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平成16年3月16日
厚生労働省食品安全部
南 監視安全課長
担当:渕岡、土井(内2477)

平成14年度食品からのダイオキシン類一日摂取量調査等の調査結果について



 我が国の平均的な食生活における食品からのダイオキシン類の摂取量の推計や個別食品における汚染実態を調査するため、従来より、国立医薬品食品衛生研究所を中心に調査を行い、その結果を公表してきたところですが、今般、平成14年度の調査結果がとりまとめられたので、お知らせします。
 平成14年度における食品からのダイオキシン類の一日摂取量は、1.49±0.65pg TEQ/kgbw/日(0.57〜3.40pgTEQ/kgbw/日)と推定され、耐容一日摂取量(TDI)4pgTEQ/kgbw/日より低く、一部の食品を過度に摂取するのではなく、バランスのとれた食生活が重要であることが示唆されました
 なお、本調査結果については本日開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において報告されました。






 本調査は、厚生労働科学研究費補助金(食品・化学物質安全総合研究事業)「ダイオキシンの汚染実態把握及び摂取低減化に関する研究」(主任研究者佐々木久美子国立医薬品食品衛生研究所食品部第一室長)において実施されたものです。







(別紙)

ダイオキシンの汚染実態把握及び摂取低減化に関する研究
(概要)


主任研究者 佐々木久美子 国立医薬品食品衛生研究所食品部第一室長

 目的
 ダイオキシン類の人への主な暴露経路の一つと考えられる食品について
(1) 平均的な食生活における食品からのダイオキシン類の摂取量を推計すること
(2) 個別の食品のダイオキシン類の汚染実態を把握すること
(3) 食品中のダイオキシン類測定の迅速化及び分析の精密化を図ること
(4) ダイオキシン類のリスク低減を図ること

 方法
(1)  ダイオキシン類の食品経由摂取量に関する研究(トータルダイエットスタディ)
 全国7地域の12機関で、それぞれ約120品目の食品を購入し、厚生労働省の平成12年度国民栄養調査の食品別摂取量表に基づいて、それらの食品を計量し、そのまま、又は調理した後、13群に大別して、混合し均一化したもの及び飲料水(合計14食品群)を試料として、「食品中のダイオキシン類測定方法ガイドライン」(平成11年厚生省生活衛生局)に従ってダイオキシン類を分析し、平均的な食生活におけるダイオキシン類の一日摂取量を算出した。
 なお、平成14年度はダイオキシン類摂取量への寄与が大きい食品群である10群(魚介類)、11群(肉類、卵類)及び12群(乳、乳製品)について、各機関が3セットずつ試料を調製し、それぞれについてダイオキシン類を測定した。
(2)  個別食品中ダイオキシン類濃度に関する研究
 個別食品として、国内産及び輸入食品合計158試料、並びに市販ベビーフード製品51試料について、(1)と同様にダイオキシン類を分析した。
(3)  食品中のダイオキシン類の迅速測定法及び分析の精密化に関する研究
 市販魚中のダイオキシン類の毒性等量を推測するスクリーニング法として、Ahイムノアッセイキットについて検討した。
 また、食品中ダイオキシン分析で汎用されている抽出法の一つであるアルカリ(水酸化カリウム水溶液)分解・ヘキサン抽出法の評価を行った。
(4)  ダイオキシン類のリスク低減に関する研究
 植物性食品成分のダイオキシン類毒性バイオアッセイ系への影響を、CALUXアッセイを用いて検討した。

 ダイオキシン類の調査項目
 従来通り、世界保健機構(WHO)が毒性等価係数を定めたポリ塩化ジベンゾーパラージオキシン(PCDD)7種、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)10種及びコプラナーPCB (Co-PCB)12種の合計29種。

 結果の概要
(1)  一日摂取量調査(トータルダイエットスタディ)
 食品からのダイオキシン類の一日摂取量は、1.49±0.65pgTEQ/kgbw/日(0.57〜3.40pgTEQ/kgbw/日)と推定された。この数値は、13年度の調査結果(1.63±0.71pgTEQ/kgbw/日)と比べ、ほとんど同レベルであり、日本における耐容一日摂取量(TDI)4pgTEQ/kgbw/日より低かった。
 なお、同一機関で調製した試料であっても、魚介類、肉類、卵類及び乳、乳製品類として採取した食品の種類、産地等の差により、ダイオキシン類の摂取量には約1.4〜3.2倍の差が生じることが分かった。

