労働委員会関係裁判例データベース

[判 例一覧に戻る]  [顛末情 報]
概要情報
事件名  教育社(就労) 
事件番号  東京地裁平成 8年(行ウ)第274号 
原告  教育社労働組合 
被告  中央労働委員会 
被告参加人  株式会社キョーイクソフト 
判決年月日  平成13年 5月24日 
判決区分  救済命令の一部取消し 
重要度   
事件概要  本件は、組合のストライキ及び会社のロックアウト解除後における組 合員の就労に当たり、会社が、(1)ロックアウト時に設置した鉄塀等の物的施設等を存置し続けていること、(2)警備職員等 を会社内及び組合員の就労している部署に配置し続け、暴力を用いて組合活動を妨害していること、(3)組合員のみを他の従業 員とは別の就労場所に就労させるとともに、組合員ら従来担当していた業務とは異なる業務に従事させていること、(4)定期昇 給、年次有給休暇、嘱託社員の正社員化及び退職餞別金を差別して取り扱ったことが、それぞれ不当労働行為であるとして争われ たものである。初審東京地労委(昭51(不)76、昭60・8・6決定)は、警備職員の組合員に対する暴行についての文書手 交及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社は初審命令を履行したが、組合は、棄却部分を不服として再審査 を申し立てた。中労委(平60(不再)40、平8・8・7決定)は、初審命令を維持して再審査申立てを棄却したところ、組合 から行政訴訟が提起されていたものであるが、東京地裁は組合の請求を一部容認して、中労委命令を一部取り消し、組合のその余 の請求を棄却した。 
判決主文  1 被告が中労委昭和60年(不再)第40号事件について平成8年 8月7日付けで発した命令中、参加人に対し原告がその組合員X1に関する労務提供についての救済命令を求めてした再審査の申 立てを棄却した部分を取り消す。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用(参加によって生じた費用を除く。)は、原告と被告との間ではこれを40分し、その1を被告の、その余を原告の 各負担とし、参加によって生じた費用はこれを40分し、その1を参加人の、その余を原告の各負担とする。
判決の要旨  3020 組合活動への制約
本件ロックアウト期間中に、会社が、本社社屋の敷地外周及び敷地内に鉄塀、鉄冊、見張り塔、警備員宿舎・詰所、テレビカメ ラ、ネットなどの施設・設備を設置したり、ガードマンや警備職員を配置したことは、組合による、会社の財産及び従業員の生 命、身体に対する違法な攻撃から防衛するためといわざるをえず、労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為には当たらな いとされた例。

2700 威嚇・暴力行為
会社は、本件就労復帰の時点において、組合活動は一応鎮静化しているものの、今後の情勢の変化次第では組合の組合員及びその 支援者らによる違法な攻撃が再発することもあり得るものと懸念して本件就労復帰後も警備職員を雇用し続けることにしたのであ り、本件就労復帰後も警備職員を配置し続けたことそれ自体が、労働組合法第七条第三号に抵触する不当労働行為には当たらない とされた例。

2700 威嚇・暴力行為
就労復帰後、組合員が配置された業務推進部の職制は、そのほとんどが出版事業に携わった経験はなく、大学の空手道部の出身で あったが、会社は、組合員が就労復帰する部署などで正当な組合活動の範ちゅうを逸脱した違法な行為を繰り返すおそれがあるも のと懸念して、本件就労復帰までに業務推進部に前記のような経歴を持つ職制を配置したものと認められ、会社による職制の配置 及びその継続それ自体が、労働組合法第七条第三号に抵触する不当労働行為には当たらないとされた例

1300 転勤・配転
1302 就業上の差別
会社が組合の組合員の大半に井野ビル又は西川ビルでの就労を命じたことには、相応の理由があったということができるから、組 合員の就労場所を非組合員から切り離して、非組合員への加入勧誘などをはじめとする組合活動を抑圧することを意図したものと いうことはできず、労働組合法第七条第三号に抵触する不当労働行為には当たらないとされた例。

