事件名 |
平川商事 |
事件番号 |
大阪高裁平成15年(行コ)第24号
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控訴人 |
平川商事株式会社 |
被控訴人 |
奈良県地方労働委員会 |
被控訴人参加人 |
X1 |
判決年月日 |
平成15年 9月10日 |
判決区分 |
一審判決の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、(1)レジ操作の不正行為を理由とする組合員X2に対する
雇止処分、(2)来館者用の新聞を自席に持ち帰って読んだことを理由とする組合員X1に対する降格処分、(3)年末一時金の
不支給、(4)会社内に録音機を設置した組合員に対する事情聴取の繰返し等、(5)同問題に関する不誠実団交、(6)組合支
部長に金員を交付して退職させたことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
奈良地労委は、(1)組合員X1に対する降格処分がなかったものとしての取扱い、役職手当のバック・ペイ(命令交付日まで
半額控除)、(2)組合支部長に金員を交付することによって退職させるなどしての支配介入の禁止を命じたところ、これを不服
として会社が行政訴訟を提起した。奈良地裁は、奈良地労委の命令を支持し、会社の請求を棄却した。 会社は、これを不服とし
て、大阪高裁に控訴を提起していたものであるが、同高裁は、原判決を変更し、上記(2)の支配介入についての救済部分を取り
消し、その余の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原判決を次のとおり変更する。
(1)被控訴人が、奈労委平成10年(不)第1号及び平成11年(不)第1号不当労働行為救済申立事件について、平成12年
9月11日付けでした別紙記載の命令中、主文第2項を取り消す。
(2)控訴人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを2分し、その1を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とし、補助参加によっ
て生じた費用は、第1、2審を通じてこれを2分し、その1を控訴人の負担とし、その余を被控訴人補助参加人らの負担とす
る。 |
判決の要旨 |
1200 降格・不昇格
3601 処分の程度
本件降格処分は、勤務時間中に自席で私的に新聞を読んでいた新聞事件についての懲戒処分としては相当と認められる程度を越え
た過重なものであり、その過重な部分については、組合の活動を嫌悪している会社が、不当労働行為意思を決定的動機として、組
合員X1に対する不利益取扱いを行ったものと認められることから、労働組合法第7条第1号本文前段の不当労働行為に当たり、
また、組合において重要な役割を果たしていた同人に対し過重な本件降格処分を科すことは、組合員らを動揺させたり、組合活動
の弱体化や組合員の減少をもたらしかねないものであるから、労働組合法第7条第3号の不当労働行為にも当たるとした原判決は
相当である。
4407 バックペイの支払い方法
本件役職手当の支払(本件命令交付日までは半額控除)を命じることも委員会の裁量の範囲内であるとした原判決は相当である。
4407 バックペイの支払い方法
役職手当の支払を命じた主文第1項(2)は、委員会はX1に対し、本件降格処分がなかった場合にX1が支給を受けるはずで
あった役職手当から、実際に支給されていた役職手当に相当する額を控除した額について、新聞事件の非違行為としての程度など
を考慮した上、さらに、その半額を控除した額につき支給を命じたものと解され、委員会の裁量権の範囲内であるとした原判決は
相当である。
2625 非組合員化の言動
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
X3の録音機設置行為は、会社の職場規律を乱し、就業規則における懲戒解雇事由にも当たるというべきものであり、X3の方か
ら会社に退職を申し出、これを受けて会社が長年料理長として勤務してきたX3に対し、任意退職の形式を採って退職金、年末一
時金の支給、11月分の給与の全額支給、保証金の返還などの一定の優遇措置を採ったものであるが、その支給額はX3の提供し
た労務に概ね見合ったもので、特に著しい利益の供与をしたとまでいうことは出来ないのであるから、これらの有利な取扱いを
もって、会社が殊更、X3の組合の支部長としての地位を失わせて同組合への支配介入をした不当労働行為に当たるとまで認める
ことはできず、X3の退職に関し会社がした行為が不当労働行為であることを前提にしてなされた本件命令主文2項は、違法とい
うべきである。
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業種・規模 |
娯楽業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2004年4月10日 1027号 62頁
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