<表1 ダイオキシン類一日摂取量の全国平均年次推移>

(5年間の調査結果)
  平成10年度 平成11年度 平成12年度 平成13年度 平成14年度
一日摂取量
(pgTEQ/日)
100.3
(61.3〜138.4)
112.6
(59.5〜350.7)
72.66
(42.1〜100.5)
81.47
(33.3〜169.9)
74.45
(28.42〜169.82)
体重1kg当たりの
一日摂取量
(pgTEQ/kgbw/日)
2.01
(1.22〜 2.77)
2.25
(1.19〜 7.01) 
1.45
(0.84〜 2.01)
1.63
(0.67〜 3.40)
1.49
(0.57〜 3.40)
 数値は平均値、( )内は範囲を示す。なお、体重1kg当たりの一日摂取量は日本人の平均体重を50Kgとして計算している。


<表2 ダイオキシン類一日摂取量の地域別年次推移>

(単位:pgTEQ/kgbw/日)
地域 北海道
地区
東北地方 関東地方 中部地方
東北A 東北B 関東A 関東B 関東C 中部A 中部B
平成10年度 2.77 1.26 2.06 2.14 2.00 1.87
平成11年度 1.29 1.47 1.65 4.04 1.59 1.68 1.53 1.57
平成12年度 0.84 1.10 1.92 1.30 1.72 1.48 1.44 1.41
平成13年度 0.67 2.02 1.08 1.99 1.42 1.65
平成14年度 0.88
0.94
1.44
1.16
1.46
2.05
1.46
2.01
2.76
1.34
2.33
3.40
0.90
1.17
1.51
1.40
1.67
1.93

地域 中部地方 関西地方 中国四国地方 九州地方
中部C 関西A 関西B 関西C 中四国A 中四国B 中四国C 九州A 九州B
平成10年度 2.03 2.72 1.22 1.99
平成11年度 2.42 7.01 1.79 1.89 3.59 1.48 1.84 1.19
平成12年度 1.80 2.01 1.43 2.01 0.98 1.40 1.55 0.86
平成13年度 1.53 1.33 2.00 0.88 1.60 3.40
平成14年度 0.62
0.68
1.28
0.96
1.39
2.75
1.40
1.78
2.02
0.79
0.98
1.22
0.73
1.54
2.12
0.57
1.18
1.81
(注)  平成14年度調査において各地方でのサンプリングを実施した自治体は以下のとおり。なお、数値は各地方毎の食品別一日摂取量を用いて換算されたものである。表の左から、北海道地方:北海道、東北地方:宮城県、関東地方:埼玉県、東京都、横浜市、中部地方:石川県、名古屋市、関西地方:大阪府、兵庫県、中四国地方:山口県、香川県、九州地方:福岡県

 
(2)  個別食品中のダイオキシン類濃度調査
 個別食品の測定結果は別添のとおりであった。
 なお、ベビーフードについては、平成13年度の調査結果を参考に、ダイオキシン類濃度が比較的高かった動物性食材を含むものを主に51品目を選択し、調査を行った結果、14品目が0.001pgTEQ/g未満であり、0.010pgTEQ/gを超えたのは21品目であった。魚を含むベビーフードからは、比較的高い濃度のダイオキシン類が検出された。

(3)  食品中のダイオキシン類の迅速測定法及び分析の精密化に関する研究
 市販魚中のダイオキシン類の毒性等量を推測する測定法としてAhイムノアッセイキットの検討を行った結果、従来法(HRGC/HRMS分析)と良好な相関が得られた。本法は、従来法よりコストが安く(1検体あたり数万円)、簡便(6時間で測定)であることから、スクリーニング法として適した性質を有していた。しかし、操作ブランク値が高いため、低濃度汚染試料の数値化が困難であることが示唆された。
 また、本アルカリ分解・ヘキサン抽出法を用いた結果、魚・乳製品中のダイオキシン類を高い信頼性で定量可能であることが、添加回収試験、他抽出法との比較及び認証値つき試料の分析から示唆された。本法は、特別な器具を必要とせず、操作が簡単であることから、食品中のダイオキシン類分析において有用な方法であると考えられた。

(4)  ダイオキシン類のリスク低減に関する研究
 植物性食品成分の大部分はダイオキシン類毒性バイオアッセイ系へ影響を示さなかったが、大豆イソフラボンなど、いわゆる植物エストロゲンといわれるものの一部に、高濃度でアッセイ系の活性化が認められた。

以上



【用語説明】

ダイオキシン類:
  ダイオキシン及びコプラナーPCB

ダイオキシン:
  ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD) ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)

