労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 西日本旅客鉄道(福知山脱退勧奨)
事件番号 東京高裁平成18(行コ)36号
控訴人 西日本旅客鉄道株式会社
被控訴人 中央労働委員会
被控訴人補助参加人 ジェーアール西日本労働組合
ジェーアール西日本労働組合福知山地方本部
判決年月日 平成18年9月7日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要 本件は、会社が、管理職や助役をして、①組合の支部執行委員長ら支部組合員に対し、組合からの脱退を慫慂したこと、②支部執行委員に対し、組合役員を辞任するよう慫慂したことが不当労働行為であるとして、申立てのあった事件である。初審大阪地労委は、救済申立てを棄却し、中労委は、助役の行為を不当労働行為と判断して初審命令の一部を変更し、その余の再審査申立てを棄却した。会社は東京地裁に行政訴訟を提起し、同地裁は会社の請求を棄却したところ、会社はこれを不服として東京高裁に控訴を提起したが、同高裁は、本件控訴を棄却するとの判決を言い渡した。
判決主文 本件控訴を棄却する。
判決の要旨 ① Y1助役のX1支部委員長に対する「新しい組合へ行って、委員長をやれ。組合にいたのでは仕事がとれない。組合の組織率が高すぎる」等の発言、同助役の「別組合へ帰る結論に達した」等との内容の署名や組合脱退届等を徴収する行動が組合の組合員に対する働き掛けであることは明らかであり、また、Y1助役のX2執行委員に対する「検修に配属する辞令を出すための条件は、お前が執行委員をやめることである」等の言動も、組合の下部組織である支部組合員の辞任及び組合からの脱退を求めるものであることは明らかであるとされた例。

② 組合員資格を有し、使用者の利益を代表するとはいえない職制による脱退勧奨等については、使用者の直接の関与が認められない場合であっても、使用者ないしその利益代表者の関与の有無・程度、行為者の地位・権限・役割、当該労働組合との労使関係等、諸般の事情を勘案した結果、行為者がその職務上の地位を利用して使用者の意を体して当該行為を行ったと認められる場合には、これを不当労働行為として使用者に帰責することができると解されるところ、運転所における助役は運転所のトップである所長の直下に位置づけられ、従業員の勤務評価に関与する等、少なくとも運転所における助役という職制は、組合員資格を認められてはいるものの、一面において、労務管理上、管理監督者である運転所長の職務を実質的に代行する役割を果たしていたとみるのが相当であるとした原判決は相当であるとされた例。

③ 支社上層部は、Y1助役のX1支部委員長らに対する組合脱退勧奨をある程度認識し、容認するに至っていたとみるのが相当であり、その意味において、直接の指示等による積極的なものではないものの、助役の行為に関与したと認められるとした原判決は相当であるとされた例。

④ 支社は、Y1助役が運転所の検修職場において組合の組織弱体化の働きかけを行っていることを認識し、組合との関係で不当労働行為の問題が生じることを十分予測しえたにもかかわらず、勤務時間外とはいえ、運転所の職場内で、業務と密接な関連を有する会合の場で行われたY1助役の露骨ともいうべき脱退勧奨行為について、組合地本から申し入れられた抗議に対し、労働組合間の問題であるとして何らの対応もしないことを表明しており、このような事実関係からすると、支社は、脱退届等に関するY1助役の行動を黙認していたと推認することができ、その意味においてY1助役の行為に関与していたというべきであるとした原判決は相当であるとされた例。

⑤ 以上(①から④)を総合して勘案すると、Y1助役の脱退勧奨行為は、会社本社の意向及びそれに付随して形成された支社の意向を汲み、上級管理者に準ずる地位にある職制が行った行為といえ、しかもこれらの行為は、支社上層部においても容認ないし黙認されていたものであるから、使用者である会社の意を体した行為としてこれを会社に帰責せしめ、不当労働行為と評価することが相当であるした原判決は相当であるとされた例。

⑥ 服務事故により検修預かりとなっていたX2執行委員に対し突如として役員辞任を勧奨し、さらには、検修預かりとすることを拒否する意向を示し、検修預かりの措置を継続する条件として組合からの脱退を含めた3条件を提示して、役員辞任及び脱退勧奨を迫るに至ったY1助役の行為は、当時不安定な地位にあったX2執行委員の配属に関連して行われているところ、Y1助役の役割の実態に加え、もともとX2執行委員の検修預かりにはY1助役の強い意向が反映されていたこと、Y1助役は、3条件をX2執行委員が了承したことを受けて、Y2運転所長に「検修預かりにする」と断定的に述べ、Y2運転所長もこれに何ら異議を止めなかったことからすると、Y1助役は、人事上の処遇を事実上決定し、また、辞令発令の上申を支社に行うか否かの決定にも事実上重要な役割を果たしていたと推認され、以上を勘案すると、Y1助役の右記行為は使用者である会社の意を体した行為としてこれを会社に帰責せしめ、不当労働行為と評価することが相当であるとした原判決は相当であるとされた例。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
大阪府労委平成4年(不)第4号 棄却 平成8年5月31日
中労委平成8年(不再)第22号 一部変更 平成16年10月6日
東京地裁平成16年(行ウ)第516号 棄却 平成17年12月26日
最高裁平成18年(行ツ)307号
最高裁平成18年(行ヒ)360号
棄却・不受理 平成19年1月30日
 
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