タイトル:「1999年 海外労働情勢(海外労働白書)」の概要

発  表:平成12年6月21日(水)
担  当:労働省労働大臣官房国際労働課     
                 電 話 03-3593-1211(内線5132,5133)
                     03-3502-6678(直通)


 「海外労働情勢(海外労働白書)」は、諸外国の労働情勢全般に関する情報を整理・
分析し、広く提供することを目的として、各国の@経済及び雇用失業情勢、A賃金・労
働時間等の状況、B労使関係の動向等について労働省が毎年とりまとめ、公表している
ものである。
 本年は、「第1部 1999〜2000年の海外労働情勢」において、99年から2
000年初頭にかけての諸外国の労働情勢全般の動向をまとめている。また、「第2部
 欧米諸国の労働力需給調整システムの現状」では、イギリス、ドイツ、フランス、イ
タリア、アメリカ、カナダ及びオーストラリアを取り上げて、公共職業安定機関を中心
に、主要国の労働力需給調整システムの現状についてとりまとめた。

                                                                            
1999年海外労働情勢のポイント

第1部1999〜2000年の海外労働情勢

 1 アメリカ

  @ 景気拡大は長期の拡大が続き、特に、サービス業での雇用が伸びており、失業
   率は4%台前半の低水準で推移した。

  A 公共職業安定所のワンストップ・キャリアセンター化や職業訓練プログラムの
   統合等を実施した。


 2 イギリス

  @ 景気は回復に向かい、失業率は長期の低下傾向が続いた。

  A ニューディール政策を拡充し高齢者に対するプログラムを開始。また、民営職
   業紹介・労働者派遣事業について規則制定に向けた検討が行われた労働条件面で
   は、施行に係る事務の簡略化等を目的とした労働時間規則の改正、EU育児休業
   指令の国内法化、パートタイム労働に関する規則協議案(EU指令の国内化)発
   表が実施され、労使関係では、雇用関係法が制定され、EU欧州労使協議会指令
   の国内法化のための立法が行われた。


 3 ドイツ

  @ 景気は緩やかに回復し、失業率は引き続き高水準ながらも98年からは低下傾向
   で推移している。

  A 財政拡大から緊縮路線への転換が図られ、社会保障改革、税制改革、財政改革
   が進められることとなった。「雇用のための同盟」の政労使トップ会談が開始さ
   れ、養成訓練、税制、労働時間、賃金政策等の分野について政労使間での合意形
   成が図られた。


 4 フランス

  @ 景気は引き続き緩やかながらも拡大し、失業率は引き続き高水準ながらも98年
   からは低下傾向で推移している。

  A 時短を通じて雇用の維持・創出を図る週35時間労働制に係る第2法が成立し、
   同制度の法的な実施基盤が整い、2000年2月より実施された。


 5 韓国

  @ 景気は急速に回復し、98年以降上昇していた失業率は99年に入って低下した。

  A 労使関係では、教員労組法が施行され、小・中学校の教員については労働組合
   の結成が認められることとなった他、第2勢力である全国民主労働組合総連盟が
   合法的労働組合として認可された。


 6 中国

   景気の拡大に伴い就業者は増加しているが、都市部の失業率は上昇している。引
  き続き、国営企業改革等に伴う一時帰休者対策に力を入れている。


 7 その他のアジア諸国

   タイ、インドネシアでは景気の回復がみられるものの、失業率は通貨危機の発生
  前より高い水準となっている。



第2部 欧米主要国の労働力需給システムの現状

 1 概観

   各国において、公共職業安定機関は、広く国民にサービスを提供するとともに、
  深刻化する長期失業、若年失業等の解決の問題に対して就労支援を積極的に推進し
  ており、その果たす役割はますます高まっている。

