必要があるとの意向の下で、Z組合に対しては、Z1及びZ2の職場復帰を前提とする和解の提案を行い、X組合に対しては、X1の職場復帰を前提とする和解の提案をしなかったことをもって、合理的理由なく労働組合によって差別的扱いをした中立義務違反であると評価することは相当でない。
よって、Y会社に労組法7条1号又は3号の不当労働行為があったと認めることはできない。
|
その他 |
|