概要情報
事件名 |
シーケンス |
事件番号 |
東京地裁平成17(行ウ)632号 |
原告 |
株式会社シーケンス |
被告 |
国(裁決行政庁 中央労働委員会) |
被告補助参加人 |
労働組合東京ユニオン |
判決年月日 |
平成18年12月20日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、①組合が申し入れた組合員Xの未払賃金の支払等に関する団体交渉を拒否したこと、②団交申入れのために会社に赴いた組合執行委員長を有形力の行使により排除したこと、③事実に反する被害届を提出して組合員を被疑者扱いしたことが不当労働行為であるとして争われた事件で、会社に対し、①Xの未払賃金の支払等に関する誠実団交応諾、②文書交付及び文書提示を命じ、その余の申立てを棄却した初審命令について、中労委は、文書交付及び文書掲示を命じた部分を文書交付のみに変更し、その余の再審査申立てを棄却した。会社は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は会社の請求を棄却した。
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判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じたものを含め、原告の負担とする。 |
判決要旨 |
① 会社は、組合からXの未払賃金の支払等に関する団体交渉の開催を求める要求書を受領して団交申入れを受けてから、その後の団体交渉の申入れに対しても、一切これに応じておらず、かかる会社の対応は、組合の団体交渉を拒否するものであるところ、会社は、Xが告訴した賃金未払の労基法違反事件を検察官が不起訴処分にしたことをもって、Xの未払賃金は存在しないと判断されたとし、団体交渉を受ける必要がないと主張するが、会社は、Xに対し、平成15年2月分及び3月分の給与を翌月20日までに振り込んでいないのであるから、会社がXの賃金未払について労基法違反事件としては不起訴処分となったとしても、それは、会社に対し、刑事責任を問う必要まではないと判断された結果にすぎないと解されるのであって、このことによって、会社がXの賃金を約定どおり振り込まなかったことが正当とされるものではなく、会社としては、その理由等について、団体交渉の場において、会社の主張を裏付け得る資料により誠意をもって具体的に説明すべきであり、会社の同主張は、団体交渉拒否の正当な理由とは認められないこと等から、会社が本件団体交渉に応じなかったことは、労組法7条2号の不当労働行為に当たるとされた例。
② Y部長は、会社事務所を訪問して団体交渉を求めた組合執行委員に対し、ネクタイや袖をつかむなどして事務所出入口に連れ出し、胸倉をつかんだり、押し飛ばしたり、髪の毛をつかむなどの行為に及んで、団体交渉の申入れを受けることすら拒否する態度を示し、その際、組合執行委員に対して、傷害を負わせるに至っていることに加え、都労委の審査及び中労委の再審査において、会社が組合について、「総会屋のようなゆすりたかりの集団の行為と同等」「このような異常な集団とは、とてもでないが、まともな話合いなどできるものではない」などと主張していたことを併せ考えると、会社は、組合の活動を嫌悪し、強い組合否認の意図に基づき組合執行委員を有形力の行使により排除して、組合の運営に対し、影響を及ぼしたと認めることができ、かかる会社の行為は、労組法7条3号の不当労働行為とされた例。 |