労働委員会関係裁判例データベース

(こ の事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]

概要情報
事件名  JR貨物外1社(北海道不採用) 
事件番号  東京高裁平成10年(行コ)第119号 
控訴人  国鉄労働組合外4社 
控訴人  中央労働委員会 
控訴人参加人  個人7名 
控訴人参加人  国鉄労働組合外4社 
被控訴人  中央労働委員会 
被控訴人  日本貨物鉄道株式会社外1社 
判決年月日  平成12年12月14日 
判決区分  控訴の棄却 
重要度   
事件概要  本件は、国鉄の分割民営化に伴って設立された九州旅客鉄道、日本貨 物鉄道、西日本旅客鉄道の3社及び北海道旅客鉄道、日本貨物鉄道の2社が、昭和62年4月の会社発足時において、さらに北海 道事件にあっては同年6月の追加採用時において国労組合員を採用しなかったことが、それぞれ不当労働行為であるとして申立て があった事件である。
 初審各地労委は、本件国労組合員を採用したものとしての取扱い及び文書掲示等を命じ、その余の申立てを棄却したところ、こ れを不服として会社から再審査の申立てがなされ、中労委は、本件国労組合員の不採用に関し、少なくとも一部につき不当労働行 為が成立すると判断して、各初審命令の一部を変更し、その余の各再審査申立てを棄却した。
 会社及び国労は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、平成10年5月28日、各中労委命令を取 り消し、国労の訴えについては却下するとの判決を言い渡した。
 中労委及び国労は、これを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は12月14日に、本件各控訴をいずれも棄却するとの 判決を言い渡した。 
判決主文  1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は、甲事件及び乙事件を通じてこれを二分し、その1を両事件第一審被告の負担とし、その余を乙事件第一審原告ら の負担とし、当審における補助参加によって生じた費用は各補助参加人の負担とする。
判決の要旨  4911 解散事業における使用者
 被控訴人らの職員採用に際しての設立委員及び国鉄の各権限は、改革法により付与されたものであり、しかも設立委員が国鉄の 同権限に規制を及ぼし又は指揮監督することを許容する規定がないことからすれば、設立委員が国鉄における採用候補者の具体的 選定及びこれに基づく名簿作成過程を、現実的かつ具体的に支配、決定することのできる地位にはなかったというべきであるか ら、設立委員をもって不当労働行為責任が帰属する使用者と認めることはできないとされた例。

4911 解散事業における使用者
 設立委員等において、採用候補者名簿に登載された者について、採否を決する余地はあったものの、名簿に登載されなかった者 については、その採否を決する余地すらなかったことなどからみて、国鉄による候補者選定及び名簿の作成に関して、設立委員 等、ひいては被候補者らが、「近い将来において労働契約を締結する可能性がある者」に当たると認めることはできないとされた 例。

4911 解散事業における使用者
 改革法二三条が、職員募集に始まり採用の通知をするまでの手続き並びにその法的効果の帰属関係の全体について特別に定めを 置いて、民法上の一般的な契約理論を排除したうえで、設立委員等及び国鉄に対し特別の権限を付与し、採用手続きの各段階にお ける権限の主体及び範囲を法定しているのであるから、国鉄による採用候補者の選定及び名簿の作成は国鉄の専権に属する事項で あって、本来設立委員等が自ら内部において行うべき性格のものであるといえず、国鉄が設立委員等の補助者又は受任者であると はいえないとされた例。

1500 不採用
 承継法人の職員の採用は、改革法二三条に基づいて設立委員等において行われる新規採用であるゆえ、採用手続きは憲法及び労 組法に抵触するものと解されず、採用に関して法律その他による特別の制限も存在しないことから、採用手続きに関して労組法七 条一号本文前段の不利益取扱いに係る不当労働行為が成立する余地はないとされた例。

5006 採用の請求
 中労委が、清算事業団を名宛人として原職又は原職相当職での採用取扱いなどの救済方法を命じることは現実に不可能であり、 その意味では実効性を欠くと言わざるを得ず、これは清算事業団の設立目的からくる制約であり、また、不当労働行為の救済につ いては使用者以外の者に対し、救済命令を発することができないとされる以上、中労委が採用取扱いなどの救済方法を可能ならし めるために、被控訴人らを労組法七条の使用者にあたると判断したうえで、救済命令の名宛人としたというのであれば、中労委命 令は明らかに違法である。

6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
 国鉄が本件採用に関して不当労働行為を行った場合には、それに対する救済は国鉄、ひいては清算事業団との間で図られるべき ものとされ、不当労働行為を全く排除しているものではないことに鑑みれば、改革法二三条が憲法二八条、ILO九八号条約、国 際人権A規約に違反すると解することはできないとされた例。

6230 主張・立証の制限
 参加人らの当審における新たな主張の提出は、中労委命令の同一性を害するとまではいえないし、中労委の本件命における訴訟 行為と抵触するといえないとされた例。

1501 黄犬契約
 組合差別的な募集条件の提示が黄犬契約における「雇用条件とすること」に該当するのは、募集に応じた特定の応募者に対し、 文字通り、当該募集条件を雇用の条件として定めた場合を指すものと解すべきであり、不採用者については、組合差別的な募集条 件を雇用条件として定めることはあり得ないから、労組法第七条第一号本文後段の黄犬契約が成立する余地はないとされた例。

6140 訴の利益
 被控訴人らが本件採用に関して労組法七条による不当労働行為の責任を負わないことを理由に中労委命令が取り消される場合に は、中労委命令は当然にその効力を失うことから、参加人らが本件採用に関する中労委命令の取消を求めることによって、回復す べき権利又は法律上の利益も失われることから、訴えの利益がないとされた例。

6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
 本件採用に関して国鉄に不当労働行為に該当する行為があったとしても、被控訴人らの設立委員は労組法七条の「使用者」に該 当せず、また、その他、不当労働行為の責任を設立委員に帰せしめる事由もないから、被控訴人らもその責任を負うことはなく、 中労委命令のうち、本件採用にかかる部分は違法であって取消を免れないとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集35集839頁 
評釈等情報   

[先頭に戻る]

顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地裁平成 6年(行ウ)第8号 救済命令の全部取消し  平成10年 5月28日 判決 
最高裁平成13年(行ヒ)第96号(上告却下・上告受理) 上告却下・上告受理  平成15年12月15日 決定 
最高裁平成13年(行ツ)第104号 上告の棄却  平成15年12月15日 判決 
最高裁平成13年(行ヒ)第96号(上告の棄却) 上告の棄却  平成15年12月22日 判決 
 
[全 文情報] この事件の全文情報は約277KByteあ ります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダ ウンロードが必要です。