事件名 |
東日本旅客鉄道(千葉動労・不採用支配介入) |
事件番号 |
東京地裁平成13年(行ウ)第417号
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原告 |
国鉄千葉動力車労働組合 外9名 |
被告 |
中央労働委員会 |
判決年月日 |
平成14年 8月 1日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
自由民主党、公明党、保守党及び社会民主党の4党は、平成12年5月30日「JR採用問題の打開について」と題する文書によって、国鉄労働組合が、いわゆるJR不採用問題について、JRに法的責任がないことを認め、国労全国大会においてこの旨を決定する等を内容とする合意を行った。
原告らは、四党合意は国労と共に採用差別の是正を求めている原告らに対する支配介入及び不利益取扱いの不当労働行為であるとして、国土交通大臣、自民党及び東日本旅客鉄道株式会社の三者を相手方として東京都労働委員会に対し不当労働行為救済命令の申立てをしたが、都労委は、労働委員会規則三四条一項五号の「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき」に該当するとして、本件救済申立てを却下する決定をし、被告は、原告らの再審査申立てを棄却する命令をした。
原告らは、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起していたが、同地裁は、原告らの請求をいずれも棄却する判決を言い渡した。 |
判決主文 |
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。 |
判決の要旨 |
4916 企業に影響力を持つ者
5144 不当労働行為でないことが明白
国土交通大臣及び自民党は、原告らに対する不当労働行為の主体とはなりえないことは明らかであるから、国土交通大臣及び自民党に対する本件救済申立てが規則三四条一項五号にいう「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき」に該当するとした本件命令の判断は相当である。また、四党合意は、いわゆるJR不採用問題について、政治レベルにおいて国労の任意的対応を求め、同問題の解決を図ろうとする試みに他ならず、JR東日本による何らかの関与があったとしても、それは労組法七条の規制の対象となる行為ではない。したがって、JR東日本に対する本件救済申立てについて、規則三四条一項五号にいう「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき」に該当するとした本件命令の判断は相当である。
6330 審査手続の違法
労組法二七条一項は、労働委員会は、不当労働行為の救済申立てを受けたときは、「遅滞なく調査を行い、必要があると認めたときは、当該申立が理由があるかどうかについて審問を行わなければならない」と規定し、規則三九条一項は、労働委員会は、「申立てのあった日から原則として30日以内に、審問を開始する」ものと規定するところ、これら規定は、労働委員会が調査を行った結果、組合が主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかで、審問を行うまでもなく、規則三四条一項五号により申立てを却下すべきであると判断される場合にまで審問を行うべきことを定める趣旨のものでないことは規定上明らかであり、本件救済申立てが規則三四条一項五号の場合に当たることは前述のとおりであるから、都労委が審問を行わなかったことをもって、労組法二七条一項及び規則三九条一項に違反するということはできない。
6330 審査手続の違法
規則五五条二項は、審問の要否を事件の初審の記録及び再審査申立書その他当事者から提出された書面等によって判断しうると定めていることからすると、被告における調査の方法としては、事件の初審記録及び再審査申立書その他当事者から提出された書面等を審査することも含まれると解する。したがって、本件において、労組法二七条一項に定める調査はなされているというべきであるから、原告らの主張は採用できない。規則五五条二項の定めからすると、再審査手続において審問を開催するか否かは被告の裁量に属するものと解されるところ、被告が事件の初審記録及び再審査申立書その他当事者から提出された書面等により命令を発するに熟すると認めた場合には、規則三九条一項の適用はないというべきであるから、原告らの主張は採用できない。
6330 審査手続の違法
労働委員会が係属中の審査手続に関して、当事者からなされた求釈明や請願に対し応答しなければならない具体的な義務はないから、被告がこれらに応答せずに本件命令を発したからといって、再審査手続が違法となるものではない。また、被告が審問を経ないで命令を発する場合には、参与委員が審問等の手続きに関与する機会はないことになるが、規則五五条二項がそのような場合を容認している以上、これをもって手続が違法となることはない。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集37集655頁 |
評釈等情報 |
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