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3.医薬品・医療用具の承認審査等

(1)医薬品・医療用具の承認審査

平成12年中の実施事項

(1) 審査体制等

○ 以下の取組により、平成12年4月以降に申請される新医薬品の承認審査期間 を現行の18か月から12か月に短縮した

ア.承認審査事務を専門的に行う医薬品医療機器審査センター(以下「審査センター」という。)を設置(平成9年7月)し、また、3か年計画で厚生本省、審査センター及び医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構の審査官等の倍増を図る。

イ.薬学、医学、獣医学、統計学等を専門とする審査官によるチーム審査の実施や、審査レポートの作成を通じて、審査の質の向上や責任の明確化を図る。

ウ.より効率的かつ十分な審査を行う観点から、中央薬事審議会(平成13年1月に薬事・食品衛生審議会に改組)の組織及び運営の見直しを実施(平成11年11月)。

○ 新医薬品の承認時点における有効性・安全性の評価等に関する十分な情報を迅速に医療関係者等に提供することにより、当該医薬品の適正使用を推進するため、全ての新医薬品について、審査報告書に当該医薬品の試験成績等をとりまとめた資料を加えた「新薬承認情報集」を作成し、承認後に公表している。(平成11年11月)

(2) 医薬品の承認状況

○ 平成12年は新医療用医薬品として新有効成分39成分を承認した。

○ 新医薬品の承認申請のための試験の標準的方法として、次のガイドラインを平成12年に公表した。

ア.含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドライン

イ.経口固形製剤の処方変更の生物学的同等性試験ガイドライン

ウ.バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価

エ.ヒト又は動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品の ウイルス安全性評価

オ.生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)製造用細 胞基材の由来、調製及び特性解析

カ.小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス

(3) 医療用具

○ 平成12年4月に医療用具の承認申請区分を、新医療用具、改良医療用具、 後発医療用具の3種類に分類し、平成12年は新医療用具として13品目を承 認した。

○ JISについては、医用電気機器安全、オージオメータ、コンドームの基準を改正し、それら基準の薬事法への取込みを行ってきた。

平成13年以降の予定事項

○ 医療用具の国際一般名称が制定されるのを受け、来年度より3年計画でその 導入を図る予定。

○ 薬事法第42条基準について、現在、医療用エックス線装置基準、視力補正 用コンタクトレンズ基準及び医療事故防止の観点から人工呼吸器の警報機能等 に関する基準の制定を検討中。

都道府県への要請

○ 近く制定される医療用具のリスクマネジメントに関するJISは承認審査上有 用なので、都道府県においても承認審査事務の参考にされたい。

(2)生物由来医薬品等の品質及び安全性確保対策

ヒト・動物由来の医薬品等の対策

○ ヒトや動物の細胞・組織から構成される医薬品や医療用具(細胞・組織利用 医薬品等)については、人工培養皮膚や人工培養軟骨、分離や増殖を行った幹 細胞、トランスジェニック動物を用いた移植用臓器などの開発が進展している が、これらの細胞・組織利用医薬品等については、

ア.品質及び安全性を確保するための特別の対策

イ.プライバシーの保護や同意取得、動物愛護等の倫理的妥当性の確保

が必要である。

○ こうした現状から、中央薬事審議会バイオテクノロジー特別部会において、 次の「基本的考え方」及び「指針」がまとめられた。

ア.「細胞・組織利用医薬品等の取扱い及び使用に関する基本的考え方」
・・・品質及び安全性の確保並びに細胞・組織の取扱いに関する科学的及び倫理的妥当性を確保するための方策

イ.「ヒト由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性確保に関する指針」

・・・特に開発の進展が著しいヒト由来細胞を加工した製品のガイドライン

○ 以上の「基本的考え方」及び「指針」に基づき、次のような製品の区分に従 い、安全対策を講ずることとした。

ウシ等由来医薬品等への対策

○ 最近の欧州におけるウシ伝達性海綿状脳症(BSE)の発生動向を踏まえ、ウシ等由来原料を用いて製造される医薬品、医療用具、医薬部外品及び化粧品について、品質及び安全性確保に関する一層の対策を講ずるために、昨年12月に製造業者等に以下の事項を指示。

