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第2節 経済面での状況の変化

1 経済情勢の変化

○ 景気の低迷に加え、賃金における年功的要素が減少するなど個人の自立には厳しい局面が到来しており、個人は自覚と責任を持って自己の職業生活の設計を行うことが求められている。厳しい経済情勢の変化を背景として、国民は自己の将来の経済的安定に、少なからぬ不安を抱くようになってきており、家計収入の減少等を背景として、生活への満足感は低下している。


2 労働者の働く環境

○ 我が国の完全失業率は、最近では4%台後半まで上昇しており、特に若年層、高年層で高くなっている。有効求人倍率は、2000年は0.59倍と厳しい状況が続いており、特に高年層が低い値を示している。

○ 経済・産業構造の変化等に伴い、労働力の需給ミスマッチが大きくなるおそれがある。失業なき労働移動や年齢間のミスマッチ解消により、円滑な再就職が実現できるようにすることが求められる。

○ 失業期間は長期化し、世帯主の完全失業率は上昇傾向にある。また、非自発的な離職による失業者の割合は上昇しており、失業して再就職する場合にかかるコストも高まっている。

○ 個人が経済的な自立を図り、職業生活の全期間を通じた職業の安定を確保するために、労働者個人が職業生活設計を考え、自発的なキャリア形成を行っていくことが重要である。職業生活設計が今後必要であると考える労働者は多く、今後は、キャリア形成に係る主体的な取組みを育む体制を整備していく必要がある。

○ 企業における女性の雇用管理については、就労に係る男女差別的取扱いをなくしていくとともに、男女労働者間の事実上の格差の解消を目指し、ポジティブ・アクションを積極的に推進していくことが重要である。

図1-2-4 年齢階級別完全失業率の推移の図

図1-2-6 年齢間ミスマッチ指標の推移の図


3 高齢者の経済的な状況

○ 平均値でみる限り高齢者の経済力は現役世代と遜色のない水準にある。一方、個々の高齢者世帯の所得のばらつきは大きくなっているが、稼得所得が所得格差を生み出す1つの要因となっている。

○ 高齢者の「親子同居」に影響を与えている要因について分析すると、高齢者は経済的に困らないようにするために「親子同居」を行う傾向があることが示唆される。

○ 我が国においては高齢者の就業意欲が高いことが特徴である。多くの高齢者は経済的に困らないようにするために働いているが、年齢階級が高まると健康や生きがいのために働く傾向が強まる。就業によって自らの高齢期の生活を設計していく意欲は今後も高いと思われるが、高齢者雇用は厳しい状況にある。

○ 高齢者の離職理由をみると、非自発的なものが多く、円滑に高齢者が再就職できる環境整備が重要となっている。今後、高齢者が経済的に自立し、就業を通じてその知恵や経験を社会に還元できるよう、年齢にかかわりなく働ける社会を実現していく必要性は高まっている。

図2-2-5 65歳以上の労働力率の国際比較の図

4 障害者をめぐる状況

○ 障害者の雇用は進展はしているものの、実雇用率は法定雇用率より低く、障害者が所得を確保し、自立した生活を送ることが可能となるよう社会が支援していく必要がある。また、福祉的就労から雇用への移行を推進することも重要である。


5 その他社会的支援を必要としている人々をめぐる状況

○ 母子家庭について、今後、ニーズに応じた福祉サービスを提供しながら就労による自立の支援を適切に行っていくことにより、安心して子育てと就労を両立できるようにしていくことが重要である。

○ 近年、生活保護受給者が増加傾向にある一方、被保護世帯の総数に対する稼働世帯の割合が減少している。被保護世帯の自立を促し就労を推進していくために、公共職業安定所と福祉事務所の連携がより一層求められる。

○ ホームレスについては、社会的自立を果たすためのニーズを的確に捉え、ホームレスのタイプごとに雇用、福祉、住宅等各分野をとおして総合的に経済的自立を支援することが重要である。



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