労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 朝日放送
事件番号 東京地裁平成19年(行ウ)第48号
原告 日本民間放送労働組合連合会
日本民間放送労働組合連合会近畿地方連合会
民放労連近畿地区労働組合、個人X1
被告 国(処分行政庁:中央労働委員会)
被告補助参加人 朝日放送株式会社
判決年月日 平成20年1月28日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要 組合員X1は、申立外請負会社(以下「A会社」)に雇用され、Y会社の音響効果職場(以下「SE職場」)で就労していたが、A会社が第三者のB会社に営業譲渡されたことに伴い解雇され、譲渡先のB会社で雇用されることを拒否した。
 本件は、Y会社が、Y会社とX組合が、Y会社内でX1の就労を保証する協定書を締結していたにもかかわらず、同人の就労を拒絶したこと、就労確保に係る団体交渉に誠実に応じなかったことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。
 初審大阪府労委は、就労確保及びバックペイを求める申立てについては却下し、誠実団交応諾及び謝罪文の手交を求める申立てについては棄却したところ、これを不服としてX組合らから再審査の申立てがなされ、中労委は当該再審査申立てを棄却した。X組合らは、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したものである。
 同地裁は、中労委命令を維持し、X組合らの請求を棄却した。
判決主文 1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は,補助参加によって生じた部分を含め,原告らの負担とする。
判決の要旨 ①  X1の就労拒絶に関するY会社の使用者性、不当労働行為該当性
 ア  A会社による出退勤の管理は、Y会社を通じた間接的なものであるという各事情があっても、これにより直ちにA会社の存在は形骸に過ぎず、X1とY会社との間には、黙示の労働契約(又は同視し得る関係)があると評価するに十分な事情と言い得るか、疑問である。かえって、X1の毎月の給料の支払元はA会社であって、同社のチーフから受け取っており、厚生年金や所得税等の控除も同社が行っていること、X組合地区労組とA会社との間の団体交渉によって長年にわたりベースアップや賞与の協定が結ばれてきた経緯があること、採用の際には、A会社からの面接も受け、それと認識してA会社と雇用契約をしたこと、X1の業務の割り振りを作成したのは、同社の音声課長であったこと、出退勤の管理自体については、出勤表にまとめて同社本社に報告されていたことが認められ、これらの事情は、A会社の存在が形骸に過ぎず、X1とY会社との間には黙示の労働契約(又は同視し得る関係)があると評価することを阻害する事情である。
  以上から、X1とY会社との間の黙示の労働契約(又は同視し得る関係)を推認することはできない。
 イ X組合らは、平成7年最判(最高裁判所平成7年2月28日第三小法廷判決民集49巻2号559頁)により、Y会社にはX1らとの関係で部分的使用者性が認められたから、当時からX1の労働実態に変化がない以上、現在もY会社に部分的使用者性があることに変わりはなく、X1に対する就労拒絶という支配介入及び不利益取扱い該当性が問題とされる行為についても使用者性は当然に肯定される旨主張する。
しかし、平成7年最判は、就労を確保して賃金(相当額)の支払をするという本件の就労確保という部分での使用者性まで認めたものとは解し得ない。また、X1がA会社の倒産による営業譲渡に際してA会社を実体上解雇されたという事情があることから、いずれにしても、X組合らの主張は、その前提を欠く失当なものである。
  また、本件協定書等は、X1らがA会社に雇用されていることを前提に、X1らがSE業務の継続を希望する場合に、事情が許す限りに配慮することを規程したものであり、A会社でのX1らの地位を喪失するという事態に及んでもなおSE職場での就労確保を法的義務として約定したと解する余地はない。
     その他、X1らの就労確保につきY会社は労組法7条の使用者にあたる旨の主張も全て理由がない。したがって、その余の点を判断するまでもなく、X1らの主張は理由がない。
②  X組合らの本件団交申入事項(X1ら4名につき、Y会社のSE職場での就労を確保し、労働条件を低下させないこと。)に係るY会社の団体交渉態度が不誠実であったとして、不当労働行為に該当するかどうか。
  上記のとおり、Y会社はX組合らの本件申入事項について、労組法7条の使用者には当たらないというべきであるから、団交応諾義務を負わないことは明らかである。
   もっとも、本件確認書の条項から、本件申入事項のうち、「労働条件を低下させないこと」については、Y会社に団交応諾を認める余地はあるということができるが、X組合地区労組らとY会社は、平成13年12月14日の団交申し入れ以降、同月19日、20日及び25日と、休日を除きほほぼ連日にわたり団交を行っているなど、Y会社の団交が不誠実であったとは認められない。

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地労委平成14年(不)第91号 棄却 平成16年10月8日
大阪地裁平成16年(行ウ)第180号 請求の棄却 平成18年3月15日
中労委平成16年(不再)第60号 棄却 平成18年8月8日
大阪高裁平成18年(行コ)第38号 却下 平成18年10月18日
 
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