1302 就業上の差別
行政処分である本件命令の違法性の判断基準時は、本件命令が発せられた平成8年8月と解するのが相当であるが、組合員X1に 対し、会社が、平成8年以降何らの業務を与えていないのであり、約8ヶ月にわたってX1に何らの業務を与えていないのは、 X1が組合の組合員であることの故に行われたというべきであるから、X1に対する不利益取扱いであり、同時に組合の弱体化を 意図したものとして、労働組合法第七条第一号、同条第三号に該当する不当労働行為であると認めるのが相当であり、本件命令中 これを不当労働行為と認めなかった部分は、違法であるとされた例

1302 就業上の差別
会社が就労復帰した組合員に対して与えた業務は、その内容からして、それが十分に行われれば、会社にとって全く不要の業務と もいい難いこと、本件就労復帰後のそれぞれの組合員の勤務状況、勤務態度が他の業務を与えられるほどに評価できるものではな かったことに原因の一半があるものというべきであるから、本件就労復帰から現在に至るまでそれぞれの組合員に与えた業務を与 えたことそれ自体が、不当労働行為に当たるということはできないとされた例。

1202 考課査定による差別
1204 スト・カット
定期昇給において、会社の従業員がストライキに参加して就労しなかった場合を欠勤として同一に取り扱うことも、ノーワーク・ ノーペイの一適用として適法であると解され、会社が、定期昇給において、組合員が本件ストライキに参加した期間中を欠勤と同 一に取り扱ったことは、組合員であることを理由とする不利益取扱いや、支配介入に当たるということはできないとされた例。

1202 考課査定による差別
1600 休暇の取扱い
会社は、本件ストライキの終結を宣言した昭和51年1月12日から同年6月1日まで本件ロックアウトを継続して組合員の就労 を受け入れなかったことは、やむを得ない措置であるというべきであり、定期昇給において、本件ストライキの終結を宣言した昭 和51年1月12日から同年6月1日までを欠勤と同一に取り扱ったことについても、組合員であることを理由とする不利益な取 扱いとか、支配介入であるなどと認めることはできないとされた例。

1500 不採用
会社が嘱託社員である組合員2名を本件就労復帰後に直ちに正社員としなかったことは、同人らが、本件就労復帰後も、目的不明 で事前通告もせず、かつ、期間もはっきりしない指名ストライキなどのため、不就労率が50%を超える期間もあることからすれ ば、組合員であることを理由とする不利益な取扱いであるとか、組合を弱体化するための支配介入であるなどと認めることはでき ないとされた例。

1600 休暇の取扱い
会社は、組合員に対する年次有給休暇を付与するに当たって、本件ストライキを開始した昭和46年12月以前の出勤率を8割と 推定する特別扱いをして、本件就業規則30条による最低日数の15日を一律に付与したのであるが、このような会社の取扱い は、本件ストライキによる長期間にわたる不就労について、組合員の利益にも配慮しつつ、前記の処理をしたものということがで き、年次有給休暇の付与の取扱いをもって、組合員であることを理由とする不利益な取扱いであるとか、組合を弱体化するための 支配介入であるなどと認めることはできないとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
1204 スト・カット
退職せん別金の算定において、会社の従業員がストライキに参加して就労しなかった場合を欠勤として同一に取り扱ったことは、 ノーワーク・ノーペイの一適用例として適法であると解され、会社による、組合のストライキに対する報復であるとか、会社が組 合の弱体化を意図するなどといった特別の事情が存するとは認められないから、組合員であることを理由とする不利益取扱いや、 支配介入に当たるということはできないとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
会社が本件ストライキの終結を宣言した昭和51年1月12日から同年6月1日まで本件ロックアウトを継続して組合員の就労を 受け入れなかったことは、やむを得ない措置であるというべきであり、組合員の退職せん別金の算定において、本件ストライキの 終結を宣言した昭和51年1月12日から同年6月1日までを欠勤と同一と取り扱ったことについても、組合員であることを理由 とする不利益な取扱いとか、支配介入であるなどと認めることはできないとされた例。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集36集336頁 
評釈等情報   

[先頭に戻る]

顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委昭和51年(不)第76号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  昭和60年 8月 6日 決定 
中労委昭和60年(不再)第40号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  平成 8年 8月 7日 決定 
東京高裁平成13年(行コ)第157号 一審判決の一部取消し  平成15年 1月30日 判決