平成22年10月8日
大臣官房国際課国際協力室
古賀(内7302)、五十嵐(内7304)
電話番号 :03-5253-1111
(夜間直通:03-3595-2404)
第8回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 結果概要
1.テーマ
社会的弱者の貧困対策−保健と福祉の連携強化を通じて
Poverty alleviation with a focus on vulnerable people
- through strengthening collaboration between the social welfare and health services-
2.開催概要
日時・場所
2010年8月30日(月)〜9月2日(木) 於:三田共用会議所
主催者
厚生労働省
協力者
ASEAN事務局、世界保健機関西太平洋地域事務局(WHO/WPRO)、国際労働機関(ILO)、独立行政法人国際協力機構(JICA)
参加者
ASEAN10ヶ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)より、次官級1名を含む計46名
(原則として、社会福祉政策担当行政官各国2名及び保健政策担当行政官各国2名)
中国及び韓国(各2名)
ASEAN事務局(3名)、WHO/WPRO(1名)、ILO(1名)
3.プログラム
8月30日(月)
- 開会挨拶 (長浜博行 厚生労働副大臣)挨拶文(日本語) 挨拶文(英語)
- 本会合の趣旨説明(古賀大輔 厚生労働省大臣官房国際課国際協力室長補佐)
- 基調講演「Understanding Poverty : Concepts and Its Consequences」(PDF:959KB)
(阿部彩 国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析部長) - 講演1「Policy Frame for Poverty Alleviation -Recent Japanese Experiences」(PDF:2,123KB)
(藤井康弘 厚生労働省大臣官房国際課国際企画室長) - 講演2「Community-Based Participatory Approaches for Poverty Alleviation -Good Practice in Japan and Cambodia-」(PDF:3,215KB)
(植村英晴 日本社会事業大学教授) - カントリープレゼンテーション(ASEAN各国)
*なお、参加した各国から提出されたカントリーレポートについては、こちらをご参照ください。 - 歓迎レセプション(歓迎挨拶:阿曽沼慎司 厚生労働事務次官)
8月31日(火)
施設視察(千葉県木更津市)
井戸端げんき(通所介護事業所)、野の花の家(児童養護施設)、FAH(フレンドシップ アジア ハウス)こすもす(母子生活支援施設)
9月1日(水)
- 講演3「ASEAN’s Efforts in Health and Social Welfare Sectors to Address Poverty-related Issues in the Region」(PDF:843KB)
(Ms. Jintana Sriwongsa, ASEAN事務局 社会福祉・女性・労働部長、Ms. Mega Irena, ASEAN事務局 保健・感染症対策部長) - 講演4「Addressing poverty in health : a framework for analysis and action」(PDF:1,110KB)
(Ms. Anjana Bhushan, WHO西太平洋事務局 保健開発局専門官) - 講演5「JICA’s Efforts for Poverty Alleviation -Focusing on the collaboration between health and welfare sectors」(PDF:1,265KB)
(中村信太郎 JICA国際協力専門員) - 講演6「Poverty Alleviation and Decent Work」(PDF:593KB)
(長谷川真一 ILO駐日代表) - グループディスカッション
- グループ 1: 国レベルでの保健福祉連携による貧困削減施策の課題と展開
(ファシリテーター:阿部彩 国立社会保障・人口問題研究所社会保障応分析部長) - グループ 2: 保健と福祉の連携による貧困施策における中央政府と地方政府との連携のあり方
(ファシリテーター:植村英晴 日本社会事業大学教授) - グループ 3: 国レベルでの保健福祉連携による貧困削減施策の課題と展開
(ファシリテーター:中村信太郎 JICA国際協力専門員) - グループ 4: 保健と福祉の連携による貧困施策における中央政府と地方政府との連携のあり方
(ファシリテーター:沼田(社)日本発達障害福祉連盟事務局長)
- グループ 1: 国レベルでの保健福祉連携による貧困削減施策の課題と展開
9月2日(木)
4. 議論の概要
基調講演では、阿部部長より最近の調査結果を用いた貧困と格差の捉え方と社会に及ぼす影響について紹介された。続いて、藤井室長より我が国の貧困削減政策の歴史的変遷と近年の取り組みが、植村教授より日本およびカンボジアにおける地域参加型貧困削減施策の経験が紹介された。ASEAN事務局、WHO/WPRO及びJICAの講演では、それぞれの機関における保健及び福祉分野における貧困削減に対する取り組みが紹介された。今回会合から新たにILOの参加があり、労働分野における貧困削減に対する取り組みであるディセントワークの考え方が強調された。
また、各国のカントリープレゼンテーションを通じて貧困削減政策における各国の状況、成功事例、直面している問題等が紹介され、ASEAN各国及び日本の間で情報、経験、知識の共有がなされた。これらの本会合で提供された情報に基づいて、貧困削減に向けた保健及び福祉分野での取り組みや共通課題、および、国レベル、地域レベルで今後実施しうる活動について、活発な議論が行われ、以下の通り、本会合における提言が参加者全員により合意に至った。
