事件名 |
新潟県厚生農業協同組合連合会 |
事件番号 |
東京地裁平成14年(行ウ)第335号
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原告 |
新潟県厚生農業協同組合連合会 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
個人X1 |
判決年月日 |
平成15年12月 3日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
連合会が、(1)連合会の運営する三条総合病院の看護部主任であっ
て申立外新潟県厚生連労働組合の三条支部長のX1に対し、平成11年4月1日付で長岡中央看護専門学校の専任教員心得に転勤
させる旨の辞令を発したこと、(2)同転勤発令後、同人が同病院施設内に立ち入ることを禁止し妨害したこと、(3)同人が作
成した支部長を冠した文書は受け付けない旨を同支部に申し入れる等して、同人が支部長であることを否認したこと、(4)同支
部の組合員に対し、同人を支援する会に参加、協力しないよう威嚇し、規制したこと、(5)同人が不当労働行為の救済申立てを
すれば、労働協約等を締結しない旨を組合に通告したことが不当労働行為であるとして申立てがあった事件で、新潟地労委は、
(1)X1の転勤の取消しと看護部主任への復帰、(2)原職で勤務していれば受けるはずであった給与及び賞与相当額の支払、
(3)労働協約、労働協約覚書の不締結を通告する等の支配介入の禁止を命じ、その余の申立てについては棄却した。連合会はこ
れを不服として再審査を申し立てたが、中労委は再審査申立てを棄却した。そこで、連合会は、命令の取消訴訟を提起したが、東
京地裁は請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じたものを含め、原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
X1に不利益を課す本件病院看護部主任より看護学校専任教員に転勤させる命令(本件転勤命令)には、業務上の必要性を肯定す
ることができず、X1を転出させることそれ自体に主眼があったとみざるを得ないところ、本件転勤命令及び異動先の前任者に対
する転勤命令がなされる直前の時期には、人員削減問題をめぐって労使対立が深刻化し、組合支部におけるX1の存在が病院側の
経営方針実施に極めて大きな障害となっていた事実を照らし合わせると、本件転勤命令は、病院の実情を憂慮した連合会が組合の
支部長としてその中心的地位にあった申立人の存在を嫌悪し、同人を組合支部から隔離して、支部の団結権を弱めようとする意図
に基づいてなされたもので、労働組合法第7条第1号の不利益処分であるとともに、同条第3号の支配介入とされた例。
3103 労働協約締結をめぐる行為
4811 労組法7条3号(個人申立)の場合
連合会の参事は、組合との団体交渉の席上、支部もしくはX1個人で救済申立てをするのであれば、連合会と組合との間の7本の
労働協約の延長締結を一括してしない旨発言したことが認められるが、労働委員会に対する救済申立ては組合員が個人としてでも
自由になし得ることはいうまでもないところ、X1個人が不当労働行為救済申立てをすることと、連合会と組合との間の協約を締
結しないこととは何らの合理的な関連性が認められないのであって、参事による上記発言は、無協約状態をおそれる組合の危惧感
を利用して、組合の協力の下に、申立人に対し、事実上救済申立てを断念させるよう圧力をかける意図でなされたことが明らかで
あり、労働組合法第7条第3号の支配介入とされた例。
5124 その他の審査手続
連合会は、審問手続終結後に書証を提出しようとしたところ、中労委は審問を再開せず、その提出を認めなかったとして、本件命
令に手続上の違法があると主張するが、審問終結後に証拠の申し出がなされた場合において、審問を再開するか否かは、申し出の
時期、証拠価値等を勘案して中労委がその裁量により判断すべきものであるところ、本件において、中労委が審問を再開し証拠の
提出を認める措置をとらなかったことが、その裁量の範囲を逸脱する違法なものとすべき事情は認められないとされた例。
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業種・規模 |
医療業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2004年5月10日 1028号 70頁
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