産業構造の転換などに伴い雇用形態の多様化が進展し、賃金格差の拡大や賃金の分散が顕著になってきており、労働者全体に雇用不安、生活不安が蔓延しつつある。しかし、景気は底入れし、中小・零細も含め景気は緩やかながら回復の方向に向かっているというのが一般的な見方で、最低賃金を取り巻く状況はむしろ好転している。こうした中で多少の明るさが見えてきた日本経済を安定軌道に乗せ、生活水準を早急に回復させる必要があり、最低賃金制度が本来持っている賃金のセーフティネットとして生活の底割れを防ぐ機能と役割を果たすことが従来にも増して重要になっている。 |
また、昨年度の審議において、使用者側は最低賃金の引上げは中小企業の経営を圧迫すると主張していたが、公益委員見解を受けて展開された実際の審議の結果は影響率を0.2ポイント低下させており、その数値も製造業が100人未満、卸売・小売業,飲食店及びサービス業が30人未満に限定したものであることから、全労働者を対象とした影響率はさらに下がると想定されることを考慮すると、最低賃金の水準は極めて不十分な状態にあることは明らかである。 |
以上のことを踏まえ、今年度の目安については、国民の各層から期待されている景気回復の流れに水をさすような姿にすべきではなく、最低賃金が低賃金労働者の生活の底割れを防ぎつつ景気の底支えの役割を果たすため、一般労働者の賃金水準に対する最低賃金の比率や影響率をより一層高めるとともに、最低賃金を社会的に存在感のあるものにするためにも、組織労働者の賃上げ結果を勘案して目安を作成すべきである。
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