目次  前ページ  次ページ

9 化学物質・毒物劇物対策

(1)内分泌かく乱化学物質対策の推進

平成12年中の実施事項

○ 内分泌かく乱化学物質については、生体内においてホルモンの作用を模倣し、かく乱することによって、生殖系及び神経系に重大な障害を与えることが懸念されているが、どのような化学物質に内分泌かく乱作用があるのか等、未解明な部分が多く、厚生労働省では主として健康影響の観点から、国際的な枠組みや他省庁とも協力して、必要な検討を進めているところである。

○ 「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」の中間報告(平成10年11月)後の調査研究の成果を踏まえ、本年は9月及び12月に当該検討会を開催し、次の事項について検討を進めることで合意がなされた。

ア.逆U字効果の解明(低用量の作用・影響の有無)
イ.HTPS(超高速自動分析装置)を用いた対象物質の選定
ウ.ほ乳動物を用いたスクリーニング試験法の検討
エ.内分泌かく乱作用の同定・確認のための詳細試験方法
オ.試料の採取・分析方法の確立
カ.暴露情報等の収集及び解析
キ.リスクコミュニケーションの充実

○ 経済協力開発機構(OECD)が策定した試験プロトコール(子宮肥大反応試験、去勢雄ラット反応試験、改良型28日間反復投与毒性試験)に基づき、諸外国と分担し、内分泌かく乱作用が疑われる物質に関する実証試験に着手した。
(注)平成12年度予算
 内分泌かく乱化学物質スクリーニング試験実施事業(31,847千円)

○ 平成12年度厚生科学研究において下記の調査研究を実施した。

ア.内分泌かく乱化学物質の人の健康への影響のメカニズム等に関する調査研究(H10〜12)

イ.内分泌かく乱物質等の生活環境中の化学物質による健康影響 −日本人正常男子の生殖機能に関する総合的研究(H10〜12)

ウ.内分泌かく乱化学物質等、生活環境中化学物質による人の健康影響についての試験法に関する調査研究(H10〜12)

エ.内分泌かく乱物質の小児、成人等の汚染実態および暴露に関する調査研究(H11〜13)

平成13年以降の予定事項

○ 12月に開催された「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」において合意がなされた上記各課題に従い具体的な検討を進める。

○ スクリーニング試験実施事業についても当面5年間を目途に順次実施する予定。

都道府県への要請

○ 上記検討結果や試験結果については適宜情報提供を行っていく予定であるので、各都道府県におかれては関係各方面への周知等ご協力をお願いする。

(2)ダイオキシンの耐容1日摂取量(TDI)の見直し

平成12年中の実施事項

○ 平成11年6月に公表された「ダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)に ついて」に基づき、ダイオキシン類のTDIは4pg-TEQ/kg/日となっているが、この数値自体はダイオキシン類に関する既存の主要な科学的知見を基に算出された当面のものであるとしている。

○ また、TDIを5年後程度を目途に再検討することとしている世界保健機関 (WHO)専門家会合報告書(平成10年)も踏まえ、我が国のTDIの再検討の必要性について、平成12年9月に「生活環境審議会・食品衛生調査会ダイオキシン類健康影響評価特別部会」を開催し、検討を行った。

○ 本部会では、米国環境保護庁における再評価結果やダイオキシン2000等の国際学会における新たな科学的知見を基に議論を行い、現時点においては、我が国におけるTDIの早急な再検討の必要性を示唆する知見は得られなかった旨の中間報告(平成12年12月)が取りまとめられた。

平成13年以降の予定事項

○ ダイオキシン類に関する新たな科学的知見の収集を進めるとともに、国際的 な動向を踏まえつつ、環境省とも連携しつつ、引き続きTDIの再評価の必要性に係る検討を行う予定。

○ ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDDs)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)に比較して、科学的知見の集積が少ないコプラナーPCBや臭素系ダイオキシン類に関しての調査研究を推進する予定である。

都道府県への要請

○ 以上のような成果について情報提供を行っていく予定であるので、各都道府 県におかれてはその結果を積極的に各種施策に活用されたい。

(3)シックハウス対策の推進

平成12年中の実施事項

○ 平成12年4月より「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」が 開催され、これまでに5回にわたる検討が行われ、中間報告書がとりまとめられた。主な内容は下記の通りである。