コプラナーPCB(Co-PCB):
  PCDD及びPCDFと類似した生理作用を示す一群のPCB類

トータルダイエットスタディ:
  通常の食生活において、食品を介して化学物質等の特定の物質がどの程度実際に摂取されるかを把握するための調査方法。飲料水を含めた全食品を14群に分け、国民栄養調査による食品摂取量に基づき、小売店等から食品を購入し、必要に応じて調理した後、各食品群ごとに化学物質等の分析を行い国民1人あたりの平均的な1日摂取量を推定するもの。

TEF(毒性等価係数):
  ダイオキシン類は通常混合物として環境中に存在するため、様々な同族体のそれぞれの毒性強度を、最も毒性が強いとされる2,3,7,8-TCDDの毒性を1とした毒性等価係数(TEF:Toxic Equivalency Factor)を用いて表す。なお、今回は1997年にWHOで再評価された最新のTEFを用いている。

TEQ(毒性等量):
  ダイオキシン類は通常混合物として環境中に存在するので、摂取したダイオキシン類の毒性の強さは、各同族体の量にそれぞれのTEFを乗じた値を総和した毒性等量(TEQ:Toxic Equivalent Quantity)として表す。

TDI(耐容一日摂取量):
  長期にわたり体内に取り込むことにより健康影響が懸念される化学物質について、その量まではヒトが一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断される一日当たりの摂取量。ダイオキシン類のTDIについては、1999年6月に厚生省及び環境庁の専門家委員会で、当面4pgTEQ/kgbw/日(1日に体重1kg当たり4pgTEQの意味。体重50kgの人であれば、4pgTEQ×50kgで計算し、TDIは200pgTEQとなる。)とされている。

Ahイムノアッセイ
  ダイオキシン類の毒性発現にはAh受容体(Ah R: Aryl hydrocarbon Receptor)とARNT(Ah Nuclear Translocator)と呼ばれるたんぱく質の関与が指摘されており、Ahイムノアッセイはこのダイオキシン類の毒性発現メカニズムをELISAプレート中に形づくり、ダイオキシン類の検出を可能にした新しい分析法である。



別添

表1 平成14年度 食品中のダイオキシン類の濃度 (pgTEQ/g)
食品 産地 ダイオキシン類 (pgTEQ/g)
PCDD/Fs Co-PCB Total
魚介類 いか 輸入 0.002 0.024 0.026
いかなご 国産 0.275 0.442 0.716
うなぎ 国産 0.227 0.375 0.602
うなぎ 国産 0.239 0.660 0.899
かじきまぐろ 輸入 0.012 0.164 0.176
かたくちいわし 国産 0.384 0.565 0.949
かたくちいわし 国産 0.425 0.568 0.993
かつお 国産 0.200 0.718 0.917
かつお 国産 <0.001 0.048 0.048
かに(ずわい) 国産 0.209 0.376 0.585
かに(たらば) 国産 0.055 0.064 0.118
かれい(まこがれい) 国産 0.048 0.086 0.134
金目鯛 輸入 0.002 0.109 0.111
さけ 輸入 0.211 1.060 1.271
さけ 輸入 0.346 0.989 1.335
さば 国産 0.557 0.998 1.555
しらす 国産 0.270 0.564 0.835
しらす 国産 0.068 0.235 0.304
すずき 国産 0.669 4.288 4.958
すずき 国産 1.123 4.014 5.137
たこ 輸入 <0.001 0.002 0.002
たちうお 国産 1.064 3.847 4.910
たちうお 国産 3.751 15.188 18.939
たら 国産 0.002 0.065 0.067
たら 国産 0.002 0.026 0.028
にじます 国産 0.048 0.299 0.347
にじます 国産 0.110 0.218 0.327
ひらめ 国産 0.024 0.085 0.109
ぶり 国産 1.007 2.572 3.578
ぶり 国産 0.834 2.749 3.583
ぶり 国産 0.931 2.290 3.221
ほっけ 国産 0.276 0.323 0.599
真鯛 国産 0.084 0.324 0.408
わかさぎ 国産 0.020 0.157 0.176
わかさぎ 国産 0.072 0.425 0.497
あさり 国産 0.032 0.029 0.061
魚介類
加工品
赤貝味付缶詰 国産 0.543 0.205 0.748
赤貝味付缶詰 国産 0.450 0.177 0.628
いわし味付缶詰 国産 0.009 0.159 0.168
いわし味付缶詰 国産 0.025 0.196 0.221
いわし甘露煮 国産 0.244 0.426 0.670
いわし甘露煮 国産 0.285 0.441 0.726
かまぼこ 国産 0.002 0.014 0.016
魚肉ソーセージ 国産 <0.001 0.001 0.001
金目鯛開き 国産 0.090 0.283 0.373
金目鯛開き 国産 0.115 0.453 0.568
塩から 国産 0.102 0.217 0.319
塩さけ 輸入 0.489 1.457 1.946
塩さけ 輸入 0.329 0.478 0.807
塩さば 国産 0.185 0.455 0.640
塩さば 国産 0.960 0.966 1.927
塩さば 輸入 0.132 0.467 0.599
塩さば 輸入 0.190 0.352 0.542
ししゃも 国産 0.265 0.219 0.484
ししゃも 国産 0.044 0.248 0.292
ししゃも 輸入 0.530 0.730 1.260
ししゃも 輸入 0.362 0.527 0.889
するめ 国産 0.068 0.107 0.175
するめ 国産 0.051 0.075 0.126
煮干し 国産 0.334 0.917 1.252
煮干し 国産 1.735 2.922 4.657
ほっけ開き 国産 0.279 0.545 0.824
ほっけ開き 国産 0.515 0.980 1.494
めざし 国産 0.246 0.530 0.776
めざし 国産 0.136 1.010 1.146
鯨肉 くじら 輸入 <0.001 0.030 0.030
畜産食品 牛タン 国産 0.130 0.049 0.179
鶏皮 国産 0.050 0.078 0.127
鶏皮 国産 0.133 0.214 0.347
手羽先 国産 0.017 0.027 0.043
手羽先 国産 0.002 0.014 0.016
馬肉 国産 0.051 0.023 0.074
馬肉 国産 2.876 1.820 4.696
豚腸 国産 0.001 0.002 0.003
ソーセージ 国産 0.008 0.002 0.010
ベーコン 国産 <0.001 0.006 0.006
サラミ 輸入 0.105 0.005 0.109
コンビーフ 輸入 0.005 0.022 0.027
うずら卵 国産 0.015 0.036 0.052
うずら卵 国産 0.084 0.129 0.213
乳製品 チーズ(プロセス) 国産 0.032 0.033 0.066
ヨーグルト(プレーン) 国産 0.077 0.032 0.108
加工品 ドレッシング 国産 <0.001 <0.001 <0.001


