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第1章 個人をとりまく社会経済情勢の変化

第1節 心身面での状況の変化

1 心身ともに健康で生活するために

○ 我が国の平均寿命は、世界で最も高い水準を維持しており、また、「いかに自立して健康に暮らせるか」という生活の質も考慮した健康寿命をみても我が国は上位に位置し、我が国は世界最高水準の健康を享受している。

○ しかしながら、国民の健康に対する不安感は大きい。「死亡につながる」という観点からみると、およそ半世紀にわたって悪性新生物、心疾患、脳血管疾患といった生活習慣病が国民にとっての脅威となっている。また、「生活の質を下げる」という観点からみると、うつ病や糖尿病といった疾患が国民にとっての脅威となっており、特にうつ病については、自殺の問題との関係でも、近年特に大きな社会問題となっている。

○ このような生活習慣病やうつ病などの疾患を克服していくため、個人の生活スタイルの改善を通じた健康増進を目的とする1次予防、健診などの実施により疾病の早期発見・早期治療を目的とする2次予防、リハビリテーションの実施により機能維持や回復を目的とする3次予防の考え方にのっとり、それぞれの対策を講じることが求められている。

図1-1-1 「障害平均余命」と「平均寿命に占める障害を有する期間」の国際比較の図

図1-1-3 我が国の主な死因の図


2 生涯を通じた健康づくり

○ 40〜50歳代における生活習慣病を予防するためには、より若年期から生活習慣を改善していくこと(1次予防)が重要である。また、早期に発見し、早期に治療することも疾病の予防に有効であり、このような2次予防の効果を上げるために、できるだけ多くの人が健康診断を受診し、必要に応じて精密検査、治療を行うことが重要である。

○ 近年はさまざまな心の問題が深刻な社会問題となっているが、この背景には精神分裂病やうつ病といった精神疾患の存在や、問題行動を起こす本人と家庭・学校・地域社会との関係において何らかの不適応が生じ孤立化している個人の存在が推測され、これらが複合的に絡み合って心の問題として生じていることが考えられる。したがって、これらの問題には医学的な対応も含めた総合的な対応を行っていくことが重要であると考えられる。


3 要介護状態の未然防止に向けて

○ 65歳以上人口の増加に伴い、介護を必要とする者も増加することが予想されている。高齢期においても健康で自らの意識で自分らしい生活を送るために、高齢期における要介護状態をいかに予防していくか、また、介護を必要とする者の日常生活動作能力(ADL)をいかに向上させていくかが重要な課題となっている。

○ 要介護状態を予防するためには、その原因となる傷病を予防することがまずは重要であり、要介護状態の主要な原因である脳血管疾患、痴呆、骨折などへの対策を講じていくことが必要である。

○ また、近年、要介護状態を予防し、障害を持った場合にも更なる悪化を防ぎ、残存機能を維持・向上させるための医学的な手段として、リハビリテーションの効用が報告されている。このような医学的なリハビリテーションを含め、介護を必要とする者が住み慣れた地域で、生き生きとした生活が送れるような体制づくりが必要である。

図1-1-16 「要介護者の主な原因別構成割合」と「寝たきり者の原因別構成割合」の図

4 障害者の生活の質の向上のために

○ 近年、総じて障害のある人の高齢化が進行しており、また、抱える障害は重度化・重複化してきているという傾向がある。

図1-1-20 身体障害者数の年次推移と程度別の割合の図

○ 障害のある人の生活の質の向上は機能障害の有無や程度によって決まるものではなく、むしろ活動の制限を除去又は軽減し、個々人が自由な選択に基づき活動することができるようにすることが重要である。このため、福祉用具等の活用、特殊教育・職業訓練等の実施、ユニバーサルデザインの実行などを推進していくことが必要である。

○ 障害のある人にとっての生活の質の向上のために、その活動の制限を除去又は軽減することを基盤として、障害のある人が障害のない人と同じようにスポーツや文化活動を楽しむことができる機会を提供していくことが重要である。このため、障害者全体のスポーツの振興を図る体制の整備を行っていくことが求められている。



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