厚生労働省

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第8回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合
長浜 博行 厚生労働副大臣 開会挨拶骨子

2010年8月30日(月)9:30〜 於:三田共用会議所第4特別会議室

ASEAN各国の代表の皆様、今回初めてご参加いただいた中国と韓国の代表の皆様に対して、日本政府を代表し、心から歓迎申し上げます。

先日、私は、シンガポールで開催された「第4回ASEAN+3保健大臣会合」に参加し、各国の大臣の皆様と親しく医療制度改革について議論させていただいたところですので、特に皆様方の来日をうれしく思います。

また、参加された皆様と会議をサポートしてくれるASEAN事務局、WHO西太平洋地域事務局、ILO駐日事務所、JICA、講演者の方々に、感謝申し上げます。

ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合は2003年に開始して以来、今回で8回目になります。本会合のルーツは、リヨンサミットでわが国の提唱した「世界福祉構想」にあります。これは、各国が社会保障の分野での知恵と経験を分かち合うことにより、お互いがより良い社会を築き、次の世代に引き継いでいけるように貢献し合えるのではないかという考え方に基づいています。これまで福祉と保健、医療システムの連携を中心課題として活動を行い、成果をあげてきているところと考えております。

本年の会合は本日から4日間、社会的弱者の貧困削減をメインテーマとしてASEAN各国及び日本での情報の共有、情報交換、議論を行います。

今回の会合は、「社会的弱者の貧困削減〜保健と福祉の連携強化を通じて〜」(Poverty alleviation with a focus on vulnerable people - though strengthening collaboration between the social welfare and health services-)をテーマとしております。

社会的弱者(vulnerable people)に焦点を当てているのは、現に貧困な状況にある人々への対策(救貧)のみならず、経済の悪化や病気といったリスクに対して脆弱な中間層が、貧困に逆戻りすることのないための予防対策(防貧)についても議論するためです。さらに、これら対策の実現には、保健と福祉の連携強化が不可欠であることから、これをサブテーマとしております。

1日1ドル未満で生活する人々の割合を2015年までに半減させるというMDGs目標1「極度の貧困と飢餓の撲滅」指標改善は、近年の経済成長の成果により、東南アジア地域においては、相当程度改善しています。

しかしながら、2008年以降の世界経済危機が、様々な社会的リスクに対して脆弱な人々に最も顕著な影響をもたらしたことを踏まえ、ピッツバーグG20サミット首脳声明においては、開発途上国における失業、疾病などのリスクから人々を保護するための安全網(safety net)の重要性が指摘されました。さらに、シンガポールAPEC首脳宣言において強調された、成長の果実を全ての人々に行き渡らせる、「あまねく広がる成長(inclusive growth)」の必要性については、本年11月に横浜で開催されるAPEC首脳会議においても、議論の重点となることになっております。

これら国際動向を踏まえ、我が国としても、格差是正、貧困削減などのアジアが抱える課題に対して 社会的セーフティネットの構築など,我が国の地域、経験を活用することを、現政権が提唱する「東アジア共同体構想」に盛り込んだところです。

我が国においても、近年、経済成長の鈍化、少子・高齢化の進展、雇用形態の変化等を背景とした格差の増大という大きな課題が発生しています。我が国では、保健、労働、福祉を一つの省で所管している強みを生かし、3分野が連携して、様々な取り組みを行っているところです。一例として、ホームレスに対しては、シェルターにより一時的な宿泊場所を提供し、生活保護、住宅の確保、就業機会の確保、健康相談等の総合的な支援を行っています。

我が国では、現在、貧困対策の今後の在り方を検討しているところです。この中では、従来、所得や資産等の経済的指標でとらえられてきた貧困というものを、人間関係や社会参加といった社会的指標からもとらえるべきであるとの議論がなされています。

このため、貧困対策においては、生活保護のみならず、年金、最低賃金、雇用保険、医療保険、住宅手当等の幅広い社会保障・雇用施策によって最低限の生活(ナショナルミニマム)を確保できる新たなセーフティネットの構築が課題とされているところです。さらに、健康の維持は社会参加に不可欠であり、また、貧困が健康状態の悪化を招き、それがまた貧困を呼ぶという悪循環があることが指摘されているところから、保健政策との連携も必要不可欠です。

本会合においては、保健部局と福祉部局の専門家をお招きしており、日本の経験を踏まえ、両者の連携について御議論いただければと考えております。

さらに、貧困対策に当たっては、被保護者の自立を促すため、就労支援により、トランポリンのように労働市場に復帰できるセーフティネットを構築する必要があり、このためには雇用政策との連携が必要となります。このため、今回からの新たな取り組みとして、雇用対策に関する国連専門機関であるILOの専門家をお呼びしております。貧困問題に限らず、社会的弱者に対する施策の実施には、雇用施策との連携が不可欠です。このため、来年以降、ASEAN各国の雇用分野の行政官を本会合に招聘することを検討しております。これについても御議論をいただければ幸いです。

ASEAN各国と日本は長年のつながりがあり、様々な分野で良好な関係を築いてまいりました。これは、特に、保健医療や社会福祉の分野にも当てはまります。この会合が、お互いの情報と経験を共有する貴重な機会となることを期待します。

日本でのご滞在期間は短いですが、会合とともに、日本の文化にも触れ、実りある滞在としていただきたいと思います。ありがとうございました。


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