食品 産地 ダイオキシン類(pgTEQ/g)
PCDD/Fs Co-PCB Total
穀類 米(精米) 国産 * <0.001 <0.001 <0.001
野菜 アスパラガス 国産   <0.001 <0.001 <0.001
アスパラガス 国産   <0.001 <0.001 <0.001
きぬさやえんどう 国産   <0.001 <0.001 <0.001
キャベツ 国産 * <0.001 <0.001 <0.001
キャベツ 国産   <0.001 <0.001 <0.001
キャベツ 国産   <0.001 <0.001 <0.001
きゅうり 国産   <0.001 <0.001 <0.001
小松菜 国産   0.100 0.001 0.101
小松菜 国産   0.001 <0.001 0.001
小松菜 国産   <0.001 <0.001 <0.001
小松菜 国産   0.001 <0.001 0.001
春菊 国産   <0.001 <0.001 <0.001
春菊 国産   <0.001 <0.001 <0.001
春菊 国産   <0.001 0.001 0.001
春菊 国産   0.003 <0.001 0.003
しいたけ 輸入   <0.001 <0.001 <0.001
しいたけ 輸入   <0.001 <0.001 <0.001
しめじ 国産 * <0.001 <0.001 <0.001
しめじ 国産   <0.001 <0.001 <0.001
しめじ 国産   <0.001 <0.001 <0.001
せり 国産   0.003 <0.001 0.003
せり 国産   0.001 <0.001 0.001
セロリ 国産   0.002 <0.001 0.002
セロリ 国産   <0.001 <0.001 <0.001
セロリ 国産   <0.001 <0.001 <0.001
セロリ 国産   <0.001 <0.001 <0.001
だいこん 国産   <0.001 <0.001 <0.001
たけのこ 輸入   <0.001 <0.001 <0.001
たけのこ 輸入   0.001 <0.001 0.001
トマト 国産   <0.001 <0.001 <0.001
なす 国産   <0.001 <0.001 <0.001
なす 国産   <0.001 <0.001 <0.001
にんじん 国産   <0.001 <0.001 <0.001
白菜 国産   <0.001 <0.001 <0.001
パセリ 国産   0.005 <0.001 0.005
パセリ 国産   <0.001 <0.001 <0.001
ブロッコリー 国産   <0.001 <0.001 <0.001
ブロッコリー 輸入   <0.001 <0.001 <0.001
山芋 国産 * <0.001 <0.001 <0.001
山芋(長芋) 国産   <0.001 <0.001 <0.001
れんこん 国産   0.001 <0.001 0.001
果実 オレンジ 輸入 * <0.001 <0.001 <0.001
オレンジ 輸入 * 0.001 <0.001 0.001
オレンジ 輸入 * <0.001 <0.001 <0.001
キウイフルーツ 輸入   <0.001 <0.001 <0.001
なし 国産   <0.001 <0.001 <0.001
なし 国産   <0.001 <0.001 <0.001
なし 国産   <0.001 <0.001 <0.001
加工食品 アーモンド 輸入 * <0.001 0.001 0.001
アーモンド 輸入 * <0.001 <0.001 <0.001
アーモンド 輸入   <0.001 <0.001 <0.001
うどん(ゆで麺) 国産 * <0.001 <0.001 <0.001
コーヒー豆(生鮮) 輸入 * 0.022 <0.001 0.022
コーヒー(粉末) 輸入 * 0.004 <0.001 0.004
ごま 輸入 * <0.001 <0.001 <0.001
ごま 輸入 * <0.001 <0.001 <0.001
食パン 国産 * 0.002 0.001 0.003
食パン 国産 * 0.001 0.002 0.002
食パン 国産 * <0.001 <0.001 <0.001
漬物(キムチ) 国産 * 0.001 <0.001 0.001
漬物(キムチ) 国産 * <0.001 <0.001 <0.001
漬物(キムチ) 国産 * 0.001 <0.001 0.001
漬物(たくあん) 国産   <0.001 <0.001 <0.001
漬物(キムチ) 国産   <0.001 <0.001 <0.001
ビスケット 国産 * 0.081 0.084 0.164
ビスケット 国産 * 0.001 0.001 0.002
プルーン(乾燥) 輸入 * <0.001 0.021 0.022
プルーン(乾燥) 輸入   0.001 <0.001 0.001
砂糖 国産   <0.001 <0.001 <0.001
国産   <0.001 <0.001 <0.001
海苔(乾海苔) 国産 * 0.118 0.030 0.148
海苔(乾海苔) 国産   0.172 0.013 0.185
海苔(乾海苔) 国産   0.186 0.013 0.199
乾ひじき 国産   0.096 0.037 0.133
*:平成13年度に試料採取したもの


