事件名 |
新日本製鐵 |
事件番号 |
大阪高裁平成11年(行コ)第9号
大阪高裁平成11年(行コ)第10号
大阪高裁平成11年(行コ)第11号
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控訴人 |
大阪府地方労働委員会 |
控訴人参加人 |
個人1名 |
控訴人参加人 |
新日本製鐵株式會社 |
被控訴人 |
個人1名 |
被控訴人 |
個人2名 |
被控訴人 |
新日本製鐵株式會社 |
被控訴人 |
大阪府地方労働委員会 |
被控訴人参加人 |
新日本製鐵株式会社 |
判決年月日 |
平成12年 9月29日 |
判決区分 |
一審判決の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、所属する組合が労使協調であると批判してその主張
を従業員に訴え、また、独自に会社に労働条件の改善を要求する等の活動を行った申立人4名に対し、昇格・賃金査定で差別した
ことが争われた事件である。
大阪地労委(平成元不41、平成2不11、平成3不38、平成4不48、平成8・7・16決定)は、(1)申立人X1に対
する昭和63年4月1日付けで主事に昇格したものとしての取扱い、(2)バックペイ((1)に関して)、(3)文書手交
((1)に関して)を命じ、申立人4名の昭和63年3月以前に係る申立ては却下し、申立人X1を除く3名に係るその余の申立
ては棄却したところ、会社及び申立人4名は棄却したところ、会社及び申立人4名は、これを不服として、それぞれ行政訴訟を提
起した。
原審の大阪地裁(平成10・12・14判決)は、会社の請求を一部認容して地労委の救済部分を一部取り消し、申立人4名の
請求を一部認容して地労委の棄却部分を一部取り消した。
東京高裁は、個人・地労委の控訴を棄却し、大阪地労委の一部救済命令を一部取り消した原判決を一部取り消し
た。 |
判決主文 |
1 控訴人地労委の第九号事件控訴に基づき、原判決中、控訴人地労
委の被控訴人X3及び同X4に対する各敗訴部分をいずれも取り消し、同被控訴人らの控訴人地労委に対する各請求をいずれも棄
却する。
2 控訴人地労委の第一〇号事件控訴のうち、原判決中控訴人地労委の被控訴人X3及び同X4に対する各敗訴部分の取消請求に
かかる部分をいずれも却下する。
3 控訴人地労委の第一〇号事件控訴のうち、原判決中控訴人地労委の被控訴人新日鉄に対する敗訴部分の取消請求にかかる部分
を棄却する。
4 控訴人X2の第一一号事件控訴を棄却する。
5 訴訟費用は、補助参加によって生じたものも含め、第一、二審とも、被控訴人新日鉄に生じた分の4分の1を控訴人地労委の
負担、その余を被控訴人X3、同X4、控訴人X2及び補助参加人X1の負担とし、その余を各自の負担とする。 |
判決の要旨 |
6180 その他手続
同一当事者間の同一請求に関し、不服範囲が同一である控訴人地労委の控訴の提起は、二重控訴に当たる不適法なものであるとし
て却下された例。
5201 継続する行為
被控訴人X2及び補助参加人X1の本件申立中、申立時である平成元年7月の1年前、すなわち、昭和63年7月の賃金及び賞与
の支払、それを決定した同年4月の考課査定及び資格の格付け並びにそれ以降の各行為に関する救済の申立は、労働基準法二七条
二項の期間を遵守したものであって適法であり、それ以前、すなわち、昭和63年3月以前の各行為に関する救済の申立は不適法
であるとされた例。
1200 降格・不昇格
試験結果と各年度における大形工場分塊掛及び事業開発推進部鋼材加工センターにおける合格者数等を考え合わせると、被控訴人
X3が掛試験に合格せず、工場試験及び所の試験への推薦を得られなかったことはやむを得ないものであり、正当な組合活動のゆ
えの不利益な取扱いがあったとは認められない。また、被控訴人X3は、職務能力、勤務成績等が大形工場分塊掛及び鋼材加工セ
ンターにおける主担当の平均を上回るものであるとの具体的な主張立証をしておらず、被控訴人新日鉄による評価が被控訴人X3
の正当な組合活動のゆえの不利益な取扱いによるものと判断することはできないとされた例。
1200 降格・不昇格
被控訴人X4は、昭和63年度、平成2年度及び同3年度の各試験に合格するに足りる成績を収めた旨の具体的な主張立証をして
いないから、同各年度における掛試験に合格しなかったことが、被控訴人新日鉄による不利益な取扱いによるものであると認める
ことはできないし、平成元年度における成績等から、被控訴人X4が掛試験に合格せず、工場試験及び所の試験への推薦を受けら
れなかったことはやむを得ないものであり、正当な組合活動のゆえの不利益な取扱いがあったとは認められないとされた例。被控
訴人X4は、昭和63年度、平成2年度及び同3年度の各試験に合格するに足りる成績を収めた旨の具体的な主張立証をしていな
いから、同各年度における掛試験に合格しなかったことが、被控訴人新日鉄による不利益な取扱いによるものであると認めること
はできないし、平成元年度における成績等から、被控訴人X4が掛試験に合格せず、工場試験及び所の試験への推薦を受けられな
かったことはやむを得ないものであり、正当な組合活動のゆえの不利益な取扱いがあったとは認められないとされた例。
1202 考課査定による差別
補助参加人X1は、昭和63年当時の直属の上司から、主担当として特に優れていた電気等に関する知識を生かす積極的な発言・
行動、リーダーシップに欠け、掛の安全推進委員としての活発な活動が乏しかったと評価されていたのであるから、昭和63年度
の賞与の額部分について、原判決の該当欄記載の程度の評価、金額にして、補助参加人の申立によれば、中元賞与が1万0900
円、年末賞与が9900円だけ平均を下回っていた程度の評価は、正当な組合活動を理由とした不利益な取扱いに当たらないとさ
れた例。
1202 考課査定による差別
控訴人X2は、職務能力、勤務成績等が製鋼工場機械運転掛及び基盤整備センターにおける主担当の平均を上回るものであるとの
具体的な主張立証をしておらず、被控訴人新日鉄による評価が控訴人X2の正当な組合活動のゆえの不利益な取扱いによるものと
判断することはできないとされた例。
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業種・規模 |
鉄鋼業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集35集543頁 |
評釈等情報 |
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