調査結果
1 労働移動の状況 平成11年1年間に労働移動を行った常用労働者の延べ数は約 1,206万人で、在籍 常用労働者に対する比率でみた延べ労働移動率は 29.1%(前年 28.9%)となった。 労働移動を行った常用労働者のうち、入職者は約583万人、離職者は約623万人と なり、比率でみると、入職率は14.0%(同13.8%)、離職率は15.0%(同15.1%) となった。 入職超過率をみると、-1.0ポイント(同-1.3ポイント)となり、3年続けて離職 が入職を上回った(離職超過)が、離職超過幅は縮小した(第1図、第1表)。 (1)男女別入職・離職状況 入職・離職率を男女別にみると、男は入職率が11.7%(前年11.2%)、離職率 が12.4%(同12.3%)、女は入職率が17.7%(同18.1%)、離職率が19.1%(同 19.7%)となった。 前年と比べると、男は入職率が0.5ポイント、離職率が0.1ポイントそれぞれ上 昇し、女は入職率が0.4ポイント、離職率が0.6ポイントそれぞれ低下した。 入職超過率をみると、男は-0.7ポイント、女は-1.4ポイントで、男女とも離職 超過となった(第2図、第1表)。 (2)就業形態別入職・離職状況 入職・離職率を就業形態別にみると、一般労働者は入職率 11.1%(前年 11.4 %)、離職率12.7%(同13.0%)となり、前年と比べると入職・離職率いずれも 0.3ポイント低下した。 パートタイム労働者は入職率27.9%(同28.4%)、離職率25.9%(同27.8%) となり、前年と比べると入職率は0.5ポイント、離職率は1.9ポイントそれぞれ低 下したが、パートタイム労働者の労働移動は活発である。 入職超過率をみると、一般労働者は-1.6ポイントで離職超過、パートタイム労 働者は2.0ポイントで入職超過となった(第3図、第1表)。 (3)男女別・就業形態別入職・離職の状況 入職・離職率を男女別・就業形態別にみると、男は一般労働者が入職率10.1% (前年10.0%)、離職率11.0%(同11.2%)、パートタイム労働者が入職率38.2 %(同39.3%)、離職率35.4%(同37.1%)となった。女は一般労働者が入職率 13.5%(同14.7%)、離職率16.6%(同17.1%)、パートタイム労働者が入職率 25.3%(同25.9%)、離職率23.5%(同25.6%)となった。前年と比べると男の 一般労働者の入職率が0.1ポイント上昇したほかは、いずれも低下した(第1表)。 (4)パートタイム労働者の割合 パートタイム労働者の常用労働者に占める割合は17.4%(前年14.2%)、入職 者に占める割合は 34.6%(同29.2%)、離職者に占める割合は 30.0%(同26.1 %)となった。前年と比べるとそれぞれ 3.2ポイント、5.4ポイント、3.9ポイン トと大幅に上昇した。 これを男女別にみると、男は常用労働者に占める割合が 5.8%、入職者に占め る割合が19.0%、離職者に占める割合が16.5%、女は常用労働者に占める割合が 35.4%、入職者に占める割合が50.6%、離職者に占める割合が43.7%となった。 前年と比べると、男は入職者が4.3ポイント、離職者が3.9ポイント、女は入職者 が6.7ポイント、離職者が3.8ポイントそれぞれ上昇した(第4図、第2表)。 (5)産業別入職・離職状況 入職・離職状況を産業別にみると、入職者はサービス業、卸売・小売業,飲食 店がいずれも約174万人と最も多く、次いで製造業が約107万人、建設業が約55万 人などとなった。離職者は卸売・小売業,飲食店が約 179万人と最も多く、次い でサービス業が約175万人、製造業が約131万人、建設業が約58万人などとなった。 これらの産業について比率をみると、入職率はサービス業 16.5%(前年 18.2 %)が最も高く、次いで卸売・小売業,飲食店16.0%(同15.8%)、建設業14.2 %(同12.9%)、製造業10.3%(同9.1%)となった。前年と比べると、建設業、 製造業、卸売・小売業,飲食店が上昇し、サービス業が低下した。離職率はサー ビス業16.7%(同16.9%)が最も高く、次いで卸売・小売業,飲食店16.6%(同 17.1%)、建設業15.0%(同15.4%)、製造業12.7%(同12.4%)となった。前 年と比べると製造業が上昇し、サービス業、建設業、卸売・小売業,飲食店が低 下した。 入職超過率をみると、製造業が-2.4ポイントとなり離職超過となったのをはじ め、建設業が-0.8ポイント、卸売・小売業,飲食店が-0.6ポイント、サービス業 が-0.2ポイントといずれも離職超過となった(第5図、第3表)。 (6)企業規模別入職・離職状況 入職・離職率を企業規模別にみると、入職率は「1,000人以上」12.0%、「300 〜999人」 13.4%、「100〜299人」 14.7%、「30〜99人」16.1%、「5〜29人」 14.3%、離職率は「1,000人以上」 13.3%、「300〜999人」14.7%、「100〜299 人」15.8%、「30〜99人」16.3%、「5〜29人」15.7%となり、 入職率、離職率 とも概ね規模が小さくなるほど高い。 入職超過率をみると、「1,000人以上」「300〜999人」がいずれも -1.3ポイン ト、「100〜299人」 -1.1ポイント、「30〜99人」 -0.2ポイント、「 5〜29人」 -1.4ポイントとなり、いずれの規模でも離職超過となった(第4表)。 2 入職者の状況 (1)職歴別入職者の状況 入職者を職歴別にみると、転職入職者約347万人、未就業入職者約235万人(新 規学卒者約104万人、一般未就業者約132万人)となった。 これを在籍常用労働者に対する比率でみると、転職入職率は 8.4%(前年 8.3 %)、未就業入職率は 5.7%(同 5.5%)となり、前年と比べると転職入職率は 0.1ポイント、未就業入職率は0.2ポイントそれぞれ上昇した。 男女別にみると、男は転職入職率が7.5%(同 7.4%)、未就業入職率が4.2% (同3.8%)、女は転職入職率がが9.7%(同 9.6%)、未就業入職率が8.0%(同 8.5%)となった。 就業形態別にみると、一般労働者は転職入職率が7.1%(同7.3%)、未就業入 職率が4.1%(同4.1%)となり、前年と比べると転職入職率が 0.2ポイント低下 した。パートタイム労働者は転職入職率が14.6%(同13.9%)、未就業入職率が 13.3%(同14.5%)となり、前年と比べると転職入職率が 0.7ポイント上昇し、 未就業入職率が1.2ポイント低下した(第6図、第7図、第1表、第5表)。 (2)地域間移動の状況 入職者約 583万人のうち地域(全国10ブロック)間を移動して入職した者は、 約50万人となった。全入職者に占める割合は8.5%(前年7.8%)で、前年と比べ ると0.7ポイント上昇した。 流出入比率をみると、東北2.0倍、九州1.7倍、近畿1.6倍などで高く、北陸0.6 倍、北関東0.7倍などで低い(第6表)。 (3)転職入職者の状況 イ 年齢階級別状況 年齢階級別に転職入職率をみると、「20〜24歳」の13.4%が最も高く、次い で「19歳以下」「25〜29歳」がいずれも10.9%と30歳未満の各層で10%を超え て高く、一方「65歳以上」、「50〜54歳」、「55〜59歳」の各層では5%台と 低い。前年と比べると「65歳以上」が大幅に低下した。 男女別に前年と比べると、男は「55〜59歳」では 1.0ポイント上昇したが、 「20〜24歳」が2.0ポイント、「65歳以上」が1.1ポイントそれぞれ低下した。 女は 30歳代、40歳代でそれぞれ約 1ポイント上昇したが、「65歳以上」では 3.4ポイントの低下となった(第8図、第7表)。 ロ 賃金変動別状況 転職入職者の賃金変動別構成比をみると、賃金が前の勤め先と比べ「1割以 上の増加」であった者が 17.1%、「1割未満の増加」であった者が 13.0%、 「変わらない」者が36.7%、「1割未満の減少」であった者が10.6%、「1割 以上の減少」であった者が22.6%となった。 前年と比べると「増加」であった者の割合は30.1%(前年31.7%)となり、 1.6ポイントの低下、「変わらない」者の割合(同38.8%)は2.1ポイントの低 下、「減少」であった者の割合は 33.2%(同29.4%)となり、3.8ポイント上 昇した。 増加度合い(D.I.)をみると、概ね年齢が高くなるにつれ割合が低下し ている(第8表)。 ハ 就業形態間移動状況 転職入職者の就業形態間移動状況を前年と比べると、一般労働者から一般労 働者への移動割合が4.3 ポイント、パートタイム労働者から一般労働者への移 動割合が 1.4ポイントそれぞれ低下し、パートタイム労働者からパートタイム 労働者への移動割合が 5.1ポイント、一般労働者からパートタイム労働者への 移動割合が1.7ポイントそれぞれ上昇した(表1)。 ニ 産業間移動状況 第3次産業への転職入職者の割合が69.7%(前年68.7%)、第2次産業への 転職入職者の割合が30.3%(同31.3%)となり、第3次産業への転職入職者の 割合が上昇した。 