表2 平成14年度 市販ベビーフード中のダイオキシン類の濃度 (pgTEQ/g)
食品 メーカー ダイオキシン類(pgTEQ/g)
PCDD/Fs Co-PCB Total
飲料 ほうじ茶 D <0.001 <0.001 <0.001
果実・野菜
加工品
ほうれんそう,小松菜 D <0.001 <0.001 <0.001
ほうれんそう I <0.001 <0.001 <0.001
混合野菜 I <0.001 <0.001 <0.001
ほうれんそう,小松菜 E 0.001 <0.001 0.001
ほうれんそう,ジャガイモ E 0.039 0.001 0.039
混合野菜 <0.001 <0.001 <0.001
ご飯もの 雑炊(ひらめ,野菜) D <0.001 <0.001 <0.001
ご飯(鮭,たまご) C <0.001 0.001 0.001
雑炊(たら,しらす) H <0.001 <0.001 <0.001
炊き込みご飯(たら,ひじき) H <0.001 <0.001 <0.001
雑炊(シーフード) <0.001 <0.001 <0.001
雑炊(鮭) <0.001 0.001 0.001
ドリア(白身魚) <0.001 0.031 0.031
炊き込みご飯(鮭,にんじん) B <0.001 0.001 0.001
雑炊(野菜,たら,鶏肉) B <0.001 0.011 0.011
雑炊(野菜,いわし) I <0.001 0.013 0.013
ドリア(野菜,かれい) I 0.002 0.029 0.031
麺,パスタ類 うどん(野菜) C <0.001 0.001 0.001
グラタン(鮭,マグロ,野菜) C <0.001 0.004 0.004
パスタ(野菜,鮭) B <0.001 0.002 0.002
パスタ(鮭) <0.001 0.011 0.011
グラタン(ひらめ,ほうれんそう) D 0.036 0.023 0.059
グラタン(にんじん,かに) I 0.015 0.025 0.040
グラタン(野菜,ホタテ) I <0.001 <0.001 <0.001
カレー
おかず類
カレー(ツナ,野菜) D <0.001 0.001 0.001
カレー(野菜) B <0.001 <0.001 <0.001
煮物(鯛,根菜) D <0.001 <0.001 <0.001
煮物(鮭,大根) C <0.001 0.012 0.012
煮物(いわし,野菜) C <0.001 0.023 0.023
煮物(野菜,たら) B <0.001 0.011 0.011
煮物(野菜,いわし) B 0.001 0.023 0.024
煮物(野菜,鮭) B <0.001 0.001 0.001
煮物(いわし,野菜) B 0.019 0.116 0.135
煮物(野菜,鶏肉) B <0.001 <0.001 <0.001
煮物(いわし,野菜) 0.005 0.024 0.029
煮物(大根,たら) <0.001 0.001 0.001
煮物(レバー,野菜) <0.001 <0.001 <0.001
煮物(鶏肉,レバー,野菜) <0.001 0.001 0.001
煮物(いわし,大根) 0.023 0.057 0.080
煮物(豚肉,野菜) <0.001 0.010 0.010
煮物(野菜,いわし) I <0.001 0.028 0.028
おやつ ビスケット(野菜) D 0.016 0.010 0.026
せんべい(煮干し) B <0.001 0.001 0.001
ボーロ(ほうれんそう) B 0.001 <0.001 0.001
ビスケット(チーズ) 0.014 0.012 0.027
ビスケット(たまご) 0.001 0.001 0.001
チーズ <0.001 0.001 0.001
ビスケット(ほうれんそう) I 0.024 0.020 0.044
クラッカー(野菜) G <0.001 <0.001 0.001
クラッカー(ほうれんそう,にんじん) E 0.039 0.036 0.076



