労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 JR東海(東京第一車両所外)
事件番号 東京地裁平成20年(行ウ)第622号
原告 東海旅客鉄道株式会社
被告 東京都、東京都労働委員会(代表者兼処分行政庁)
被告補助参加人 ジェイアール東海労働組合、ジェイアール東海労働組合新幹線地方本部
判決年月日 平成21年12月24日
判決区分 全部取消
重要度  
事件概要 本件は、組合員が、期末手当の減額及び会社管理者の言動について、3カ所の職場において抗議等を行ったところ、会社が、これに参加した一部の組合員に対して訓告及び厳重注意を行ったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 東京都労委は、会社に対し、組合員1名に対する訓告がなかったものとしての取扱い及び当該訓告を理由とした期末手当の減率適用を行わない場合の支給額と既支給額との差額の支払い、文書手交及び履行報告を命じた。
 Y会社は、本件命令を不服として、その取消しを求めて東京地裁に提訴した。
判決主文 東京都労委の命令を取り消す。
判決の要旨 争点(X1に対する訓告が労組法7条3号の不当労働行為に該当するか。)について
(1)組合らがY会社に対して抗議を行った際の様子をX1がビデオカメラでした撮影は、X1が組合活動として行ったものであるが、本件執務室内で組合活動に当たる本件撮影を行うことにつき許可を得ていなかったものである。本件撮影当時施行されていた就業規則は、組合の組合員がその組合活動としてY会社施設を利用する場合には、事前にY会社の許可を得なければならないとするものであり、同許可を得ないで行うY会社施設内での組合活動は許されていないものである。無許可のY会社施設内組合活動に当たる本件執務室内におけるX1の本件撮影について、管理者が施設管理権に基づき本件中止命令を発することについては、合理的な理由があるといえる。
(2)X1が、その中止を命ずる本件中止命令に反して本件撮影を続けた行為は、正当な組合活動であるということはできず、本件就業規則所定の「その他著しく不都合な行為を行った場合」に該当するものと認められる。そうすると、本件中止命令違反行為は、懲戒又は訓告若しくは厳重注意という不利益措置を行う対象となる非違行為に当たる。
(3)本件撮影が無許可のY会社施設内組合活動に当たることを認識し得た状況下において、数回にわたり本件撮影の中止を命じられたにもかかわらず、これに従わないで、本件執務室に入室する時点から退出し始めるまで一貫して本件撮影を続けたというものであり、その非違性の程度は決して小さいものではないということができる。このような本件中止命令違反行為の非違性の程度に照らすと、同違反行為だけで、懲戒には至らない不利益措置である訓告に処することが、直ちにY会社の不利益措置権限の行使における裁量権を逸脱、濫用したものであるとまではいえない。
また、Y会社における不利益措置のうち懲戒に至らないものとして訓告と厳重注意があるところ、訓告は、それが夏季手当又は年末手当の調査期間内にされた場合にはその手当の額が当然に100分の5減額されるという経済的不利益を伴うものであるのに対し、厳重注意は、そのような経済的不利益はないことが認められる。訓告と厳重注意とで上記の経済的不利益の違いが生じるとはいうものの、上述の本件中止命令違反行為の非違性の程度に照らすと、同違反行為に対する不利益措置として訓告を選択することが明らかに不当であって、Y会社の不利益措置権限の行使における裁量権を逸脱、濫用したものであるとまではいい難い。
(4)以上のとおり、本件訓告には、相当かつ合理的な根拠があることが認められ、労組法7条3号所定の支配介入行為に当たるものとはいえない。そして、他に、本件訓告がY会社による組合らに対する支配介入行為に該当するものであることを認め得る事情をうかがわせる証拠はない。
Y会社のX1に対する本件訓告が労組法7条3号の不当労働行為に該当するとした本件救済命令は、不当労働行為の成否に関する認定判断を誤った違法があり、その取消しを求める本件請求は理由がある。よって、本件救済命令を取り消すこととし、主文のとおり判決する。

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成17年(不)第95号 一部救済 平成20年8月26日
中労委平成20年(不再)第37号 棄却 平成22年2月17日
東京高裁平成22年(行コ)第35号 棄却 平成22年7月21日
 
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