(1) BSE発生国又はBSEリスクの高い国(表1参照)を原産国とする原料を使用しないこと。

(2) 上記(1)の国に限らず、次に掲げるBSE伝播のリスクが高いウシ等の部位を使用しないこと。

 脳、脊髄、眼、腸、扁桃、リンパ節、脾臓、松果体、硬膜、胎盤、脳脊髄液、下垂体、胸腺又は副腎

(3) 製品毎にウシ等由来原料の原産国、製造元、と殺所、処理方法、使用部位等の記録について、1ヶ月以内を目途に製造業者等の責任で自主点検を行い、これに基づき、3ヶ月以内に承認書の整備を行うこと。

(表1)

左欄 右欄
BSEが発生している国 英国、スイス、フランス、アイルランド、オマーン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ
BSEのリスクの高い国 アルバニア、オーストリア、ボスニア・ヘルチェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、チェコ、デンマーク、ユーゴスラビア、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、マケドニア、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スペイン、スウェーデン

都道府県への要請

○ ウシ等由来原料に関しては、BSEのリスクの高い国及びリスクの高いウシ等の部位を使用しない製品への切替えが速やかに行われるよう、製造・輸入業者を指導されたい。

○ ウシ等由来原料に関する承認書の記載整備及び原料の切替え等に伴う一部変更承認申請に関する進達及び都道府県知事承認品目に係る事務処理を円滑に行われたい。

○ ウシ等由来製品に限らず、ヒト又は動物由来原料を使用する医薬品等についても品質及び安全性確保のため、ヒト又は動物由来原料の由来等について「細胞・組織利用医薬品等の取扱い及び使用に関する基本的考え方」に基づき、製造・輸入業者が自主点検を行うよう指導されたい。

(3)第十四改正日本薬局方

平成12年中の実施事項

○ 日本薬局方については、科学技術の急速な進歩に対応するため、5年ごとに全 面改正するとともに、全面改正の間には追補による一部改正を2回ずつ行ってき たところである。

○ 現行の第十三改正日本薬局方は平成8年4月に施行されており、第十四改正日 本薬局方(案)については、昨年10月には中央薬事審議会日本薬局方部会、1 2月には常任部会で御審議いただき、改正についての答申をいただいている。

平成13年以降の予定事項

○ 第十四改正日本薬局方については本年3月の告示、4月1日の施行を目指して 作業中である。経過措置期間は1年半を予定しており、第十三改正の日本薬局方 は平成14年9月末まで有効の予定である。

○ また、今回の改正では、日本抗生物質医薬品基準収載品目の一部に限り、日本 薬局方へ新規収載する予定であるが、第十四改正日本薬局方第一追補の制定時(平 成14年3月目途)において、日本抗生物質医薬品基準収載品目を全て日本薬局 方へ収載すること及び当該基準の廃止を予定している。

都道府県への要請

○ 第十四改正日本薬局方施行(平成13年4月1日)後は、規格変更がある医薬品について、承認申請書の一部変更承認手続きを伴うこととなり、都道府県においては、進達事務等の申請手続きにご配慮願いたい。

(4)後発医薬品の品質確保対策

現状

○ 後発医薬品は、国民医療上一定の役割を果たしているが、経口固形剤の溶出性等その品質が不十分なものがあるのではないかとの指摘がある。このため、平成7年4月以降に申請された医療用の新内服用医薬品については、溶出規格の設定を行うこととし、当該医薬品の後発品についても、既承認品目(先発品)との有効成分の同一性に加え、溶出性の同一性についても確認した上で承認することとしている。

○ 平成7年4月以前に申請された内服用医薬品についても品質の信頼性を確保するため、平成10年度より平成16年度までの間に計画的に再評価を実施している。 既に、生産額構成比において約80%以上のものについて指定を行い、順次、溶出試験規格を策定し、再評価を行っており、平成16年度中に再評価の指定は終了したいと考えている。

○ 再評価にあたっては、国立医薬品食品衛生研究所及び10都府県(埼玉県、東 京都、神奈川県、富山県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県) の衛生研究所の御協力を得て溶出試験規格を策定しているところであり、お礼申 し上げたい。