厚生労働科学研究費補助金(食品・化学物質安全総合研究事業)
総括研究報告書

ダイオキシンの汚染実態把握及び摂取低減化に関する研究


主任研究者 佐々木久美子 国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室長


研究要旨
 ダイオキシン類による食品汚染実態および食事経由1日摂取量を把握するための調査研究を実施するとともに,ダイオキシン測定の迅速化,精密化およびダイオキシン類の摂取低減化を図ることを目的として,下記の5課題の研究を実施した.
 (1) ダイオキシン類のトータルダイエットによる摂取量調査
 (2) 個別食品のダイオキシン類汚染実態調査
 (3) ダイオキシン類の迅速測定法及び分析の精密化に関する研究
(3-1) 食品中のダイオキシン類測定迅速法の開発(Ahイムノアッセイ)
(3-2) 食品中のダイオキシン類分析におけるアルカリ分解・溶媒抽出法の評価
 (4) 食品中のダイオキシン類のリスク低減に関する研究
 (1)では,トータルダイエット調査を実施し,食事経由ダイオキシン類1日摂取量の全国平均が1.49±0.65 pgTEQ/kgbw/dayであることを明らかにした.
 (2)では,魚介類,畜産物,野菜・果実,およびそれらの加工品等158試料および市販ベビーフード製品51試料中のダイオキシン類を分析し,汚染実態を明らかにした.
 (3-1)では,市販魚中のダイオキシン類の毒性等量を推測するスクリーニング法として,Ahイムノアッセイキットの検討を行った.その結果,本法はダイオキシン類のスクリーニング法として有用であると考えられた.しかしながら,操作ブランク値が高く認められ,低濃度汚染試料の数値化が困難であることが示唆された.
 (3-2)では,食品中ダイオキシン類分析におけるアルカリ(水酸化カリウム水溶液)分解・ヘキサン抽出法の評価を行った.実試料に対する添加回収試験,ソックスレー抽出との比較試験および認証値つき試料の分析結果から,操作が簡便な本法が有用な方法であることが分かった.
 (4)では,植物性食品成分のダイオキシン類毒性バイオアッセイ系への影響を,CALUXアッセイ(ルシフェラーゼ遺伝子を導入した培養細胞を利用したレポータージーンアッセイ)を利用して検討した.95種の食品成分について検討した結果,大豆イソフラボンの他,一部のフラボノイド,スチルベン骨格を有するresveratrolなど,いわゆる植物エストロゲンといわれるものの一部に,高濃度でアッセイ系の活性化が認められた.


分担研究者
米谷民雄 国立医薬品食品衛生研究所
食品部長
飯田隆雄 福岡県保健環境研究所
保健科学部長
豊田正武 実践女子大学
天倉吉章 国立医薬品食品衛生研究所
食品部

A.研究目的
 本研究では,ダイオキシン類の食事経由1日摂取量および個別食品汚染実態を把握するための調査研究を行うとともに,ダイオキシン類測定の迅速化と精密化ならびにダイオキシン類の摂取低減化を図ることを目的として,次の5課題の研究を実施した.
(1)ダイオキシン類のトータルダイエット調査
(2)個別食品のダイオキシン類汚染実態調査
(3-1)食品中のダイオキシン類測定迅速法の開発(Ahイムノアッセイ)
(3-2)食品中のダイオキシン類分析におけるアルカリ分解・溶媒抽出法の評価
(4)食品中のダイオキシン類のリスク低減に関する研究