ア.トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス及びフタル酸ジ-n-ブチルの室内空気中濃度の指針値の策定
(次項表1参照)

イ.平成9年に指針値が策定されたホルムアルデヒド及び上記物質の標準的測定方法の策定

ウ.総揮発性有機化合物(TVOC)の空気質指針値策定の考え方及び暫定目標値(400μg/m3)の策定

エ.室内空気質指針値の適用範囲(住居、オフィスビル等の全ての室内空間)

オ.室内空気中化学物質に関する測定機器等リスト

○ また、厚生科学研究により室内汚染や健康影響の実態調査等のシックハウス症候群に関する研究を実施した。

平成13年以降の予定事項

○ 中間報告書において策定すべきとされた4物質(テトラデカン、ノナナール、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン)について指針値を策定する。

○ シックハウス対策の一環として、保健所等における相談や測定依頼に対応するためのマニュアルの作成を進める。

都道府県への要請

○ これまでに策定した指針値やその他の「シックハウス(室内空気汚染)問題に関 する検討会」における検討事項については、各都道府県、政令市、特別区あて通知し、関係各者への周知と生活環境対策の推進への活用等をお願いしているところである。今後とも適宜情報提供を行うこととしているので引き続きご協力をお願いする。

表−1

揮発性有機化合物 毒性指標 室内濃度指針値*
ホルムアルデヒド ヒト暴露における鼻咽頭粘膜への刺激 100μg/m3
(0.08ppm)
トルエン ヒト暴露における神経行動機能及び生殖発生への影響 260μg/m3
(0.07ppm)
キシレン 妊娠ラット暴露における出生児の中枢神経系発達への影響 870μg/m3
(0.20ppm)
パラジクロロベンゼン ビーグル犬暴露における肝臓及び腎臓等への影響 240μg/m3
(0.04ppm)
エチルベンゼン マウス及びラット暴露における肝臓及び腎臓への影響 3800μg/m3
(0.88ppm)
スチレン ラット暴露における脳や肝臓への影響 220μg/m3
(0.05ppm)
クロルピリホス 母ラット暴露における新生児の神経発達への影響及び
新生児脳への形態学的影響
1μg/m3
(0. 07ppb)
但し、小児の場合は、
0.1μg/m3
(0.007ppb)
フタル酸ジ-n-ブチル 母ラット暴露における新生児の生殖器の構造異常等の影響 220μmg/m3
(0.02ppm)
*両単位の換算は、25゜の場合による

(4)毒物劇物対策

現状

○ 毒物及び劇物については、各都道府県、保健所設置市及び特別区に置かれた 約3,400名の毒物劇物監視員が、毒物及び劇物取締法に基づき、毒物劇物営業者、特定毒物研究者及び業務上取扱者について、(1)登録・許可・届出状況、(2) 製造・販売、取扱場所の状況、(3)譲渡・交付手続き、(4)表示の適否、(5)盗難紛失の防止措置等の監視を行うとともに、貯蔵、運搬、廃棄に関する技術基準等 を遵守するよう指導を行っている。

○ 平成11年度には、登録・届出・許可施設99,403施設のうち延べ51,818施設(登録・届出・許可施設に対する検査率52.1%)及び届出の不要な施設のうち 6,357施設、合計58,175施設に対して立入検査を行った結果、5,412施設におい て違反が発見されており(立入検査に対する発見率9.3%)、改善方指導を行 っている。

○ 毒物劇物による保健衛生上の危害の防止措置を実施する際に必要な毒物劇物に係る情報を円滑に入手できるよう、本年1月1日以降、毒物劇物営業者が、 毒物又は劇物を販売し、又は授与するときは、当該毒物又は劇物の性状及び取 扱いに関する情報(いわゆるMSDS)を提供しなければならないこととした。

都道府県等への要請

○ 毒物又は劇物の性状及び取扱いに関する情報の提供の義務化について、制度 が円滑に運用されるよう、御配慮をお願いする。


トップへ
目次  前ページ  次ページ