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第1部 生涯にわたり個人の自立を支援する厚生労働行政

はじめに 〜 豊かさの中で国民が求める「自立」 〜

 今日の我が国における個人をとりまく状況をみると、社会経済の面においても、また、個人の意識の面においても、大きな変化の時期を迎えていると思われる。
 すなわち、少子高齢社会、安定経済成長時代の到来等を背景として、世帯構造や家族の機能、雇用慣行がいずれも大きく変化し、個人が家族や職場など一つの「場」に全面的に帰属していくことが困難となりつつあり、一人一人の努力が求められてきている。一方、個人の意識の中でも、自ら人生設計を行い、それに適合した自己実現の場を望む志向が高まってきている。
 このような状況の下、全ての人が社会との良好な関係を保ちつつ、自己の能力を最大限に発揮し、個性を活かして生きていくことが個人の人生の充実と社会の活性化につながると考えられる。このためには、家族・職場・地域社会等の複数の「場」とバランスよく関わりを持っていくことが重要であるものと考えられる。
 また、これらの「場」を通じて個性を活かして生きるためには、これを支える基盤として、個人の心身の自立、経済的自立を確保しなければならないが、心身の状況や置かれた環境は人によってさまざまであり、これらの自立の達成を支援するセーフティネット(安全網)としての社会保障制度の役割も重要となっている。
 新たに発足した厚生労働省の基本的役割は、こうした個人の活動を生涯にわたり支援することにあると考える。

 本書では、今日の我が国における個人をめぐる社会状況の変化について分析するとともに、個人の生涯を通じた人生の充実と社会の活性化のために求められる支援のあり方について考察することとした。



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