B.研究方法
分担研究(1)
 全国7地区の12機関で,それぞれ約120品目の食品を購入し,厚生労働省の平成12年度国民栄養調査の食品別摂取量表に基づいて,それらの食品を計量し,そのまままたは調理した後,13群に大別して,混合し均一化したものを試料とした.さらに第14群として飲料水を試料とした.なお,魚介類の10群,肉・卵の11群および乳・乳製品の12群は,各機関で魚種,産地,メーカー等が異なる食品で構成された各3セットの試料を調製した.これらについて,「食品中のダイオキシン類測定方法ガイドライン」 に従ってダイオキシン類を分析し,1日摂取量を算出した.

分担研究(2)
 国内産食品(125試料)および輸入食品(33試料)ならびに瓶詰め等の市販ベビーフード製品51試料について,「食品中のダイオキシン類測定方法ガイドライン」 に従ってダイオキシン類を分析した.

分担研究(3-1)
 魚試料をアルカリ分解後,クリーンアップを行い,PCDD/Fs及びnon-ortho PCBs分画をAhイムノアッセイキット(クボタ(株)製)により測定した.一方,高分解能GC/MSでPCDD/FsおよびPCBsを測定し,毒性等量値をもとめ,Ahイムノアッセイによる分析値と比較した.

分担研究(3-2)
 魚試料をアルカリ分解・溶媒抽出し,ダイオキシン類の添加回収率をもとめた.同一魚試料をアルカリ分解・溶媒抽出とソックスレー抽出で分析し,両者による定量値を比較した.さらに,ダイオキシン類濃度の認証値つき試料をアルカリ分解法で分析した値を認証値と比較した.

分担研究(4)
 植物性食品成分95種(フラボノイド類,タンニン類,サポニン類,テルペン類など)を試料とし,希釈した試料溶液をCALUXアッセイで測定し,アッセイ系の活性化能をダイオキシン(TCDD)によるそれと比較し,誘導等価係数として数値化した.

C.結果および考察
分担研究(1)
 ダイオキシン類の平均1日摂取量は1.49±0.65 pgTEQ/kgbw/day(範囲0.57〜3.40 pgTEQ/ kgbw/day)であった.これらの値は,平成13年度の調査結果(1.63 ± 0.71 pgTEQ/kgbw/day,範囲0.67〜3.40 pgTEQ/kgbw/day)とほとんど同じレベルであり,日本における耐容1日摂取量(4 pgTEQ/kgbw/day)より低かった.なお,同一機関で調製したTDS試料であっても,10〜12群に選択した食品の種類,産地等の差により,ダイオキシン類摂取量には約1.4〜3.2倍の差が生じることが分かった.
 1日摂取量はこの3年間横這いであることから,今後も調査を継続し,推移を見守る必要がある.

分担研究(2)
 鮮魚(31試料)から,0.028〜18.939 pgTEQ/g(平均1.862 pgTEQ/g),魚干物(16試料)から,0.292〜1.946 pgTEQ/g(平均0.910 pgTEQ/g)のダイオキシン類が検出された.馬肉(4.696 pgTEQ/g)を除く畜産食品と乳製品では,0.347 pgTEQ/g以下であった.植物性食品(76試料)中48試料では,ダイオキシン類濃度は0.001 pgTEQ/g未満であった.0.100 pgTEQ/g以上検出されたものは,小松菜(0.101 pgTEQ/g),ビスケット(0.164 pgTEQ/g),乾燥海苔およびひじき(0.133〜0.199 pgTEQ/g)の6試料だけであった.
 市販ベビーフード(51試料)中14試料では,0.001 pgTEQ/g未満であった.0.010 pgTEQ/g以上検出されたのは21試料であり,最も濃度が高かったものは0.135 pgTEQ/gであった.

分担研究(3-1)
 Ahイムノアッセイキットによる魚試料の分析値は,高分解能GC/MS分析によるPCDD/Fsおよびnon-ortho PCBs毒性等量値と良好な相関が得られた.さらに,mono-ortho PCBsを含めた総ダイオキシン類毒性等量に対しても相関は良好であった.本法は,安価で簡便にダイオキシン類測定が可能であるため,ダイオキシン類のスクリーニング法として有用であると考えられる.しかしながら,操作ブランク値が高いため,低濃度汚染試料の数値化が困難であることが示唆された.今後は,より詳細なダイオキシン類測定に関する評価を行い,信頼性を高めていく必要があると考えられる.