第8回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合
「社会的弱者の貧困対策−保健と福祉の連携強化を通じて」
2010年8月30日〜9月2日 東京・日本
原文(英語)はこちらから
【前文】
2010年8月30日‐9月2日 東京において開催された第8回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合参加者は下記の通り合意した:
ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合を2003年より開催している日本のイニシアティブに感謝するとともに、第8回会合が、情報共有と貧困削減に対する保健及び福祉の観点からとらえた認識を共有する非常に効果的な場であると考える。
貧困は多面的な課題であり、従って貧困削減のためには、貧困層への収入創出プログラム、基礎的保健サービスの提供、社会基盤、清浄な水、住居、食品安全、さらには貧困層の雇用への広範なアクセスと基礎教育及び職業訓練の提供を含めた関係省庁間の連携強化の必要がある。
本会合の提案について、地域及び国レベルでフォローアップする必要性がある。
第8回会合の議事概要及び成果について各国の担当大臣や幹部に報告する。
日本はASEAN事務局の協力を得ながら、この会合の議事概要及び成果をASEAN+3保健大臣会合及び社会福祉大臣会合、高級事務レベル会合に報告する
貧困削減に関する上記大臣会合間の既存の協力関係をより強化する。
あわせて参加者は、2011年の第9回会合のテーマとして、社会福祉・保健分野における人材育成に焦点を当てることを再確認した。
【提言】
地域的な取り組み
貧困削減に関する、地域間での情報共有と成功事例の普及を促進する。
ミレニアム開発目標に沿った貧困削減の枠組み構築を含めた、社会保障の概念とその構成要素についての議論を促進する。
地域のニーズを満たすため、貧困削減のモニタリングと評価に関し関係する職員に対する能力開発を強化する。
国家的な取り組み
社会的弱者に焦点を当てた貧困削減プログラムへの適切な予算配分を促進する。
政策策定及び見直し・評価について、担当省庁及び地方政府の高官を含めた全体的アプローチを促進する。
特に社会的弱者に対し、社会保障体系が適切な範囲となることを推進する。
地域社会に根ざした貧困削減プログラムと、政府職員、サービス提供者、保健及びソーシャルワーカーに対する様々な能力開発を強化する。
政策及びサービスの策定、プログラムの履行並びにモニタリング及び評価を促進するため、体系的なデータ収集を強化する。
貧困対策の課題の中に保健の問題が存在し、保健対策の課題の中に貧困の問題が存在することを唱道する。
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第8回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 議事概要(英文)写真付き(PDF:789KB) |
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第8回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 議事概要(英文)写真なし(PDF:184KB) |
【参考】
会合の経緯
厚生労働省では、1996年のリヨンサミットにて我が国が提唱した世界福祉構想を受け、東アジアを中心とする地域協力を推進すべく、1997年より2002年まで東アジア社会保障行政高級実務者会合を開催し、社会保障分野における協力関係の強化を図ってきた。その実績を踏まえ、2003年より、特にASEAN地域に焦点を当て、社会福祉及び保健医療の分野における緊密な関係をさらに発展させ、また、当該分野での人材育成を強化するため、ASEAN10ヶ国から社会福祉と保健医療政策を担当するハイレベル行政官を招聘し、ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合を開催している。
その間、ASEAN側も福祉・医療分野での日本、中国、韓国との協力を模索し始め、2004年にASEAN+3保健大臣会合及びASEAN+3社会福祉大臣会合が設置された。これまで、ASEAN+3保健大臣会合については、2004年4月にマレーシアで第1回会合、2006年6月にミャンマーで第2回会合、2008年10月にフィリピンで第3回会合が開催されており、本年7月には、シンガポールで第4回会合が開催されたところである。
ASEAN+3社会福祉大臣会合については、2004年12月にタイで第1回会合、2007年12月にベトナムで開催されており、2010年はブルネイで第3回会合が開催される予定である。厚生労働省は、これまでこれらのASEAN+3の活動に積極的に貢献しているところである。
ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合のテーマは、ASEAN諸国やASEAN事務局からの提案、ASEAN+3保健大臣会合・社会福祉大臣会合の議論などを踏まえて選定してきている。第1ステージ(2003〜2006年)では、人材育成、高齢化社会への対応、母子・障害者保健福祉、社会的弱者(児童・女性)支援をテーマとし、福祉と保健サービスの連携を軸に、中央政府と地方政府との連携、官民の役割分担、コミュニティー活動などについて議論を行ってきた。ASEAN諸国からの参加者(2003〜2010年)は延べ290名にのぼる。
また、本ハイレベル会合は、ASEAN+3保健大臣会合及び社会福祉大臣会合を支える事業として関係国間で位置づけられている。特に、ハイレベル会合への参加を契機として、保健と福祉という異なるセクタ間の協調強化に向けた取り組みがASEAN諸国で活発になってきているところである。累次のハイレベル会合の結果は上記ASEAN+3大臣会合に報告され、ASEAN側より、日本のイニシアティブに謝意が表されるとともに、今後も保健と福祉サービスの連携に焦点を当てて会合を継続してほしいとの意向が示されている。
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