事件名 |
東日本旅客鉄道(東京・不採用支配介入)
東日本旅客鉄道外1社(新潟・不採用支配介入)
東日本旅客鉄道(秋田・不採用支配介入)
東日本旅客鉄道(鳥取・不採用支配介入)
東日本旅客鉄道(千葉・不採用支配介入) |
事件番号 |
東京地裁平成13年(行ウ)第408号
東京地裁平成14年(行ウ)第49号
東京地裁平成14年(行ウ)第195号
東京地裁平成14年(行ウ)第196号
東京地裁平成15年(行ウ)第59号
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原告 |
X1外3名(408号事件) |
原告 |
X2外1名(49号事件) |
原告 |
X3外1名(195号事件) |
原告 |
X4外1名(196号事件) |
原告 |
X5外4名(59号事件) |
被告 |
中央労働委員会 |
判決年月日 |
平成16年 3月19日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、JR不採用問題に関して、自由民主党、公明党、保守党及び
社会民主党の4党間で行なわれた、いわゆる「四党合意」に関する事件であり、自由民主党、公明党、保守党、社会民主党、国土
交通省、日本鉄道建設公団及びJR3社が、四党合意によって、国労に対する支配介入及び国労組合員である個人15名らに対す
る不利益取扱いの不当労働行為を行ったとして、申立てがあった事件で、東京、新潟、秋田、鳥取及び千葉の各地労委は申立てを
いずれも却下し、中労委は各再審査申立てをいずれも棄却したところ、国労組合員である個人15名らは、これを不服として東京
地裁に行政訴訟を提起していたものであるが、同地裁は却下又は棄却した。 |
判決主文 |
1
被告が中労委平成13年(不再)第54事件について、平成14年3月6日付けでした命令中、195号事件原告らが保守党を相手にした救済申立てを却下した秋田地方労働委員
会の決定に対する再審査を棄却した部分の取消しを求める原告らの訴えを却下する。
2 408号事件原告ら、49号事件原告ら、195号事件原告ら、196号事件原告ら及び59号事件原告らの各請求(195
号事件原告らについては上記1で訴えを却下した部分を除く。)をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、408号事件については同事件原告らの、49号事件については同事件原告らの、195号事件については同事
件原告らの、196号事件については同事件原告らの、59号事件については同事件原告らの、各負担とする。 |
判決の要旨 |
6140 訴の利益
与党三党が、四党合意から離脱したことにより、四党合意は事実上崩壊しており、申立人らの救済申立てのうち、救済方法とし
て、四党合意の取消しを求める部分ないし四党合意に基づく行動をとってはならないことを求める部分は、客観的にみて不能と
なったものと言わざるを得ないところではあるが、四党合意が事実上崩壊したからといって、謝罪文の交付ないし掲示を求めるこ
とは可能であり、救済申立てを却下した決定を維持した本件各命令の取消しを求める申立人らの訴えには訴えの利益があるとされ
た例。
6140 訴の利益
195事件原告らは、保守党をも相手として謝罪文の交付・掲示を求めているところ、その後、保守党が解散したことは公知の事
実であり、同党が謝罪文の交付・掲示をすることは客観的にみて不能となったということができるから、同事件原告らの訴えのう
ち、同党に対して謝罪文の交付・掲示を求める救済申立てを却下した決定を維持した本件命令の取消しを求める部分については、
訴えの利益は消滅したと言わざるを得ないとされた例。
5144 不当労働行為でないことが明白
労働組合法7条の使用者とは、労働契約関係又はこれに準じた関係を基盤として成立する団体的労使関係上の一方当事者を意味す
ると解するのが相当であり、国土交通省、自民党、公明党、社民党及び鉄建公団は、その地位からして、申立人らとの関係で団体
的労使関係の一方当事者に当たらないことは明らかであるから、申立人らの救済申立ては、労働委員会規則34条1項5号にいう
「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき」に該当するといわざるを得ず、これと同旨の中労委の
判断に憲法28条、労働組合法7条、労働委員会規則34四条1項5号に違反するところはないというべきであるとされた例。
6330 審査手続の違法
労組法7条が規制する使用者の行為とは、団体的労使関係の範ちゅうに属する行為であると解するのが相当であるが、四党合意
は、「紛争当事者である国労の一定の任意的対応を得ることにより、政治レベルでの決着を図ろうとする試み」であるといえるか
ら、これが労働組合法7条の規制する行為に当たるとはいえず、申立人らのJR東日本らに対する救済申立ては、労働委員会規則
34条1項5号にいう「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき」に該当するというべきであり、
また、JR東日本らは、四党合意の当事者ではではないことは明らかであるから、同社らに四党合意の取消しを求める申立ては、
「請求する救済内容が、法令上又は事実上実現することが不可能であることが明らかなとき」として、労働委員会規則34条1項
6号に該当するものであるから、本件各命令の判断は、憲法28条、労働組合法7条、労働委員会規則34条1項5号、6号に違
反するものではないとされた例。
6330 審査手続の違法
労働組合法27条1項は、審問の実施について労働委員会の裁量権を認めていることが明らかであるから、都労委が審問を行わな
かったからといって、労働委員会に与えられた裁量権を逸脱したものとはいえないこと、申立人らが証人申請を提出し、都労委委
員が尋問事項書の提出を求めたからといって、都労委が審問の必要性を認めたとまではいえないこと、また、労働委員会規則39
条1項は、原則として救済申立て日から30日以内に審問を開始するとしているところ、労働委員会が審問を実施するまでもなく
申立てを却下すべきであると判断した場合にまで、審問を実施することを要求したものとは解されず、都労委が救済申立て後30
日以内に審問を開始しなかったからといって、同項に違反するともいえないから、初審決定の手続の違法を認めなかった本件命令
は違法とはいえないとされた例。
6330 審査手続の違法
新潟地労委は、調査期日において今後の予定については追って連絡するとしながら、審問手続きを経ることなく、本件決定を発し
たが、このことが労働委員会に与えられた裁量権を逸脱したものとはいえないことは上記判示事項5のとおりであるから、本件命
令は違法とはいえないとされた例。
6330 審査手続の違法
千葉地労委は、証人の採用を決定して審問期日を指定しながら、証人の採用及び同期日の指定を取り消した上、本件決定を発して
いるが、いったん審問手続きを開始したからといって救済申立てが規則34条1項5号又は6号に該当する以上、審問を続行すべ
きいわれはないし、証人の採否、取消しは、労働委員会の裁量権に属する事項であるから、この事実関係があるからといって、本
件千葉地労委の決定に適正手続違反があるとはいえず、適正手続違反を認めなかった本件命令が違法とはいえないとされた例。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2005年2月10日 1037号 38頁
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