分担研究(3-2)
 魚試料に対するダイオキシン類の添加回収試験では,ほとんどの検体で良好な回収率(79-107%)が得られ,アルカリ分解によるダイオキシン類の分解は認められなかった.マグロでは,アルカリ分解によるOCDFの損失(回収率<61%)が認められたが,対応するクリーンアップスパイクをアルカリ分解前に加えることで,定量値への影響は防止することができた.魚試料のアルカリ分解・ヘキサン抽出とソックスレー抽出とでは,同等のダイオキシン類定量値が得られた.さらに,認証値つき試料の分析では認証範囲内の定量値が得られた.アルカリ分解は操作が簡便であることから有用な方法であると考えられる.

分担研究(4)
 大部分の化合物はCALUXアッセイに対して作用を示さなかったが,大豆イソフラボンの他,一部のフラボノイド,スチルベン骨格を有するresveratrolなど,いわゆる植物エストロゲンといわれるものの一部に,高濃度でアッセイ系の活性化が認められた.今回のデータからは,一部食品の過度の摂取を避けたバランスのとれた食事が重要であり,ダイオキシンのリスク低減化においても大切であるといえる.

D.結論
 5課題について研究し,下記の成果を得た.
(1)トータルダイエット調査により,ダイオキシン類の1日摂取量が1.49 ± 0.65 pgTEQ/kgbw/dayであることを明らかにした.
(2)一般食品およびベビーフード製品中のダイオキシン類を分析し,汚染実態を明らかにした.
(3-1)Ahイムノアッセイキットは,魚介類のダイオキシン類スクリーニング法として有用であると考えられる.しかし,操作ブランク値が高いので,低濃度汚染試料の数値化が困難であることが示唆された.
(3-2)アルカリ(水酸化カリウム水溶液)分解・ヘキサン抽出法は,特別な器具を必要とせず,操作が簡便であることから,食品中ダイオキシン類分析において有用な方法であると考えられた.
(4)植物性食品成分の大部分はダイオキシン類毒性バイオアッセイ系へ影響を示さなかったが,大豆イソフラボンなど,いわゆる植物エストロゲンといわれるものの一部に,高濃度でアッセイ系の活性化が認められた.

F.研究発表
1.論文発表
1)Tsutsumi, T*1, Amakura, Y*1, Sasaki, K*1, Toyoda, M*2, Maitani, T*1. Evaluation of an aqueous KOH digestion followed by hexane extraction for analysis of PCDD/Fs and dioxin-like PCBs in retailed fish. Analytical and Bioanalytical Chemistry, 375,792-798 (2003)
*1国立医薬品食品衛生研究所
*2実践女子大学
2)Amakura, Y.*1, Tsutsumi, T.*1, Nakamura, M.*2, Kitagawa H.*2, Fujino, J.*2, Sasaki, K.*1, Toyoda, M.*3, Yoshida, T.*4, Maitani, T.*1, Activation of the aryl hydrocarbon receptor by some vegetable constituents determined using in vitro reporter gene assay. Biol. Pharm. Bull., 26, 532-539 (2003).
*1国立医薬品食品衛生研究所
*2株式会社日吉
*3実践女子大学
*4岡山大学薬学部

2.学会発表
1)堤 智昭*1, 飯田隆雄*2, 堀 就英*2, 中川礼子*2, 飛石和大*2, 柳 俊彦*3, 中村宗知*3, 河野洋一*3, 内部博泰*3, 豊田正武*4, 天倉吉章*1, 佐々木久美子*1,米谷民雄*1:日本における市販食品中のダイオキシン類汚染.日本薬学会第123年会(2003.3)
*1国立医薬品食品衛生研究所
*2福岡県保健環境研究所
*3(財)日本食品分析センター
*4実践女子大学
2)堤 智昭*1,天倉吉章*1,佐々木久美子*1,豊田正武*2,米谷民雄*1:食品中のダイオキシン類分析におけるアルカリ分解の影響.第11回環境化学討論会(2002.6)
*1国立医薬品食品衛生研究所
*2実践女子大学
3)天倉吉章*1,堤 智昭*1,中村昌文*2,北川宏子*2,藤野潤子*2,佐々木久美子*1,豊田正武*4,吉田隆志*3,米谷民雄*1:植物性食品成分のアリル炭化水素レセプター活性化に関する検討.フォーラム2002:衛生薬学・環境トキシコロジー(2002. 10).
*1国立医薬品食品衛生研究所
*2株式会社日吉
*3岡山大学薬学部
*4実践女子大学


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