概要情報
事件名 |
東日本旅客鉄道(豊田電車区) |
事件番号 |
東京地裁平成17(行ウ)589号 |
原告 |
東日本旅客鉄道株式会社 |
被告 |
国(処分をした行政庁 中央労働委員会) |
被告補助参加人 |
個人X |
判決年月日 |
平成18年10月23日 |
判決区分 |
全部取消 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、国労臨時大会の会場付近で公務執行妨害罪の疑いで逮捕拘留された組合員Xに対し、釈放後、①同人を日勤勤務とし、約3ヶ月にわたり除草作業を命じたこと、②その後更にリネン業務と電車の乗務等混在する勤務に就かせたこと、③支社企画課長が同人の組合活動を批判する言動をしたことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。初審東京地労委は、会社に対し、①一定期日以降の日勤勤務指定についてはなかったものとして取り扱い、従前の運転士業務へ復帰させること、②従前の運転士業務に復帰させるまでの間の乗務員手当等のバックペイ、③支社企画課長をして申立人の組合活動に対し介入する言動をしてはならないことを命じ、その余の申立ては棄却したところ、これを不服として会社及び申立人個人から再審査の申立てがなされ、中労委は、再審査申立てを棄却した。会社はこれを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、中労委の命令を取り消した。 |
判決主文 |
1 中央労働委員会が、中労委平成14年(不再)第47号事件について、平成17年10月9日付けでした命令を取り消す。 2 訴訟費用は、補助参加によって生じた部分は被告補助参加人の負担とし、その余の費用は被告の負担とする。 |
判決の要旨 |
① 会社が運転士Xに対し、平成12年10月以降も日勤勤務の指定をし、除草作業及びリネン業務に従事することを命じることは「不利益な取扱い」に該当するが、会社は、本件7月逮捕という事件(公務執行妨害の疑いにより逮捕された事件)が発生する直前の時点までは、Xに対し同人が国労所属の組合員であることを理由に不利益な取扱いをしておらず、Xが平成12年7月に逮捕され、職場の混乱を招いたにもかかわらず反省の態度を示さないことを契機に、日勤勤務、リネン業務に従事するよう命じた一連の経過等に照らすと、会社がXに対し、同年10月以降も日勤勤務を命じたのは、Xの組合活動を嫌悪したと認定することは困難であり、むしろ、逮捕されたにもかかわらず反省の態度を見せないXに対し猛省を促す意味でなされたものと認めるのが自然かつ合理的であり、会社のXに対する右命令をもって不当労働行為ということはできないとされた例。 ② ある行為が労組法7条3号所定の不当労働行為(支配介入)に該当するためには、当該行為が使用者の支配介入の意思に基づくことが必要であるところ、①会社ないしY2区長において、Xが国労組合員であることを理由に不当な扱いをしていたわけではなく、また、Xが組合活動を行っていることについて、特段の関心を有していたとも認められないこと、②仮に、Xの組合活動に対して支配介入を行おうとしたのであれば、Xと人事上の上下関係に立つような人物に依頼する方が、より効果的であると考えられるにもかかわらず、あえて、Xとはかつて公私にわたる付き合いがあり、職務上の上下関係にも立たない別組織の人物であるY1課長に対し、Y2区長が面談を依頼することは不合理であること、③Y2区長がY1課長に本件面談を依頼したときの発言内容は、Xの組合活動を問題にするのではなく、Xが本件逮捕によって結果的に職場に迷惑をかけたことに対する反省を促す趣旨であったことは明らかであること、④本件Y1課長の発言の中で「このままだとX2の後がまだぞ」(X2は健康上の理由でリネン業務に専属する従業員)との発言はXの人事操配上の措置を示唆する趣旨と解されるが、同課長の他の発言を見ると、「警察沙汰になるような過激な行動に走らないように」といった内容も含まれており、
①、②の点も考慮すると、同発言はXの組合活動への支配介入の意思に基づくものであるとは認め難く、むしろ、本件逮捕により結果的に職場に迷惑をかけたことに対し反省を示さないことに向けられたものと認めるべきであることからすれば、本件Y1課長の発言に関しては、Xの組合活動に対する会社の支配介入の意思に基づくものであることの立証がなく、同Y1課長の発言は、労組法7条3号所定の不当労働行為ということはできないとされた例。 |