10.麻薬・覚せい剤等対策
(1)第三次覚せい剤乱用期と薬物乱用対策推進本部
現状 |
○ 我が国における薬物事犯は、覚せい剤事犯が約9割を占め、平成7年以降覚せい剤による検挙者は1万7千人を継続して超え、平成11年においては18,491人と依然高い水準で推移している。
○ 覚せい剤の押収量は、平成11年では約2トンと過去5年間(平成6年〜10年)の合計を超え、史上最高量を記録し、平成12年においても、覚せい剤の押収量は1トンを超える見込みである。
○ 覚せい剤事犯における未成年の検挙者数は、平成11年には1,003人(うち中学生24人、高校生81人)で、依然高い水準で推移している。
○ 平成11年の1月〜11月期と、平成12年の同期を比較すると、中学・高校生の検挙者が99名から147名へと1.5倍近く増加するなど、青少年の間に覚せい剤乱用が広がっている。
○ 青少年の間で薬物乱用に対する警戒感や抵抗感が薄れ、薬物乱用が広がっているなど、「第三次覚せい剤乱用期」の深刻な情勢が続いている。
○ 薬物乱用対策推進本部が策定した「薬物乱用防止五か年戦略」に基づき、関係省庁が連携し、各種の薬物乱用対策を進めており、厚生労働省においては、取締りの強化、啓発活動の充実、再乱用防止対策の推進、国際協力の推進などの各種施策に総合的に取り組んでいる。
(参考)
(単位:人) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2.主な薬物の押収量
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3.覚せい剤事犯における未成年検挙者の推移
(単位:人) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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4.覚せい剤事犯における直近の傾向
平成11年(1月〜11月) | 平成12年(1月〜11月) | |
検挙者数 (人) | 17,140 | 17,912 |
うち未成年者(人) | 950 | 1,086 |
うち中学生(人) | 21 | 51 |
うち高校生(人) | 78 | 96 |
押収量(s) | 1,847.6 | 946.8 |
都道府県への要請 |
○ 各都道府県に設置されている薬物乱用対策推進地方本部においても、国の取組を 踏まえて啓発活動の充実、再乱用防止対策の推進等について、効果的・積極的な取 組をお願いする。
(2)麻薬・覚せい剤等の取締りと適正管理
現 状 |
○ 最近の覚せい剤事犯の特徴は、暴力団に加え、一部の来日不良外国人による事犯 数の増加や検挙者の国籍が多様化している。また、携帯電話やインターネットを用 いての密売など、複雑かつ巧妙化しているとともに、使用方法が「注射」から手軽 な「あぶり」といったことへ移行している。
○ 省庁再編により地区麻薬取締官事務所は、地方厚生(支)局麻薬取締部へ改組されたが、麻薬取締部長の指揮のもと不正薬物の捜査体制については、何ら変更はない。
○ 病院・診療所及び薬局における向精神薬の盗難事故件数は、平成11年には73件(前年44件)と増加しており、麻薬、向精神薬、覚せい剤原料等の製造業者、卸売業者、医療施設、研究施設等に対する各都道府県の麻薬取締員等による立入検査等は、正規薬物の不正ルートへの横流れを防止する上で重要となっている。
都道府県への要請 |
○ 各都道府県におかれている麻薬取締員について、麻薬取扱者等への立入検査に加え、麻薬取締についても積極的な対応をお願いしたい。
○ 麻薬取締官が行う捜査に当たり、情報提供や協力捜査についても引き続き協力をお願いしたい。
○ 都道府県の麻薬取締員等により実施されている薬局、医療機関等の麻薬取扱者等への指導監督については、近時の向精神薬等を用いた犯罪の発生も踏まえ、一層の管理徹底をお願いしたい。
(3)啓発活動の充実
平成12年度補正予算、平成13年度予算案での対応 |
(1) 薬物乱用防止キャラバンカーの増設等
薬物乱用防止キャラバンカー事業((財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター管 理)の平成11年度実績(約1千カ所の学校等で啓発活動展開)を踏まえ、平成12年度の補正予算により3台の増設等(新規2台、買い換え1台)を実施し、平成13年度から全国8台体制となる予定。
