事件名 |
新日本製鐵 |
事件番号 |
大阪地裁平成 8年(行ウ)第122号
平成 8年(行ウ)第126号
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原告 |
X1外3名(甲事件) |
原告 |
新日本製鐵(乙事件) |
被告 |
大阪府地方労働委員会(乙事件) |
被告 |
大阪府地方労働委員会(甲事件) |
被告参加人 |
X2(乙事件) |
被告参加人 |
新日本製鐵(甲事件) |
判決年月日 |
平成10年12月14日 |
判決区分 |
救済命令の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、所属する組合が労使協調であると批判してその主張
を従業員に訴え、また、独自に会社に労働条件の改善を要求する等の活動を行った申立人4名に対し、昇格・賃金査定で差別した
ことが争われた事件で、大阪地方委は、(1)申立人X2に対する昭和63年4月1日付けで主事に昇格したものとしての取扱
い、(2)バックペイ((1)に関して)、(3)文書手交((1)に関して)を命じ、申立人4名の昭和63年3月以前に係る
申立ては却下し、申立人X2を除く3名に係るその余の申立ては棄却した。
会社及び申立人4名はこれを不服として、それぞれ大阪地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、左記のとおり、会社の請求を
一部認容して地労委の救済部分を一部取り消し、申立人4名の請求を一部認容して地労委の棄却部分を一部取り消し
た。 |
判決主文 |
1 被告が平成元年(不)第41号、平成2年(不)第11号、平成
3年(不)第38号及び平成4年(不)第48号不当労働行為救済命令申立併合事件について平成8年7月16日付けでした命令
のうち、主文第1項及び第2項並びに第4項のうち甲事件原告X1及び同X4の申立てを棄却した部分をいずれも取り消す。
2 甲事件原告X1及び同X4のその余の請求並びに甲事件原告X2及び同X3の各請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、乙事件原告に生じたものの全部を被告の負担とし、被告に生じたものの5分の2を甲事件原告X2及び同X3の
負担とし、その余は各自の負担とする。 |
判決の要旨 |
1200 降格・不昇格
5200 除斥期間
6341 事実認定の誤り
初審命令が救済した昭和63年4月の申立人X2の主事昇格について、資格昇格の格付けは年1回の掛試験に不合格となって工場
試験の推薦を受けられなかった時点で完結するものであり、X2の不推薦行為は同年1月に完結し申立期間を経過しているので不
適法であるとして、これについて救済を認めた地労委命令主文第1項及び第2項を取り消した例。
1202 考課査定による差別
5200 除斥期間
初審命令が却下した昭和63年3月以前の申立人X1ら4名の賃金・賞与是正の申立てにつき、(a)賃金につき、最初の救済申
立ての日より1年前の昭和63年7月に支払われた基本給本給等の各賃金が査定決定された同年4月以降の申立てが適法とし、
(b)賞与につき、査定に基づく支払が独立した1回限りのもので他の時期と一箇の不当労働行為といえず、同年7月以降の支払
いにかかる申立てが適法とし、(a)(b)以前の申立ては労組法二七条二項の期間経過により不適法として却下した初審命令は
適法であるとされた例。
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
会社の不当労働行為意思について、日本共産党系の組合内少数派として組合役員選挙に立候補する等組合活動を活発にしていた申
立人らの勢力拡大を恐れて組合主流派に肩入れし、右活動を止めるようにとの上司の言動等は個人の言動にとどまらず会社の意図
を実現しようとしたもので、申立人X2の掛試験を不合格とする不当労働行為があったもので、会社は申立人らグループに継続し
た不当労働行為意思を有していたとされた例。
1200 降格・不昇格
6330 審査手続の違法
初審命令が申立てを棄却した昭和63年3月以降の申立人X1の主事昇格差別につき、勤続17年以上の18人中工場試験への推
薦を受けていないのは同27年のX1のみであり、推薦できないほど勤務成績不良でなく、会社は右(3)の不当労働行為意思を
有していたので掛試験で不合格としたことに合理性がなく、少数派組合員の組合活動嫌悪の不利益取扱いであり、試験が適性に実
施されたなら合格した可能性が高いと推認されるから、労組法七条一項の不当労働行為でありこれを棄却した初審命令は違法であ
るとして取り消された例。
1200 降格・不昇格
初審命令が申立てを棄却した昭和63年3月以降の申立人X3の主事昇格差別につき、同期入社の9割は入社25年で昇格してい
て通常の能力で勤務成績不良でない者にはさほど困難な試験でなく、かつての受験成績が著しく低く、試験によらず工場試験に推
薦されたので掛試験より難しい工場・所試験を合格しえたとする根拠がないから、右不合格を不当労働行為といえないとして、こ
れを棄却した初審命令を支持した。
1202 考課査定による差別
初審命令が申立てを棄却した昭和63年3月以降の申立人X3の賃金・賞与是正につき、考課査定結果は平成元年度下期及び2年
度の職務考課給が平均であるのを除き平均を下回っており、47年に支部長になってから、掛長の活動中止要求等支配介入的言動
がなされているが、63年以降の賃金体系の大きな査定幅を考慮すればそれほど低い考課査定結果といえず、職務遂行状況から平
均より高い評価を受けるべきと言い難く、他の申立人Tは平均を上回る査定も多いことを総合し、X3の低査定と少数派組合活動
とに因果関係は認められず不当労働行為といえないとして、これを棄却した初審命令を支持した例。
1200 降格・不昇格
6330 審査手続の違法
初審命令が申立てを棄却した昭和63年3月以降の申立人X4の主事昇格差別につき、元年の試験結果は工場試験へ推薦できない
ほど低くなくて以前の結果も同程度の可能性が高く、各種資格を取得しており基本的能力を認められ、他の申立人X2・X1に不
利益取扱いしていることを考慮すれば、X4が掛の推薦を受けて工場・所試験を受験し、その試験が適性に実施されたなら合格し
た可能性が高いと推認されるから、労組法七条一項の不当労働行為に当たり、これを棄却した初審命令は違法であるとして取り消
された例。
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業種・規模 |
鉄鋼業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集33集806頁 |
評釈等情報 |
労働判例 1999年6月1日 757号 34頁
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