労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  電装舎 
事件番号  神戸地裁平成12年(行ウ)第24号 
原告  Y1 
被告  兵庫県地方労働委員会 
被告参加人  関西合同労働組合 
判決年月日  平成14年 7月16日 
判決区分  請求の棄却 
重要度   
事件概要  本件は、会社及びY1が、従業員X1が組合に加入したことを契機に、(1)配車差別、業務差別を行い歩合給を減額させたこと、(2)(1)に関する団体交渉を誠実に応じなかったこと、(3)脱退勧奨を行ったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 兵庫地労委(平成10年(不)第4号、第8号、平成12年・5・9決定)は、(1)他の従業員に支払われた歩合給の平均額とX1に支払われた歩合給との差額の支払、(2)X1の労働条件に関する団交応諾、(3)脱退勧奨などによる支配介入の禁止、(4)文書手交を命じ、その余の申立ては棄却した。
 神戸地裁は、原告の請求を棄却した。 
判決主文  一 原告の請求を棄却する
二 訴訟費用は原告の負担とする。 
判決の要旨  4916 企業に影響力を持つ者
労組法七条にいう「使用者」とは原則として、労働契約上の雇用主をいうものと解されるが、労働契約上の雇用主たる法人の法人格が全くの形骸にすぎない場合、またはそれが法律の適用を回避するために濫用される場合においては、その法人格を否認して、法人の背後に存在する実体たる現実の行為者個人に対し、同条にいう「使用者」としての責任を追及するのが相当である。

1302 就業上の差別
Y1は、組合員通告直後に、X1に対し、使用開始後9年以上の古い車に乗り換えるよう指示するとともに、歩合給が安定したO陸運の専属業務から外す旨の指示をしたため、X1の歩合給は大幅に減少したところ、Y1は、X1の組合加入に関して、組合やX1に対する反感や敵意をあらわにしていた事実に照らすと、Y1はX1が組合に加入したことの故をもって不利益な取扱いをしたもので、労組法七条一号の不利益取扱いに該当する。

2130 雇用主でないことを理由
Y1は、団交申入書を突き返したり、これを破ったり燃やしたりして、組合との団体交渉を拒否し、一度も団体交渉をすることはなく、また、Y1とともに代表権を持つY1の妻は、自ら主体的に団体交渉事項について決定することができず、Y1らの意向に支配していたものと認められるところ、Y1は妻を通じても、誠実に団体交渉をしなかったものと認められ、このことは労組法七条二号の団体交渉拒否に該当する。

2621 個別的示唆・説得・非難等
Y1は、X1に対し組合からの脱退を働きかけたこと、右(2)の不利益な取扱いや(3)の団体交渉拒否などの事実に照らすと、Y1のこれら言動は、組合の分会の結成及び運営に対して多大の影響を及ぼしたものと認められ、労組法七条三号の支配介入に該当する。

4916 企業に影響力を持つ者
電装舎の代表取締役であったY1が一体的に運営・支配する電装グループの一角を形成する電装舎は、株式会社の形態を採るものの、その実体はその背後に存在するY1個人にほかならず、「使用者」に当たらないと争うのは、労働組合法の適用を回避するために電装舎の法人格を濫用するものであるから、電装舎の法人格を否認して、Y1個人に労働組合法第七条の「使用者」としての責任を追及するのが相当である。

業種・規模  自動車整備業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集37集617頁 
評釈等情報  中央労働時報 2000年3月10日 1008号 41頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
兵庫地労委平成10年(不)第4号、平成10年(不)第8号 一部救済 平成12年5月9日
神戸地裁平成12年(行ク)第9号 全部認容  平成12年11月29日
大阪高裁平成14年(行コ)第72号 取消 平成15年12月18日
最高裁平成16年(行ヒ)第113号 上告不受理 平成18年10月31日