労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  西神テトラパック  
事件番号  東京地裁平成9年(行ウ)第145号(甲事件)・第206号(乙事件)  
甲事件原告
兼乙事件被告補助参加人  
西神テトラパック株式会社  
乙事件原告
兼甲事件被告補助参加人  
全日本金属情報機器労働組合西神テトラパック支部  
乙事件原告   X1  
甲、乙事件被告   中央労働委員会  
判決年月日   平成11年4月21日  
判決区分   一部取消  
重要度   
事件概要  1 会社が、①組合執行委員長に対して不利益な配置転換を命じたこと、②組合を誹謗中傷する文書を全従業員に配布したこと、③工場長が会議において組合を誹謗中傷する発言をしたこと、④組合員に対して組合からの脱退を勧奨したこと、⑤従業員団体を結成させ、これを援助したことが、不当労働行為であるとして争われた事件である。
2 初審兵庫地労委は、会社に対し、(1)委員長に対する配置転換命令の撤回、原職相当職への復帰、(2)組合員に対する脱退勧奨・組合に対する誹謗中傷の禁止、(3)文書交付(上記(1)及び(2)に関し)を命じ、その余の申立てを棄却した。
 会社は、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、委員長に対する配転は不当労働行為とまではいえないとして、初審命令主文の一部を変更したほかは、初審命令を維持し、その余の再審査申立てを棄却した。
 本件は、これを不服として、会社及び組合がそれぞれ東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は、組合の請求を認容して、中労委命令のうち、委員長の配転に関する組合の救済申立てを棄却した部分を取り消し、会社の請求は棄却した。
判決主文  1 甲、乙事件被告中労委が中労委平成6年(不再)第45号事件について平成9年5月7日付けでした命令のうち、主文Ⅰの4を取り消す。
2 甲事件原告会社の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、甲事件原告会社と甲、乙事件被告中労委との関係では、参加によって生じたものを含め、甲事件原告会社の負担とし、乙事件原告組合及び乙事件原告X1と甲、乙事件被告中労委との関係では、参加によって生じたものを含め、甲、乙事件被告中労委の負担とする。
判決の要旨  1 本件救済申立ての適否
  組合が救済申立てを取り下げたのは、申立費用について組合大会の承認がないことを指摘されたためで、本件配転につき救済利益を放棄したと認められず、また、会社との関係において信義則違反の事実はなく、さらに、組合規約上、不当労働行為救済申立てを大会付議事項とする規定もないこと等から、本件救済申立ては不適法ではない。
2 本件配転についての不当労働行為の成否
  X1の工務部門における従前の勤務ぶりが本件配転の理由の1つであるとの説明は合理性が乏しいこと、本件配転当時、製造部門以外から製造部門への人員シフトが一般的に行われていたとは認められないこと、配転先のドクターマシン部門において人員不足は生じていなかったこと、他方、本件配転後、工務課電気係の人員は減少し、他の係から補充していること等からすると、X1をドクターマシン部門に配転すべき積極的理由はなく、かつ、工務課電気係に配転できない理由もないので、本件配転が業務上の必要に基づくということは困難である。
  ある取扱いが不利益であるかどうかは、制度の建前上や経済的側面のみから判断すべきものではなく、当該職場における従業員の一般的認識に照らして不利益と受け止めるのが通常である取扱いであれば不利益取扱いに当たる。
  会社においては、製造部門と工務部門では配属する従業員の採用を異にしていること、工務部門から製造部門の機械オペレーターへの配転を命じた例はなかったこと、X1は第二種電気主任技術者資格者で、一貫して工務部門に従事し、本プロジェクトチームには電気担当として配属されたこと、本件配転により専門技術を要しない単純作業を命ぜられたこと、しかも給与等級が、下位のチームリーダーの下の一スタッフとされたこと等の諸事情を総合すると、本件配転は、会社の従業員の一般的認識に照らして不利益と受け止めるのが通常である。
  本件配転は、会社の合理化計画にことごとく反対し、実力手段を厭わない活動を遂行する組合の指導的立場にあるX1を嫌悪して、そのような立場で合理化の実施に反対したことに報復する反組合的意図に基づくもので、労組法7条1号の不当労働行為を構成し、さらに、組合の指導的立場にあるX1を組合活動の故に不利益な取扱いをすることによって、組合員の組合活動に萎縮的効果をもたらすもので、労組法7条3号の不当労働行為を構成する。
3 本件各文書の配布及びY3発言についての不当労働行為の成否
  会社が「争議指導の誤り」「ストのためのストといった闘争至上主義」等の記載のある文書を従業員に配布したこと及び、本件救済申立て直後に、Y3工場長が、「組合が会社を訴えたことは、組合員が会社を訴えたことになる」と発言したことは、いずれも、組合の意思決定に介入するものか又は組合活動に萎縮的効果をもたらすものに当たり、加えて、その内容、配布ないし発言の時期等に照らし、いずれも反組合的意図に基づくものであることも明らかであって、労組法7条3号の不当労働行為を構成する。
4 平成5年4月ころの脱退勧奨の有無及び不当労働行為の成否
  Y3工場長及びY4課長が組合員を再三呼び出し、組合からの脱退を働きかけたことは、その内容及び態様に照らし、工場の業務全般の管理運営する工場長ないし上級職制である総務課長が、反組合的意図をもって、組合員に対し、組合からの脱退を勧奨したものであることは明らかで、労組法7条3号に該当する不当労働行為を構成する。
5 平成6年2月ころの脱退勧奨の有無及び不当労働行為の成否
 Y11マネージャーらが、組合員に対し、上部に入っている組合にいると組合員の氏名が警察のブラックリストに載る、組合が上部団体に加入したことに伴い警察から組合員のリストを提出するよう要求されている旨の発言をしたことは、組合を脱退しなければ警察に提出するリストに名前が載り、不利益を受けるおそれがあることを示唆し、もって、反組合的意図に基づき、組合を脱退するよう勧奨したものであることが明らかで、いずれも会社の意を体してなされたものであるから、労組法7条3号に該当する不当労働行為を構成する。
6 初審命令を維持して救済を命じた部分についての救済利益の有無
  組合が、中労委が支配介入に当たるとした会社の行為につき、不法行為に基づく損害賠償を請求する訴えを提起し、これが(一部)認容され、その仮執行がされたからといって、別途の観点から行う労働委員会の救済命令の発令の必要性に影響を与えるものではないし、そもそも、当該判決の言渡し及び仮執行は本件命令の発令後の事実であるから、同命令の違法事由とはなり得ない。
7 結論
 中労委が本件配転につき不当労働行為の成立を否定したことは違法であって取消しを免れないが、文書の配布、Y3発言並びに各脱退勧奨について不当労働行為の成立を認めたことに違法はない。
掲載文献  労働委員会関係裁判例集34集320頁 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
兵庫地労委平成 5年(不)第1号
兵庫地労委平成 5年(不)第3号
一部救済 平成 6年12月 6日
中労委平成 6年(不再)第45号 一部変更(初審命令を一部取消し) 平成 9年 5月 7日
東京高裁平成11年(行コ)第141号 棄却 平成11年12月22日
 
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