○ なお、再評価の結果については次のとおりであり、その都度「医療用医薬品品 質情報集(日本版オレンジブック)」を公表している。

品質再評価結果について

年月日 成分数 規格数 品目数 承認整理品目数
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
平成11年 3月23日
平成11年10月 7日
平成12年 2月16日
平成12年 5月11日
平成12年 7月25日
平成12年10月12日
平成12年12月21日



13

10
16(14)
11
21
19
36
19
20
35
137
209
94
135
42
61
97
21
34
20
13


計(成分数は重複を除いた数) 65 161 775 111


平成13年以降の予定事項

○品質再評価の指定においては、下記のスケジュールに従い、順次、実施する予定。

薬効群 予試験指示 指定告示
第1回 繁用品   平成9年2月24日
第2回 繁用品   平成10年7月15日
第3回 血圧降下剤 平成10年8月7日 平成11年3月25日
第4回 消化性潰瘍用剤、その他の血液・体液用薬、
刺激療法剤
平成11年3月26日 平成11年7月15日
第5回 高脂血症用剤、代謝拮抗剤、その他の腫瘍用薬、合成抗菌剤、その他の化学療法剤 平成11年7月12日 平成11年10月18日
第6回 抗パーキンソン剤、その他の中枢神経用薬、他に分類されない代謝性医薬品、その他のアレルギー用薬 平成11年10月7日 平成12年1月12日
第7回 不整脈用剤、血管収縮剤、血管拡張剤 平成12年1月12日 平成12年4月14日
第8回 去たん剤、その他の消化器官用薬、その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む。)、その他の泌尿生殖器官及び肛門用薬、痛風治療剤、糖尿病用剤、アルキル化剤 平成12年4月10日 平成12年7月14日
第9回 鎮暈剤、主としてグラム陽性・陰性菌に作用するもの、主としてグラム陽性菌、マイコプラズマに作用するもの 平成12年7月3日 平成12年10月17日
第10回 解熱鎮痛剤 平成12年10月2日  
第11回 催眠鎮静剤、抗不安剤 平成12年12月1日  
第12回 抗てんかん剤、強心剤、肝臓疾患用薬 平成13年2月  
第13回 気管支拡張剤、卵胞ホルモン及び黄体ホルモン剤、ビタミンB剤(ビタミンB1剤を
除く)
平成13年4月  
第14回 鎮痙薬、その他の循環器官用薬、主として抗酸菌に作用するもの 平成13年6月  
第15回 利尿剤、利胆剤、解毒剤、抗腫瘍性植物成分製剤 平成13年8月  
16〜 精神神経用剤等約50薬効群    


都道府県への要請

○ 品質再評価の円滑な処理のため、申請期限後できるだけ速やかな進達に努めて いただきたいこと。また、業者が期限に遅れて申請し、又は申請を失念すること などのないよう適切指導をお願いしたい。

(5)承認審査に関する国際的調和の推進

現 状

(1) 医薬品

○ 医薬品規制の国際的調和については、「日米EU医薬品規制調和国際会議(I CH)」において、日、米、EUの規制当局及び産業界代表が参加して進めている。

○ これまでに45のガイドラインが作成され、平成12年11月に開催された 第5回会議(ICH5)においては、新医薬品の承認申請資料の様式に関するガイドライン「コモンテクニカルドキュメント(CTD)」が合意に至っている。

○ また、平成15年に第6回会議(ICH6)を日本で開催する予定であるが、新医薬品の市販後対策及びバイオテクノロジー等の新技術についてICHでの 議論を進めることが合意されている。

(2) 医療用具

○ 医療用具規制の国際的調和については、「医療用具規制国際整合化会合(GHTF)」において、日、米、EU、加及び豪の規制当局及び産業界代表が参加して進めている。

○ これまでに、「医療用具の基本要件」、「表示事項」、「基準の役割」等の文書が作成され、現在、「医療用具のクラス分類」、「承認申請に際し必要な資料概要」等について検討が進められている。

都道府県への要請

(1) 医薬品

○ 平成13年7月より、3地域同時にCTDに基づく、新医薬品の承認申請資料の受付を開始することを予定しているので、円滑な進達事務について十分配 慮されたい。

(2) 医療用具

○ 医療用具の国際ガイドラインについては、今後国内規制に活用していく方針 であるが、これらガイドラインの内容は、ホームページ「http://www.ghtf.org」 に掲載されているので都道府県においても参考にされたい。


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