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第1部 1999〜2000年海外労働情勢

 1 雇用・失業の動向と対策

  (1) 雇用・失業の動向

    @ アメリカ、カナダ、イギリスでは、失業率は長期の低下傾向が続いている。
     アメリカでは、特にサービス業での雇用が伸びており、失業率は4%台前半
     の低水準で推移している。

    A ドイツ、フランス、イタリアでは、失業率は引き続き高水準ながらも98年
     からは低下傾向で推移している。

    B 韓国においては、景気の回復に伴い、失業率も低下している。中国におい
     ては、景気が拡大し、就業者が増加している一方、失業率(都市部)も上昇
     している。タイ、インドネシアでは景気の回復がみられるものの、失業率は
     通貨危機の発生前より高い水準となっている。

    ・実質GDP成長率

       アメリカ= 4.3%(1998年)  →  4.0%(1999年)
       イギリス= 2.2%(1998年)  →  2.1%(1999年)
       ドイツ = 2.2%(1998年)  →  1.5%(1999年)
       フランス= 3.4%(1998年)  →  2.7%(1999年)
       イタリア= 1.3%(1998年)  →  1.4%(1999年)
       カナダ = 3.1%(1998年)  →  4.2%(1999年)
   [参考] 日本  =-2.5%(1998年)  →  0.3%(1999年)

    ・失業率:アメリカ= 4.5%(1998年) →  4.2%(1999年)
         イギリス= 6.3%(1998年) →  6.2%(1999年)
         ドイツ = 11.1%(1998年) →  10.5%(1999年)
         フランス= 11.8%(1998年) →  11.2%(1999年)
         イタリア= 11.8%(1998年) →  11.4%(1999年)
         カナダ = 8.3%(1998年) →  7.6%(1999年)
     [参考] 日本  = 4.1%(1998年) → 4.7%(1999年)


  (2) 雇用・失業対策

    @ アメリカでは、再就職促進のための職業訓練を中心とした対策を実施して
     いる。労働力投資法が施行され、公共職業安定所のワンストップ・キャリア
     センター化や職業訓練プログラムの統合等が実施されている。

    A イギリスでは、ニューディール政策を拡充し高齢者に対するプログラムを
     開始したほか、職場における年齢差別の撤廃を目的とした「雇用における多
     様な年齢層に関する行動規範」が発表された。また、民営職業紹介・労働者
     派遣事業について規則制定に向けた検討が行われている。

    B ドイツでは、財政拡大から緊縮路線への転換が図られ、社会保障改革、税
     制改革、財政改革が進められることとなった。「雇用のための同盟」のトッ
     プ会談が開催され、養成訓練、税制、労働時間、賃金政策等の分野について
     政労使間での合意形成が図られた。

    C フランスでは、時短を通じて雇用の維持・創出を図る週35時間労働制に係
     る第2法が成立し、同制度の法的な実施基盤が整い、2000年2月より実施さ
     れた。

    D 中国では、国有企業下崗労働者(一時帰休者)対策に力を入れている。


2 労働条件等の動向

  (1) 賃金・物価の動向

    @ 欧米諸国では、概ね、賃金、物価ともに安定して推移した。失業率が4%
     台前半で低下傾向が続くアメリカにおいても99年の実質賃金は1.1%の伸び
     にとどまっている。

    A アジア諸国では、景気回復の著しい韓国では賃金も大幅に上昇した。中国
     では、近年は伸びが鈍化してきている。通貨危機の影響を受けた国々では物
     価の上昇が収まりつつある。

  
    ・賃金上昇率(上段は名目、下段は実質)
       アメリカ=4.0%(1998年)  →  3.3%(1999年)
            2.4%(1998年)  →  1.1%(1999年)
       イギリス=5.5%(1998年)  →  5.2%(1999年)
            2.0%(1998年)  →  3.6%(1999年)
       ドイツ =2.0%(1998年)  →  2.4%(1999年、西部、男性)
            1.0%(1998年)  →  1.7%(1999年、西部、男性)
       フランス=2.1%(1998年)  →  2.2%(1999年9月まで)
            0.5%(1998年)  →  1.9%(1999年10−12月)
       韓国 = -2.5%(1998年)  →  8.2%(1999年)
           -10.0%(1998年)  →  7.4%(1999年)
   [参考] 日本 = -1.3%(1998年)  →  -1.3%(1999年)
            -2.0%(1998年)  →  -0.9%(1999年)

    ・物価上昇率:アメリカ=2.2%(1999年)、イギリス=1.6%(1999年)
           ドイツ =0.6%(1999年)、フランス=0.5%(1999年)
           韓国  =0.8%(1999年)
       [参考] 日本  =0.6%(1998年)→-0.3%(1999年)


  (2) 労働時間の動向

    ・週当たり支払い労働時間(イギリス、フランス、日本は週当たり実労働時間)
       アメリカ  =34.6時間(1998年) →34.5時間(1999年)
       イギリス  =40.2時間(1998年) →40.0時間(1999年)
       ドイツ(西部)=37.9時間(1998年) →37.9時間(1999年)
       フランス  =38.9時間(1998年) →38.3時間(1999年4−6月)
   [参考] 日本    =37.4時間(1998年) →37.3時間(1999年)
  

  (3) 労働条件対策

    @ アメリカでは、育児等休業手当規則の制定に向けた動きがみられた。

    A イギリスでは、労働条件対策の面で積極的な立法の動きがみられた。労働
     時間規則が改正された他、育児休業指令、パートタイム労働指令をはじめ、
     EU指令の国内法化を図るための法令の整備が行われた。

    B ドイツでは、僅少労働者(労働時間が短く賃金の少ない労働者)の社会保
     険の取扱いの変更、建設業における悪天候手当に関する新規則の制定が行わ
     れた。

    C 韓国、フィリピンでは、最低賃金の引き上げが決定された。タイでは引き
     上げが凍結され、マレイシアでは最低賃金導入案について否定された。シン
     ガポールでは、全国賃金審議会により賃金上昇の抑制を図る1999年賃金ガイ
     ドラインが制定された。


 3 労使関係・労使関係制度の動向

  (1) 労働組合組織

    @ 組織率は、イギリス、ドイツ、オーストラリア等が30%程度と比較的高く、
     アメリカが10%台と低い。先進諸国では労働組合員数が減少を続け、労働組
     合組織率も低下傾向にある。

    A アジア諸国では、組織率は、韓国、シンガポールは10%台と低い。韓国で
     は組織率は低下傾向にあるが、香港、シンガポール等、アジア地域の一部国
     では労働組合員数が増加している。

  (2) 労使関係制度の動向

    @ アメリカでは、全米自動車組合と自動車業界ビッグスリーとの労働協約改
     定交渉が行われた。イギリスでは、労働組合承認手続き等を定めた雇用関係
     法が制定され、また、EU欧州労使協議会指令の国内法化のための立法が行
     われた。ドイツでは、サービス業部門の5労組が統合に合意し、世界最大級
     の労組(統一サービス産業労働組合:ヴェルディ)が誕生することとなった。

    A 韓国では、教員労組法が施行され、小・中学校の教員については労働組合
     の結成が認められることとなった他、第2勢力である全国民主労働組合総連
     盟が合法的労働組合として認可された。また、第三次労使政委員会を巡り様
     々な動きがみられた。

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