特定建築物の所有者又は所有者以外に当該特定建築物の
全部の管理について権原を有する者の皆様へ
「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(略称:建築物衛生法)」において規制の対象となる「特定建築物」の所有者又は所有者以外に当該特定建築物の全部の管理について権原を有する者(以下、「所有者等」といいます。)は、建築物衛生法に基づき、守らなければならない責務があります。
【建築物衛生法において、「所有者以外に全部の管理について権原を有する者」とは・・・】
特定建築物の全部について民法第25条等に規定する管理行為をすることができる法律上の地位にある者をいいます。民法上の管理行為とは、次のものをいいます。
(1) 保存行為:財産の滅失毀損を防ぎ、その現状を維持するための行為−例えば、家屋の修繕
(2) 利用行為:財産をその性質に従って有利に利用する行為
(3) 改良行為:財産の性質を変じない範囲でその価値を増加する行為−例えば、家屋に造作をつけること
すなわち、特定建築物の全部について、(1)〜(3)の行為を自らの判断でなし得る法律上の原因を有する者のことです。
1 特定建築物の「所有者等」の責務について
建築物衛生法において、特定建築物の所有者等の責務として、下記が定められております。
法:建築物における衛生的環境の確保に関する法律
則:建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則
(1) 特定建築物(一部でも)を使用開始したときは、使用開始日から1ヶ月以内に、「特定建築物の所在場所」、「用途」、「延べ面積」等を保健所に届け出ること。【法第5条第1項】
≪届出事項≫・・・規則第1条
- 特定建築物の名称
- 特定建築物の所在場所
- 特定建築物の用途
- 特定用途に供される部分の延べ面積
- 特定建築物の構造設備の概要
- 特定建築物維持管理権原者の氏名及び住所
(法人の場合:名称、事務所所在地及び代表者氏名) - 特定建築物の所有者等の氏名及び住所
(法人の場合:名称、事務所所在地及び代表者氏名) - 建築物環境衛生管理技術者の氏名等
- 特定建築物の使用開始日
(2) 政令改正、用途の変更、増築等により特定建築物に該当することとなった場合は、特定建築物に該当することとなった日から1ヶ月以内に、「特定建築物の所在場所」、「用途」、「延べ面積」等を保健所に届け出ること。【法第5条第2項】
(3) 特定建築物の「用途」、「構造設備の概要」、「建築物環境衛生管理技術者」等に変更があったときは、又は、用途変更、廃止、滅失、規模の縮小等により特定建築物に該当しなくなったときは、変更日から1ヶ月以内に保健所に届けること。【法第5条第3項】
(4) 建築物環境衛生管理技術者の選任について
- 特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行なわれるように監督をさせるため、建築物環境衛生管理技術者免状を有する者のうちから、建築物環境衛生管理技術者(管理技術者)を選任すること。【法第6条第1項】
@ 特定建築物所有者等は、特定建築物ごとに建築物環境衛生管理技術者を選任すること。【則第5条第1項】
※ 以下の事項は令和4年4月1日から施行されます。詳細については、こちら [386KB] をご覧下さい。
A 管理技術者に選任しようとする者が同時に二以上の特定建築物の管理技術者を兼ねることとなるときには、当該二以上の特定建築物の管理技術者となってもその業務の遂行に支障がないことを確認しなければならないこと【則第5条第2項】
B 選任時のみならず、現に選任している管理技術者が、新たに他の特定建築物の管理技術者を兼ねようとするときについても、Aと同様の確認を行うこと。【則第5条第3項】
C A及びBの確認を行う場合において、当該特定建築物について当該特定建築物所有者等以外に特定建築物維持管理権原者があるときは、 あらかじめ、当該特定建築物維持管理権原者の意見を聴かなければならないこと。【則第5条第4項】
(5) 特定建築物の維持管理に関し環境衛生上必要な事項を記載した帳簿書類を備えておくこと。【法第10条】
≪帳簿書類について≫・・・規則第20条
空気環境の調整、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ等の防除の状況を記載した書類 ※ 測定又は検査の結果、設備の点検・整備の状況も記載する。 |
5年間保存 |
特定建築物の平面図、断面図、維持管理に関する設備の配置・系統を明らかにした図面 | (半)永久保存 |
※この項目は令和4年4月1日から追加されます。 管理技術者に選任しようとする者が同時に二以上の特定建築物の管理技術者を兼ねることとなるとき(既に管理技術者に選任している者が、新たに他の特定建築物の管理技術者に選任される場合も含む。)に、当該二以上の特定建築物の管理技術者となってもその業務の遂行に支障がないことを確認した書面(特定建築物維持管理権原者への意見の聴取を行った場合は当該意見の内容を含む。) |
当該管理技術者が二以上の特定建築物の管理技術者を兼ねている間 |
その他特定建築物の維持管理に関し環境衛生上必要な事項を記載した書類 | 5年間保存 |
(6) 都道府県知事(保健所設置市長、特別区長)からの立入検査等に従うこと。【法第11条第1項】
※ 特定建築物の所有者等が、「特定建築物の維持管理について権原を有する者」(特定建築物維持管理権原者)でもある場合は、上記の他にも責務があります。詳しくはこちら
2 特定建築物の届出先について
特定建築物の届出書は、特定建築物の所在場所を管轄する保健所を経由して都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長)にご提出いただいております。
特定建築物の届出手続き等ついてご不明な点がある場合は、お近くの保健所へお問い合わせください。
3 建築物環境衛生管理技術者の選任について
建築物環境衛生管理技術者を「選任する」とは、「置く」という場合と異なり、所有者等との間に何らかの法律上の関係(例えば委任関係)があれば足り、身分関係があることを要せず、かつ常駐することは必ずしも必要ではありません。建築物環境衛生管理技術者の選任について、詳細は、こちら をご覧下さい。
4 都道府県知事(保健所設置市長、特別区長)による立入検査等について
都道府県知事(保健所設置市長、特別区長)は、必要があると認めるときは、特定建築物所有者等に対して必要な報告を求めたり、その職員に特定建築物に立ち入らせ、その設備・帳簿書類等の維持管理状況について検査させたり、関係者に質問させたりすることができます。
5 罰則
建築物衛生法においては、下記の(1)〜(4)のように特定建築物の所有者等の責務が適切に行われない場合に対して、30万円以下の罰金に処する旨の規定があります。
(1) 特定建築物の届出をしない場合、虚偽の届出をした場合【法第16条第1号】
(2) 「建築物環境衛生管理技術者」を選任しなかった場合【法第16条第2号】
(3) 特定建築物の維持管理に関する帳簿書類を備えなかった場合、帳簿書類に記載しない場合、帳簿書類に虚偽の記載をした場合【法第16条第3号】
(4) 都道府県(保健所設置市、特別区)の職員の立入を拒む、妨げる、忌避する場合や、質問に対して正答な理由なしに答弁しなかったり、虚偽の答弁をしたりする場合【法第16条第4号】
※ 特定建築物の所有者等が、「特定建築物の維持管理について権原を有する者」(特定建築物維持管理権原者)である場合は、上記の他にも罰則が係る責務があります。詳しくはこちら
法律の規定を遵守し、建築物における衛生的な環境の確保をお願いします。