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5.血液事業

(1)新たな血液事業等のあり方について

報告書の概要

○ 平成10年3月より中央薬事審議会企画・制度改正特別部会において、患者代表の方々も委員に加え、今後の血液事業の在り方について審議が行われ、昨年12月、報告書「新たな血液事業等のあり方について」がとりまとめられた。

○ 報告書においては、新たな血液事業等のあり方について、以下の方向性が示された。

ア 献血による血液製剤の国内自給の確立
・国は、血液製剤の中長期的な需給見通し等を内容とする「基本方針」及び毎年度の「献血確保目標量」を策定し、献血血液の計画的な確保を図る

イ 血液製剤の適正使用の推進
・血液製剤に係る標準的な使用の指針に基づき、血液製剤の適正使用の推進を図る

ウ 血液製剤の製造・供給体制
・原料血漿の配分に係る国の役割の明確化、透明性の向上等を図る(具体的な方策については、複数の見解を提示)

エ 血液製剤に係る安全監視体制
・国内外の安全性情報の収集・評価及び安全対策の実施が迅速かつ的確に行われる体制の構築を図る(具体的な方策については、複数の見解を提示)

オ その他
・院内採血の適正化、採血国表示の導入等

今後の取組み

○ 報告書において意見の一致をみている次の事項については、その実現に向けて作業に着手する予定。

ア 血液製剤の中長期的な需給見通しの策定

イ 標準的な使用の指針のない血液製剤に係る指針の策定

ウ 院内採血の際の問診等の健康診断のあり方等に関する指針の見直し

エ 採血国表示の導入

○ 報告書において意見が一致しなかった点については、意見集約に向け、まず厚生労働省において、日本赤十字社、患者代表などの関係者から、個別に意見を求めることを予定している。

(2)献血の推進・普及

現状

○ 少子高齢化社会の一層の進展により、血液製剤の使用量の増加が見込まれる一方で、献血の担い手である若年者層が減少することが予想されていることから、今後、若年者層を中心とした国民各層への成分献血、400ml 献血を主体とした献血の推進をより一層展開する必要がある。

都道府県への要請

○ 各都道府県においては、的確な採血計画の策定を行うなど管下市町村及び各血液センターと十分な連携を図りつつ、献血制度推進特別事業に係る国庫補助金の活用等により若年者層対策など効果的な献血推進運動を実施されたい。

○ また、献血思想普及活動を一層全国的な運動として展開することが需要であることから、献血推進運動に携わる関係者の協議の場として平成11年度に設置した「献血推進運動中央連絡協議会」の趣旨を御理解の上、積極的な活用をお願いする。

(3)原料血漿の確保

現状

○ 全ての血液製剤の国内自給の達成に必要な原料血漿150万Lを確保するため、毎年度、都道府県別原料血漿確保目標量を設定しその達成をお願いしてきているが、平成13年度の目標量は、101万Lと設定し、昨年10月の血液事業担当者会議において示したところである。

平成13年度以降の予定

○ 血漿分画製剤の国内自給に必要な原料血漿を確保するとともに、ウィンドウ・ピリオッド対策としてのクアランティン(検疫保管)の充実を図るうえで、若年者層を中心とする複数回献血を推進する必要があることから、献血者登録制度等の在り方を含め、複数回献血の具体的な推進方策の検討を行う予定。

都道府県への要請

○ 平成13年度の原料血漿確保目標量の確実な達成をお願いする。

(4)血液製剤の安全性確保対策の推進

現 状

○ 全な血液製剤を供給するためには問診や各種ウイルス等の検査の充実、製造工程の厳格な管理等が必要であることから、最近では次のような取り組みを進めている。

ア 「血漿分画製剤のウイルスに対する安全性確保に関するガイドライン」の策定(平成11年8月)

イ 輸血用血液製剤に関するHBV、HCV、HIVの検出精度を高めるため、NAT(核酸増幅検査)の導入(平成11年10月)

ウ 生物学的製剤基準を改正し、輸血用血液製剤及び血漿分画製剤の原料となる血液及び原血漿について、HBV、HCV、HIVのNAT(核酸増幅検査)を義務化

(注)平成13年3月以降製造又は輸入される製剤に適用。ただし、同年9月までに製造又は輸入される製剤にあっては、NAT未実施の旨表示により出荷を認める。

○ HIV検査目的の献血を防止するため、検査目的の献血の危険性の周知とともに、検査については保健所等を活用するように広く住民への呼びかけを行っている。

○ 自己血輸血については、医療機関における採血、保存等に当たって、専門的技術を有する血液センターの協力を得つつ、その普及に努めている。

平成13年以降の予定事項

○ HIV等検査目的の献血者の排除のための問診の強化策についての検討

○ NAT実施方法に関するガイドラインの策定

○ 保存前白血球除去の導入に関する検討

都道府県への要請

○ 各都道府県においては、引き続き、検査目的の献血の危険性等について広く住民へ呼びかけるとともに、自己血輸血について管下血液センターから医療機関への適切な支援が得られるよう特段の御協力をお願いする。

(5)血液製剤の適正使用の推進

現状

○ 平成11年度においては、血液製剤の適正使用を推進するため、次のような基準等の見直しを実施した。

ア 「新鮮凍結血漿・アルブミン・赤血球濃厚液の使用基準」を見直し、「血液製剤の使用指針」を策定

イ 「輸血療法の適正化に関するガイドライン」を見直し、「輸血療法の実施に関する指針」を策定

○ 各都道府県において、地域医療の代表者及び医療機関の管理者等の委員からなる血液製剤の使用に関する懇談会が設置され、多くの都道府県において、当該懇談会を通じて血液製剤の使用に係る問題点の整理が進んでいる。

都道府県への要請

○ 各都道府県においては、引き続き医師等の医療従事者を対象とした指針の説明会を行うとともに、二次医療圏の中核病院を対象とした専門家による個別説明会を実施し、これらの指針に基づく血液製剤の適正使用及び輸血療法の適正化に一層努めるようお願いする。

○ 特に適正使用の進んでいない都道府県においては、血液製剤の使用に関する懇談会の場などを活用して、調査・分析等による改善策の検討をお願いする。


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