産業間での移動割合をみると、第3次産業から第3次産業への転職入職者は 56.7%(同55.0%)、第2次産業から第2次産業への転職入職者は20.4%(同 20.3%)、第2次産業から第3次産業への転職入職者は 12.1%(同12.2%)、 第3次産業から第2次産業への転職入職者は9.5%(同10.0%)となった。前年 と比べると第3次産業間及び第2次産業間での転職入職者の割合が上昇し、第 3次産業から第2次産業へと第2次産業から第3次産業への転職入職者の割合 が低下した(表2、第9表)。 ホ 離職期間別状況 転職入職者の離職期間別構成比をみると、「15日未満」が25.0%と最も高く、 次いで「1カ月〜3カ月未満」24.4%、「6カ月〜1年未満」20.5%となり、前年 と比べると「3カ月〜6カ月未満」と「1カ月〜3カ月未満」で上昇した(表3)。 3 離職者の状況 (1)年齢階級別離職者の状況 離職率を年齢階級別にみると、「19歳以下」が38.0%と最も高く、次いで「60 〜64歳」35.1%、「20〜24歳」23.9%、「65歳以上」23.1%と、若年層及び高年 齢層で高くなった。 前年と比べると、「19歳以下」、「30〜34歳」などで上昇した一方、「65歳以 上」で大幅に低下した。 男女別にみると、男は「60〜64歳」が37.5%と最も高く、次いで「19歳以下」 33.9%、「65歳以上」23.3%となり、女は「19歳以下」が42.4%と最も高く、次 いで「60〜64歳」30.6%、「20〜24歳」27.7%となった。前年と比べると男女と も「19歳以下」で大幅に上昇し、「65歳以上」で大幅に低下した (第9図、第10表)。 (2)勤続期間別離職者の状況 離職者の勤続期間別構成比をみると、勤続「1年未満」が35.6%(「6カ月未 満」20.0%)と最も高く、次いで「2〜5年未満」19.3%、「10年以上」17.6%、 「1〜2年未満」14.1%、「5〜10年未満」13.2% となった。前年と比べると勤続 「1年未満」が1.1ポイント低下し、1年以上の各区分では上昇した。 職業別にみると「管理的職業従事者」では勤続「10年以上」が63.4%と最も高 く、また「専門・技術的職業従事者」と「事務従事者」では「2〜5年未満」がそ れぞれ28.3%、23.8%と最も高い。その他の職業では、勤続「1年未満」の割合 が最も高く、特に「サービス職業従事者」では49.6%と約5割を占めている (第11表)。 (3)離職理由別離職者の状況 離職者の離職理由別構成比をみると、「個人的理由」が65.8%(前年64.5%) で最も高く、次いで「経営上の都合」 11.1%(同10.0%)、「契約期間の満了」 10.7%(同 12.3 %)となり、前年と比べると、「個人的理由」、「経営上の都 合」の割合が上昇、「契約期間の満了」の割合が低下した。 これらを就業形態別にみると、一般労働者は「個人的理由」61.7%(前年62.6 %)、「経営上の都合」13.5%(同11.6%)、「契約期間の満了」10.6%(同11.2 %)となり、パートタイム労働者は「個人的理由」75.5%(同70.1%)、「契約 期間の満了」11.1%(同15.5%)、「経営上の都合」5.3%(同5.6 %)となった。 前年と比べると、一般労働者は「経営上の都合」が 1.9ポイント上昇し、「個人 的理由」が0.9ポイント、「契約期間の満了」が0.6ポイントそれぞれ低下し、パ ートタイム労働者は「個人的理由」が 5.4ポイント上昇し、「契約期間の満了」 が4.4ポイント、「経営上の都合」が0.3ポイントそれぞれ低下した。 (表4、第10図、第12表)。 4 上期・下期別移動状況 上期・下期別に移動状況をみると、入職率は上期 8.5%(前年8.5%)、下期5.5 %(同 5.2%)、離職率は上期 8.3%(同8.3%)、下期 6.7%(同6.7%)となり、 前年同期と比べると上期は入職率、離職率とも同水準、下期は入職率が 0.3ポイ ント上昇、離職率は同水準となった。下期の入職率が上昇傾向にある (第11図、第13表)。 就業形態別にみると、入職率は一般労働者が上期 7.1%(前年7.4%)、下期4.0 %(同4.0%)、パートタイム労働者が上期 15.2%(同15.5%)、下期13.0%(同 13.0%)となり、離職率は一般労働者が上期7.0%(同7.1%)、下期5.7%(同5.9 %)、パートタイム労働者が上期14.5%(同15.6%)、下期11.7%(同12.2%)と なった。前年同期と比べると一般労働者、パートタイム労働者とも入職率が下期で 同水準だったほかは低下した(第13表)。