(2) テレビスポット等を活用した広報啓発
平成12年度補正予算において、中学1・2年生と小学校高学年(5・6年生)の保護者向け啓発用読本の作成及びテレビスポットによる啓発(年末から3月まで の間、音楽プロデューサー「小室哲哉」氏の出演による薬物乱用防止のテレビスポ ットが全国ネットにより放映される予定。)が認められた。
(3) 全国的な麻薬・覚せい剤乱用防止運動の実施
「ダメ。ゼッタイ。」普及運動は、2001年以降も継続して実施する予定。また、麻薬・覚せい剤乱用防止運動については、平成13年度予算案において、地区大会経費の増額を計上。
(4) 薬物乱用防止指導員の活動推進
平成13年度予算案において、中学・高校等において開催される「薬物乱用防止 教室」に講師として派遣できる、地域の中心的な指導員を養成するための研修経費 を計上。
都道府県への要請 |
○ 全国の各地域で、薬物乱用防止キャラバンカーや啓発用読本等の啓発資材を活用 するとともに、全国的な麻薬・覚せい剤乱用防止運動等を実施する等、効果的な啓 発活動の取組をお願いする。
○ 薬物乱用防止指導者養成研修事業にかかる平成13年度予算案は、全都道府県を 対象とするものではないが、学校等へ派遣できる地域の中心的な指導員と成り得る 薬物乱用防止指導員の、研修会参加への協力をお願いする。
(4)再乱用防止対策の充実
現状 |
○ 薬物犯罪の大きな特徴は、再犯性が高いことであり、本人の再乱用を防止するの みならず、新たな薬物乱用者を作らないという意味においても、薬物依存の治療と 社会復帰への取組を行い、再乱用の防止対策を充実することが必要である。
○ 平成11年から、全国の精神保健福祉センターにおいて、(1)技術指導及び技術援 助、(2)薬物関連問題に関する知識の普及、(3)薬物関連問題に関する家族教室の開催、 (4)個別相談指導を行うことを内容とする「薬物関連問題相談事業」を実施すること とした。
都道府県への要請 |
○ 各都道府県及び薬物乱用対策推進地方本部におかれては、引き続き本事業の円滑 な推進に努められ、保健所、精神保健福祉センター、医療機関、地方厚生局麻薬取 締部、警察等の関係機関間における薬物乱用・依存に関する相談・指導業務ネット ワークの整備をお願いする。
○ 「薬物関連問題相談事業」に取り組んでいない都道府県等においては、地域の薬 物乱用の実情に即して本事業を活用するなど、再乱用の防止対策の充実に努められ たい。
(5)国際協力の推進
現 状 |
○ 昨年7月の沖縄サミットにおいて、世界的に拡大している覚せい剤乱用問題が議 論されたことを受け、12月に宮崎県及び宮崎市の御協力を得て「G8薬物専門家 宮崎会合」が開催され、覚せい剤及びその他の合成薬物対策・薬物原料物質の規制 に関して協議し、覚せい剤等の乱用防止や捜査技術分野における情報交換、協力を 推進し、規制、取締りも強化することについて合意された。
○ 「海外麻薬行政研修」((社)国際厚生事業団実施)及び「日米協力による開発 途上国薬物乱用防止啓発活動研修」((財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター実 施)が実施されており、平成12年は東京都、大阪府に御協力を得たところであり、 お礼申し上げたい。
(6)脱法ドラッグ対策
現 状 |
○ 近年、多幸感、快感等を高めるものとしてインターネット等で、「合 法ドラッグ」と称して販売されているものがあるが、これらは、薬事法 上の医薬品に該当するものが多く、行政としては「脱法ドラッグ」と呼 んでいる。これらは、麻薬等の薬物乱用の契機となることが危惧される ことから、従来より取締りを強化しているところである。
平成13年以降の予定事項 |
○ 近年における販売実態を踏まえ、平成13年度予算として、以下の対 策を講じるための経費を計上しており、今後、取締りの更なる強化を図 っていく予定である。
(1)インターネット上の広告監視の強化 | 128万円 |
(2)全都道府県での買い上げ調査の実施 | 572万円 |
都道府県への要請 |
○ 今般、全都道府県での買い上げ調査を行うこととしたので、特にこれ までに買い上げ調査を実施したことのない都道府県におかれては、本事 業の円滑な実施への協力方お願いしたい。
○ 買い上げ調査に基づき必要な措置を講じる等、監視指導の一層の強化 をお願いしたい。