労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  JR東海(東京第一車両所外) 
事件番号  東京高裁平成22年(行コ)第35号 
控訴人  東京都(処分行政庁:東京都労働委員会) 
控訴人補助参加人  ジェイアール東海労働組合
ジェイアール東海労働組合新幹線地方本部 
被控訴人  東海旅客鉄道株式会社 
判決年月日  平成22年7月21日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 組合員が、期末手当の減額及び会社管理者の言動について、職場において抗議等を行ったところ、Y会社が、これに参加した一部の組合員に対して訓告及び厳重注意を行ったことが、不当労働行為に当たるとして東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2 東京都労委は、Y会社に対し、①組合員1名に対する訓告がなかったものとしての取扱い及び当該訓告を理由とした期末手当の減率適用を行わない場合の支給額と既支給額との差額の支払い、②文書手交並びに③履行報告を命じ、その余の救済申立てを棄却した。
 Y会社は、東京都労委の救済命令を不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は東京都労委の救済命令を取り消した。
 また、組合らは、東京都労委の棄却部分を不服として再審査を申し立てたところ、中労委は棄却した。
 本件は、地裁判決を不服として、東京都労委が東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は控訴を棄却した。
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 訴訟費用のうち、補助参加により生じた費用は控訴人補助参加人らの負担とし、その余は控訴人の負担とする。
判決の要旨  1 当裁判所も、Y会社の本件請求は理由があるものと判断する。その理由は、次のとおり付け加えるほか、原判決「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審で追加又は敷衍された控訴人及び控訴人補助参加人らの主張に対する判断
(1) 本件撮影行為の目的と態様について
 対立している当事者の一方が、他方に特段の問題発言や問題行動がないにもかかわらず、その言動をその了解なくして当初からビデオ撮影することは、他方当事者であるY会社において受忍すべき性質のものとはいえない。他方、本件においては、管理者による説明拒絶の場面を証拠保全の目的でビデオ撮影する必要のある状況にあったとはいえない。しかも、X1の本件撮影行為は、就業規則、基本協約に反する無許可の会社施設内の組合活動に当たる。
 したがって、Y会社において、撮影行為の中止命令を出した行為が正当であったことは明らかであり、Y会社においてビデオ撮影の中止を求めたにもかかわらず、これに従わなかった行為が非違行為に当たることは明らかである。そして、本件抗議及び本件撮影の態様からすれば、これが極めて軽微な非違行為であるとすることはできない。
(2) ビデオ撮影自体が不問にされた事案との比較について
 ビデオ撮影自体が不問にされたX2事案においては、主として、Y1科長が勤務を終えて退出しようとするところから、退出してエレベーターに乗るまでの間の撮影であって、ビデオ撮影に対し中止命令は出されていないのであるから、本件とは事案が異なり、ビデオ撮影に対する中止命令違反行為の量定の当否を検討する上での比較の対象として相当とはいえない。また、X2事案は、管理者が勤務時間中であった本件とは事案が異なるから、X2事案において中止命令を出さなかったことが、本件においても、ビデオ撮影行為に対する中止命令の切迫性、必要性が低かったことを示しているとはいえない。
(3) 本件抗議参加者のうちX1のみが恣意的に処分されたかどうかについて
 X1は、本件撮影行為に対する中止命令に違反したことを理由として本件訓告を受けたものであって、他の者は、ビデオ撮影行為は行っておらず、したがって、中止命令も受けていない。また、他の者は、本件抗議行動には参加したが、管理者からの退室指示には従っている。これらの点と、本件撮影及び中止命令違反の態様(特に、X1が本件撮影が無許可の会社施設内組合活動であることを認識し得た状況下において、数回にわたり中止を命じられたにもかかわらず、これに従わないで約8分間、一貫して撮影を続けたこと)とを併せ考慮すると、X1を訓告にし、他の者に不利益措置を行わなかったことをもって恣意的であるとすることはできない。
(4) 本件訓告が他の事案と比較して過重であるかどうかについて
 ア X3組合員に対する厳重注意事案との比較について
 X3事案において、ビデオ撮影をしたのは約3分間であり、Y2科長から撮影を中止すべき旨明確に告げられ、「3回目」と告げられた後、ほどなく撮影をやめているのであるから、同種の非違行為ではあっても、両者の間には、量定に差異を設けるに足りる事案の差異があるというべきであり、X1に対する量定が不相当に過重であるとはいえない。
 イ 別件訓告事案との比較について
 複数の事案において同じ訓告措置がとられていても、それらの事案における非違性の程度が同じであるとは限らないし、二つの訓告事由のある事案と一つの訓告事由しかない事案の非違性が同等であるという場合もあり得る。したがって、二つの訓告事由があげられている別件訓告事案と一つの訓告事由しかあげられていない本件とを比較して、両事案における訓告措置が均衡を失しているとはいえないし、本件訓告が、特に重いともいえない。
 ウ 非違行為に対して、どのような措置をとるかは、裁量にゆだねられている部分があり、本件訓告が、特に過重であり、裁量の範囲を逸脱し、あるいは裁量権を濫用してされたとはいえないし、本件訓告が恣意的にされたともいえない。
(5) Y会社の主張する訓告事由の変遷について
 Y会社は、一貫して訓告の対象となるX1の行為として「管理者からの再三の中止命令にもかかわらず、執務室においてビデオカメラを使用し続けたこと」をあげており、訓告事由とされているX1の具体的行為自体を変遷させているものではない。したがって、これをもって、本件訓告が恣意的であり、かつ、不当な動機に基づき決定されたことを推認させる事情とはいえない。
(6) 支配介入行為の存否について
 東京都労委が主張する「本件労使の対立関係等」、「近年の手当減率を巡る紛争の多発」、「本件事情聴取におけるY会社の反応等」並びに組合らが主張する「期末手当の意図的な減率適用による紛争の常態化」について考慮し、また、以上個別的に検討したところを総合的に判断しても、本件においては、本件訓告をもって不相当な恣意的措置と認めることはできず、また、組合らを嫌悪し、その弱体化を図ることを決定的な動機として行われたものと認めることもできない。そして、他に、本件訓告が組合らに対する支配介入の意思により行われたものとすべき事情を認めるに足りる証拠はない。
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掲載文献   
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成17年(不)第95号 一部救済 平成20年8月26日
東京地裁平成20年(行ウ)第622号 全部取消 平成21年12月24日
中労委平成20年(不再)第37号 棄却 平成22年2月17日
 
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