  @ 各国において公共職業安定機関は情報提供、職業紹介、失業期間中の所得保障、
   雇用の助成等の業務を担っており、広く、国民全般にサービスを提供している。

  A 英、米等では、早くから民間職業紹介事業が認められてきたが、大陸ヨーロッ
   パ諸国も、90年代に入り相次いで民間職業紹介機関が認められるようになってき
   た。労働者派遣事業についても、国によって規制の程度は異なるものの、その利
   用は伸びてきている。

  B 近年、多くの国において、深刻化する長期失業、若年失業等の問題に対して、
   公共職業安定機関を通じた就労支援が積極的に推進されており、公共職業安定機
   関の果たす役割がますます高まってきている。

  C 公共職業安定機関における情報提供の手段としてのインターネットの活用への
   取組がみられることに加え、民間業者による職業情報の提供手段としてもインタ
   ーネットの利用が伸びている。


 2 公共職業安定機関の動向

   各国においては、公共職業安定機関のサービス向上の取組が行われている。

  @ 労働市場における需給調整機能の向上を目指し、また、積極的労働市場政策を
   より効率的に実施するため、各国においては、公共職業安定機関のサービス向上
   の取組を行っている。

  A 労働市場政策については全国斉一的な制度となっている国が多いが、地域の実
   情にあったサービスの提供体制の整備に向けた取組もみられる。例えば、カナダ
   では、州政府の要請による積極的労働市場政策に係る事務の移管が行われている。

  B まだ目立った動きではないものの、公共職業安定機関と民間労働力需給調整機
   関の協力体制の整備に向けた取組がみられる。例えば、イタリアでは、国の設立
   する情報システムにおいて民間機関も求人情報の提供が義務付けられることとな
   っている。


 3 インターネットを通じた労働力需給調整

   各国において、インターネット等情報システムの整備、これを通じた情報提供等
  が進んでいる。公共職業安定機関においてその業務遂行のためにインターネット等
  の活用を積極的に図っている国がみられるほか、民間業者によるインターネットに
  よる情報提供が拡大している国もある。

  @ アメリカ、カナダでは、求人数、アクセス数等も公共職業安定機関のサイトが
   圧倒的分量を誇っている。ドイツでは連邦雇用庁がインターネットを通じた求人
   情報の提供を開始して以来、求人を公共職業安定機関に届ける企業数が大幅に増
   加した。

  A 政府がその有する求人情報を提供するだけでなく、オーストラリアのように、
   広く民間労働力需給調整機関の有する情報も併せてインターネットによって提供
   している国もある。

  B 情報へのアクセスの機会を増やすため、公共職業安定機関内の他、ショッピン
   グセンター、駅等に端末の設置を進めている国もある。


 4 労働力需給調整システムの展望

   公共職業安定機関には、民間機関のみでは果たせない役割があり、また、積極的
  労働市場政策の視点からも、その重要性は今後更に高まっていくものと考えられる。
  民間の労働力需給調整機関についても、その特性を生かし十分な役割を果たすこと
  ができるようにすることが重要である。

  @ 公共職業安定機関は、求人者、求職者に対して無料のサービスを公平に利用で
   きるよう提供することにより、全ての国民に対して職業選択の自由を実質的に保
   証するための制度的基盤である。さらに、公共職業安定機関は、長期失業者や障
   害者等就職困難者に対する紹介など、民間労働力需給調整機関のみでは充足が困
   難な分野での役割が大きい。また、近年積極的労働市場政策の重要性が益々注目
   される中で、公共職業安定機関の重要性は今後更に高まっていくものと考えられ
   る。

  A 公共職業安定機関の機能を高めるための取組が各国で行われているが、労働市
   場全体のより一層の需給調整機能の強化のためには、今後、民間労働力需給調整
   機関についてもその特長を生かし十分な役割を果たすことができるようにするこ
   とが重要である。

  
1999年海外労働情勢

  第1部 1999〜2000年海外労働情勢

  第2部 欧米主要国における労働力需給調整システムの現状


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