事件名 |
教育社(就労) |
事件番号 |
東京高裁平成13年(行コ)第157号
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控訴人 |
教育社労働組合 |
被控訴人 |
中央労働委員会 |
被控訴人参加人 |
株式会社キョーイクソフト |
判決年月日 |
平成15年 1月30日 |
判決区分 |
一審判決の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、組合のスト及び会社のロック・アウト解除後における組合員
の就労に当たり、会社が、(1)ロック・アウト時に設置した鉄塀等の物的施設等を存置し続けていること、(2)警備職員等を
会社内及び組合員の就労している部署に配置し続け、暴力を用いて組合活動を妨害していること、(3)組合員のみを他の従業員
とは別の就労場所に就労させるとともに、組合員らが従来担当していた業務とは異なる業務に従事させていること等が、それぞれ
不当労働行為であるとして争われた事件である。
東京地労委は、警備職員の組合員に対する暴行についての文書手交及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会
社は初審命令を履行したが、組合は、棄却部分を不服として再審査を申し立てた。中労委は、初審命令を維持して再審査申立てを
棄却したところ、組合から行政訴訟が提起されていたものであるが、東京地裁は組合の請求を一部容認して、中労委命令を一部取
り消し、組合のその余の請求を棄却したため、中労委及び組合は、これを不服として東京高裁に控訴していた。同高裁は、原判決
中、中労委敗訴部分を取り消し、組合の請求及び控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 一審被告及び一審参加人の控訴に基づき、原判決中一審被告敗訴
部分を取り消す。
2 一審原告の請求を棄却する。
3 一審原告の控訴を棄却する。
4 訴訟費用及び参加によって生じた費用は、第1、2審とも一審原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
0415 職場占拠
0419 ロックアウトとの関連
組合の無期限ストに対抗する形で会社が行った本件ロック・アウトに至る経緯の中で、組合員が実力をもって会社の業務を殊更に
妨害することを繰り返したことは、正当な争議行為と解することはできず、会社に対する違法な業務妨害行為というべきものであ
り、特に組合員が本件社屋内への非組合員の入室を認めず、会社が業務遂行のため本件搬送通路を確保しようと設置した柵及び有
刺鉄線を設置又は修復するごとに破壊して、本件搬送通路から排除されるや、本社社屋内に入り込んでその2階を占拠するなどの
一連の行為を考慮すれば、会社において、今後も継続する業務等会社の業務に対する影響を排除するため、対抗防衛手段として本
件ロック・アウトに及んだことは、使用者の正当な争議行為であり、ガードマンの派遣を依頼したことについても、派遣自体が違
法には当たらない。
1302 就業上の差別
会社が、組合員X1に本件就労復帰直後に与えた業務は、都道府県地図を模写する作業であり、本件スト開始前に従事していた作
業自体は既に外注化され、同人に原職と類似の業務を与えることには相当の困難が伴うといえることから、これは、必ずしも同人
を不利益に取り扱ったものとは認められず、また、平成2年7月以降同人が従事した文字フォントデザインのコンピュータ入力作
業は、会社の営む出版事業に役立っていたといえるから、同人にこの業務を与えたことは不当労働行為には当たらず、さらに、同
8年以降は同入力作業は必要性がなくなったため中断しており、組合員X1の業務の特殊性により原職と類似の業務を与えること
に相当の困難が伴う一方で、組合は、本件就労復帰当初から、本件スト開始前の原職又は原職相当職を与えるように強く要求し続
けており、従前と異なる業務が指示された場合には、結果としてこれに応じながらも、業務の変更に合意したものではないという
異議を述べたことがあったこと等を総合考慮すれば、会社が、同人に対し代替作業を与えなかったことをもって、会社が、同人が
組合員であることの故をもって不利益に取り扱ったと認められず、また、組合の弱体化を意図したものとは認められない。
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業種・規模 |
出版・印刷・同関連産業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2003年 10月10日 1018号 56頁
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